Archive for the ‘相続コラム’ Category

相続トラブルQ&A

2020-07-22

(1)兄が遺産を独占しようとしています。

先日父が亡くなり、残された兄と弟である私で遺産を相続する予定です。
ところが、父が施設に入ったころから父の財産を管理していた兄は、父の預金や不動産等の財産を独り占めにしようとし、私が何度話合いを求めても、はぐらかされたり無視されたりしていて、ついには遺産の話をすると怒り出すようになってしまいました。
私は遺産相続を断念しないといけないのでしょうか?

【回答】

お父様の遺産を相続する権利は、当然ながら弟さんにもありますので、断念する必要はありません。遺産分割協議をして、どのように遺産を分割するのか、お兄様とよく話し合って決めていくことになります。
ただし、今回のケースのように他の相続人が遺産分割協議に応じなかったり、あるいはこちらの要望を全く聞き入れてくれないような場合には、弁護士を代理人に立てて話合いを求めたり、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが有効です。

 

(2)兄が遺産分割協議書への署名押印を要求していますが、内容に同意できません。

父が亡くなりました。相続人は私(弟)と兄です。
先日、実家に行って兄と遺産分割の話合いをしたのですが、兄は「自分は長男で実家の家業を手伝って来たし、自分達夫婦が父親の介護もして来たのだから、父の遺産は全部自分が相続する」などと言って、兄が事前に準備していた「遺産分割協議書」に署名押印するよう強く求められました。その「遺産分割協議書」は、兄ひとりが遺産全部を取得し、私は何も取得しないという内容のものでした。
兄が実家の家業を手伝い、また、兄夫婦が父の介護をしてくれていたのは事実なのですが、全ての遺産を兄が取得するという内容の「遺産分割協議書」には納得がいかず、その日は物別れになって帰宅しました。今後どのようにすればよいでしょうか。

【回答】

お兄さんが実家のお父さんの家業を手伝い、また、お父さんの介護をしていたということであれば、お兄さんの貢献を「寄与分」と評価し、遺産に対するお兄さんの取得分があなたの取得分より多くなるということはあります。しかし、そうは言っても、お兄さんが遺産の全てを取得できるということにはなりません。
お兄さんとの話合いが難しいようであれば、弁護士を代理人に立てて話合いを求めたり、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることで、解決することができます。
安易に「遺産分割協議書」に署名押印をしてしまい、後になって悔やまないよう、ご自分だけで判断せずに、一度は弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

(3)兄が遺産の内容を教えてくれません。

父が他界しました。兄と私(弟)に相続の資格があります。亡くなる2年ほど前から父は施設で生活をしており、兄はその頃より父保有の財産を全て預かって管理するようになりました。
しかし、先日、兄から父は財産をほとんど残していなかったと告げられ、相続放棄の書類に署名押印するように求められました。
兄が私より多く相続することは一向に構わないですし、本当に財産がほとんどなかったのであれば放棄してもよいと思っているのですが、兄からは父の預金通帳を見せてもらえず、本当に遺産が残っていないのか確認することが出来ません。
実際に父の遺産がどれくらいだったのか確認もなしに署名押印することは避けたいのですが・・・。

【回答】

あなたはお父様の相続人ですので、相続人として金融機関にお父様の預貯金残高や取引履歴の開示を求めることができます。また、不動産については、市役所で固定資産税台帳を閲覧する等して確認することができます。

 

(4)兄が遺言書を理由に遺産の内容を教えてくれません。

母が他界しました。兄と私(妹)が相続人です。兄から見せられた母の遺言書には、現金200万円を私が相続し、それ以外の財産は全て兄に相続させるとだけ記載されていました。
その後、私は兄から現金200万円を渡されたのですが、母の財産が全部でどれだけあったのかは私には分かりません。
兄に尋ねましたが、兄は「おまえは現金200万円しか相続出来ないのだから、遺産総額を知っても意味がないだろう」と言って教えてくれません。
そういうものなのでしょうか。

【回答】

あなたには、最低でもお母様の相続財産に対して4分の1の遺留分がありますので、遺言書に記載されている現金200万円がお母様の相続財産の4分の1に満たなければ、あなたは遺留分が侵害されているということになり、その差額をお兄様に請求することができます。
簡単に説明しますと、例えば、お母様の相続財産の総額が1,600万円とすると、あなたの遺留分は400万円です。そうすると、あなたが遺言により取得した現金200万円と遺留分400万円との差額である200万円を、お兄様に請求することができます。
あなたの遺留分が侵害されているか否か確認するためには、お母様の遺産の全容を知る必要がありますので、お兄様に教えてもらうか、教えてくれなければ調査をしなければなりません。また、念のため遺留分減殺請求の意思表示を時効期間内にしておいた方が良いでしょう。お兄様との協議が難しいようでしたら弁護士にご相談ください。

 

(5)姉から見せられた遺言書の信憑性に疑問があるのですが・・・。

母親が亡くなりました。姉と私(妹)が相続人になるので、私は遺産を2人で平等に分割しようと考えていたのですが、姉から見せられた母の遺言書には、手書きで母の遺産の全てを姉に相続させると記載されていました。その遺言書は、姉が母へ指示をして書かせたもののようです。
姉は遺言書の内容は絶対だと言うのですが、生前母は常々「遺産は二人で半分に分けるように」と言っていましたし、遺言書の作成日を見たところ、母の認知症がかなり進行していたころに作成されたものであることが分かりました。
このようなことから、私は遺言書の信憑性に疑問を感じています。よく見ると、筆跡も母のものとは異なるような気もしてきました。
この様な状況で、どのような手続をすればよいのでしょうか?

【回答】

仮に遺言書の筆跡がお母様のものではないとすると、遺言書は偽造ですので無効となります。また、偽造ではなくお母様がご自身で作成された遺言書であったとしても、作成当時お母様の認知症がかなり進行していたということになりますと、お母様の遺言能力が問題となります。お母様に遺言能力がない状態で作成された遺言書は無効です。
このような場合、遺言無効確認訴訟を提起して、裁判所の判断を仰ぐことになります。
なお、裁判所に遺言書が有効であると判断される可能性もありますので、その場合に備えて、予備的にお姉様に対する遺留分減殺請求の意思表示を時効期間内にしておくべきでしょう。

 

(6)遺言書で私の取り分は全くありませんでした。

母が先ごろ他界しました。相続人は私(妹)と兄の2人になります。
葬儀の後、兄から母が「遺言公正証書」というものを作成していたことを知らされましたが、その内容は、全ての遺産を兄へ相続させ、私の取り分は全くないという偏ったものでした。
兄は「遺言は母の希望なのだからそれに従うべきだ」の一点張りで、私が遺産の分割を求めても拒否し続けています。
私は遺産を全く分けてもらえないのでしょうか?

【回答】

たとえ遺言書であなたの取得分がないものとされていても、あなたには、最低でもお母様の相続財産に対して4分の1の遺留分がありますので、この権利が侵害されているとして、お兄様に遺留分減殺請求をすることができます。
ただし、遺留分減殺請求の意思表示は、遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内にしなければ時効によって消滅してしまいますので、速やかにお手続ください。

 

(7)亡くなった父が多額の借金をしていました。

父が亡くなりました。相続人は母と兄弟2人なのですが、生前父が多額の借金をしており返済もまだ終わっていませんでした。今現在、母は父名義のマンションで生活をしています。
父の遺産を相続するということは、父の借金も引き継ぐことになると聞いたのですが、私達残された家族で父の借金を返済しなければいけないのでしょうか?

【回答】

遺産の相続は、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐということになりますので、あなた方ご家族がお父様の遺産を相続するのであれば、お父様の借金を返済しなければなりません。
お父様の借金が高額で返済は難しいということであれば、家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることをお勧めします。ただし、この場合、相続放棄により、お父様名義のマンションも放棄することになりますので、お母様が引き続きマンションで生活することは難しくなります。

 

(8)遺留分放棄を要求されました。

私の両親は、私が幼いころ離婚し、母に引き取られた私はその後一度も父と会ったことはありませんでしたが、先日父の後妻の方から父が亡くなったとの手紙が届きました。
後妻の方に連絡をし、ご自宅に線香をあげに行った際、後妻の方から、父は全ての財産を後妻に相続させるとの遺言書を作成している、私に遺留分を放棄して欲しい、と頼まれました。
私は父の顔も覚えていないですし、後妻の方の気持ちも分かりますが、私も経済的余裕があまりないので少しでも何かいただければ助かります。
そうは言っても、後妻の方と直接会って話合いをするのは気が引けるので、出来れば避けたいと思っているのですが・・・。

【回答】

例えお父様と長年交流がなかったとしても、あなたが実の息子である以上、法律的にあなたには遺留分があります。そこで、遺留分を放棄するという100か0かということにするのではなく、お互いの事情を考慮しながら、遺留分としてのあなたが取得する分をどれくらいにするのが妥当なのかを協議していくのが良いのではないでしょうか。
もしも後妻の方との話合いが気まずいのであれば、弁護士に委任して手続を進めることも可能です。

 

(9)ほとんど交流がなかった父が亡くなりました。

何十年もの間ほとんど交流がなかった父が亡くなりました。連絡をして来た叔父からは「親子関係が途絶えていたのだからおまえは何も相続できない」と一方的に告げられました。
叔父と相続の協議を行うのは厳しい状態です。

【回答】

長期に渡り交流がなかった親子関係だったとしても、お父様の実子である以上、あなたはお父様の相続人となります。他方、叔父様は、お父様の相続人ではありませんので、遺産分割協議の相手方ではありません。
先ずは、長年交流のなかったお父様の相続人として、他にどなたがいるのか、あなたが知らないお父様のお子様がいないか、お父様が養子をとっていないか等を戸籍謄本等で確認する必要があります。また、お父様の遺産の調査も必要です。
その上で、他の相続人に対して遺産分割協議を求めていくことになります。

 

(10)連絡を取っていなかった弟が他界しました。

長期間連絡を取っていなかった弟が亡くなりました。弟の家族は子供なしの夫婦2人。兄弟は兄である私と弟の2人でした。
先ごろ弟の妻より、私は弟と疎遠だったので相続を放棄してほしいと告げられました。
弟と何十年も連絡を取っていなかったのは事実なので、遺産相続にあれこれ意見を言うべきでないと思っています。これといって遺産がないということであれば、私は遺産を取得しなくても構いません。
とは言え、両親は生前弟にかなり金銭的な支援をしていましたし、両親の遺産も弟が相続したという事情もありますので、余裕があるのであれば、私も相続したいと思っています。
ところが、弟の妻は遺産の内容を教えてくれません。どうしたらよいでしょうか。

【回答】

交流の有無に関わらず、あなたは弟さんの遺産の4分の1を相続する権利があります。
弟さんの妻が遺産の内容を教えてくれないということであれば、相続人として、金融機関に弟さんの預貯金残高や取引履歴の開示を求めたり、市役所で固定資産税台帳を閲覧する等して遺産を調査する必要があります。
弟さんの妻と対面で協議をするのが気まずければ、弁護士を代理人に立てて弟さんの妻と交渉し、解決を図ることができます。

【相続】相続開始から3か月以上経過してからの相続放棄

2020-07-14

事例

前回の事例の続きになります。

Yさんは、6年前に亡くなった伯母さんの相続人として、市原市にある亡伯母さん名義の固定資産税を支払わなければならないことになってしまいました。建物は老朽化しており、Yさんとしては、建物を相続するつもりはなく、滞納している固定資産税も支払いたくはありません。

しかし、Yさんは「相続放棄は3か月以内にしなければならない」と聞いたことがあり、伯母さんが亡くなってから既に6年も経ってしまっているため相続放棄できないのではないかと不安になりました。

 

回答

相続放棄は、相続開始(被相続人の死亡)から3か月以上経ってもできる場合があります。

相続の承認または放棄をすべき期間について、民法第915条第1項は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三個月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」と規定しています。

 

本件は「自己のために相続の開始があったことを知った時」に該当するか否かの問題であり、判例は「相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指す」(大決大15.8.3民集5-679)という基準を示しています。

 

Yさんは、6年前に伯母さんが亡くなったのは知っていましたが、従兄弟が伯母さんの養子だったことも、伯母さんと離縁していたことも知らず、伯母さんの相続人は従兄弟だと思っていました。Yさんにとって「相続開始の原因たる事実の発生」すなわち伯母さんが亡くなった事実を知っただけでは「自己のために相続の開始があったことを知った」ことにはなりません。Yさんが、従兄弟は伯母さんの相続人ではないという事実を知ってはじめて「自己が相続人となったことを覚知した」ことになります。

よって、Yさんが、従兄弟は伯母さんの相続人ではないこと、すなわち伯母さんの相続人はYさん自身だということを知ってから3か月以内に相続放棄の手続をすればまだ間に合います。

当事務所において相続放棄の手続をし、無事、Yさんは固定資産税を支払わなくて良いことになりました。

 

相続放棄の手続について

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続します。

相続放棄の申述書を作成し、

①被相続人の除籍謄本
②被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
③放棄する人の戸籍謄本
④被相続人と放棄する人との関係が分かる戸籍謄本(①③で分かれば不要)

と一緒に家庭裁判所に提出します。印紙800円と指定された券種の郵便切手も納付します。

申述書には「相続の開始を知った日」「放棄の理由」「相続財産の概略(資産・負債)」を記載します。

申述書を提出してからおよそ1か月で家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。さらに「相続放棄申述受理証明書」を希望する場合には、家庭裁判所に印紙150円を納付して発行を受けることができます。

【相続】他の相続人が相続放棄しているか否かの調査方法

2020-07-07

<事例>

Yさんは、ある日突然、市原市役所から手紙を受け取りました。手紙には、6年前に亡くなった伯母さん名義の建物の固定資産税を納付するよう書いてありました。伯母さんが亡くなってからずっと固定資産税の滞納が続いているようです。
Yさんの亡くなった両親と伯母さんとは不仲であったため、Yさんも生前の伯母さんとは全く交流がありませんでした。伯母さんには子供(Yさんの従兄弟)が1人いたはずであり、Yさんとしては伯母さんの相続人でも何でもないので支払う必要はないと思っています。しかし、役所からの手紙でもあるので心配になり、市役所の窓口に行って聞いてみたのですが、詳しいことは「個人情報」を理由に教えてくれません。そこで、弁護士に相談することにしました。

<回答>

Yさんは伯母さんの相続人になっている可能性があります。Yさんが考えているとおり、本来伯母さんの相続人は伯母さんの子供でありYさんではありません。しかし、市役所が相続人の調査をしないままYさんに手紙を送って来たとは考えられません。考えられるのは、伯母さんの子供は相続放棄をしており、その結果Yさんが相続人となったのではないかということです。そこで、伯母さんの子供が相続放棄をしているか否かを調査する必要があります。

相続放棄の調査方法

相続人が相続放棄をしているか否かは、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に照会することによって調べることができます。照会手数料は無料です。

「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会申請書」と「被相続人等目録」を作成し、
①被相続人の住民票除票(本籍地が表示されているもの)
②照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本
③照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
④相続関係図
と一緒に家庭裁判所に提出します。返信用封筒と返信用切手を一緒に提出すれば郵送で回答してもらえます。
「被相続人等目録」には被相続人の本籍・最後の住所地・氏名・死亡日と,照会したい相続人の氏名を記載します。
申請をしてからおよそ1か月以内には家庭裁判所から回答が届きます。

<解決>

当事務所は、Yさんから相続放棄の有無の照会手続の依頼を受け、被相続人の最後の住所地である市原市を管轄する千葉家庭裁判所に照会をする予定で準備を開始しました。ところが、被相続人(伯母さん)の除籍謄本を確認したところ、新事実が判明しました。
Yさんが伯母さんの実子だと思っていた従兄弟は、実は伯母さんの養子であり、生前伯母さんは養子縁組を解消していたことが判明したのです。市原市役所がYさんから詳しい事情を聴かれても回答しなかったのは、亡伯母さんと従兄弟の養子縁組解消の事実を「個人情報」と判断したためだったのでしょう。

本件では、伯母さんと養子が離縁していたため、伯母さんの相続人はYさんで間違いなく、Yさんは亡伯母さん名義の建物の固定資産税を支払わなければならないということになります。
なお、実際には、その後、当事務所において、Yさんは伯母さんの遺産に対する相続放棄の手続をしましたので、固定資産税は支払わずに済みました(相続開始から3か月以上経過してからの相続放棄)。

【相続】「相続財産」に含まれるもの、含まれないもの

2020-03-09

遺産を相続するか放棄するかは、定められた期間に決定しなければなりません。しかし、相続財産の範囲を把握しなければ、その決定は下しにくいと思います。
今回は、どのようなものが相続財産に含まれるのか、どのようなものが相続財産に含まれないのかについて、ご説明します。

相続財産とは

民法896条本文には以下のように規定されています。

「相続人は、相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」

このことからわかるように相続人は、被相続人の権利とともに義務も承継することになっています。それはつまり、被相続人が所有していた土地や現金などの「プラスの財産」と一緒に被相続人が負っていた借金・債務などの「マイナスの財産」も相続するということです。
相続は被相続人が死亡した時点で開始され、手続がなくても、遺産はその時点で相続人に承継されます。

積極財産

「プラスの財産」は、積極財産と呼ばれます。

  • 不動産(土地・建物・立木)

海外にあるものも含まれます。

  • 動産

自動車・家財道具・コレクション品等

  • 現金・預貯金
  • 有価証券など

株式、投資信託、国債や地方債、施設などの会員権

但し、会員権の場合は、会員規約に「会員が死亡の場合、会員権は失効」などと規定されていれば承継できません。

  • 借地権・借家権

なお、使用借権は、被相続人が亡くなると消滅してしまいますので承継できません(民法599条)。

  • その他

  知的財産権なども積極財産として承継されます。

消極財産

被相続人が負っていた借金などの「マイナスの財産」が消極財産です。これらのものもすべて承継されます。

  • 債務

銀行や消費者金融からの借入れといったいわゆる借金はもちろん、クレジットカードで購入した商品の支払いや、未払いになっている賃料、固定資産税や住民税などの滞納分の支払義務も相続人に継承されます。

  • 保証債務

通常の保証債務は、相続人に継承されます。

人的信用関係を基礎とする信用保証(根保証など)や身元保証は継承されないものとされています。

相続財産に含まれないもの

前述のとおり、相続が開始すると、被相続人の財産に属した一切の権利義務は、相続人がすべて承継するのが原則ですが、相続財産に属さない財産・権利も存在します。

  • 一身専属権

冒頭の民法第896条但書には、以下のように規定されています。

「ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

一身専属権とは、その性質上、特定の人にだけ帰属する権利、特定の人だけが行使できる権利です。

例えば、生活保護法に基づく保護受給権や、年金請求権、財産分与請求権、扶養請求権などです。但し、既に履行期を経過して具体的な請求権となっていた場合には、一般の金銭債権と変わらないため、相続の対象となります。

また、作家や画家が作品を作る債務などの交代が効かない債務のような一身専属義務も相続されません。

  • 墓・位牌・仏壇などの祭祀財産

祭祀財産は、祖先の祭祀の主宰者が継承することになりますので(民法897条)、相続財産には含まれません。

  • 遺骨

遺骨も祭祀の主宰者に帰属するため、相続財産には含まれません。

  • 香典

香典は、祭祀主宰者への贈与と考えられるため、相続財産には含まれません。

  • 身分上の権利

身分上の地位や権利などは相続財産に含まれません。被相続人が婚約していた場合の「婚約者」としての地位などがこれにあたります。婚約者の立場が継承されることはありません。

 

相続が開始された際、3か月以内に相続放棄をするか否か検討する前提として、相続財産の中にどの程度の消極財産があるのかを確認することはもちろんですが、そもそも何が相続財産なのか、何が相続財産ではないのかを知っておく必要があります。特に祭祀財産は、相続放棄しても祭祀の主宰者であれば継承することができるということを知っておいてください。

【相続】代襲相続とは

2020-01-15

一般的に、遺産というのは亡くなった人の妻や子どもに相続されます。しかし、不幸にして親よりも先に子どもが亡くなってしまうというケースも稀にあります。
そういう場合は、相続人になるはずであった子どもの子ども、つまり被相続人から見て孫にあたる人物が相続人になるという、いわゆる「代襲相続」が発生します。
ここでは代襲相続についてご紹介します。

 

代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人が亡くなっている場合などに、その相続人の子どもが相続人になることをいいます。

被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合は、孫が相続人になります。また、その孫も亡くなっている場合には、ひ孫が相続人になり、これを再代襲相続と言います。

相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合、甥や姪に代襲相続することはありますが、甥や姪が亡くなっている場合には、それ以上の再代襲相続はありません。

代襲相続の範囲はどのようになっているのでしょうか。

代襲相続の範囲

まずは相続人の範囲を見てみましょう。

(被相続人から見た続柄)

第一順位の相続人

子ども

第二順位の相続人

父母

第三順位の相続人

兄弟姉妹

相続は先ずは第一順位の人、第一順位の人が誰もいなければ第二順位の人、第二順位の人が誰もいなければ第三順位の人という順におこなわれます。

また、配偶者は常に相続人になります。したがって、被相続人に子どもがいる場合は、相続人は妻と子どもということになります。

第一順位の相続人がいない場合に、第二順位である父母と妻が相続人なります。

第二順位の父と第三順位の弟といった具合に、違う順位の人同士が同時に相続人になることはありません。

 

では代襲相続人の範囲です。

・第一順位の相続人(子ども)の子ども(孫)、更にその子ども(ひ孫)

第一順位の相続人(子ども)が亡くなっている場合は、孫が代襲相続人に、孫が亡くなっている場合はひ孫が再代襲相続人になります。このように第一順位の相続人に関しては直系の子孫が相続人の地位を継承して行きます。

・第三順位の相続人(兄弟姉妹)の子ども(甥、姪)

第三順位の相続人(兄弟姉妹)が亡くなっている場合は、その子ども(甥、姪)が代襲相続人となります。しかし、さらに甥、姪も亡くなっている場合は、もはや再代襲相続はおこなわれません。被相続人と甥や姪の子どもとでは、関係があまりにも薄いため、いわゆる「笑う相続人」を生み出さないという政策的配慮といわれています。

・被相続人の養子の子ども

被相続人の養子は相続人になります。その養子に「養子縁組をしたのちに生まれた子ども(被相続人から見て孫)」がいた場合は、その子ども(孫)は代襲相続することができます。

しかし、「養子縁組前に生まれた子ども(被相続人からみると、やはり孫)」の場合は、その子ども(孫)は、直系卑属(ひぞく)ではないため代襲相続はできません。

・被相続人の子どもの未亡人(すでに亡くなっている相続人の配偶者)

代襲相続人にはなりません。

 

代襲相続は、相続人が亡くなっている場合以外にも、相続人が被相続人の遺言書を破棄したり隠匿したりして相続人資格を剥奪される「相続人欠格」、被相続人が自分を虐待した推定相続人に相続させないよう家庭裁判所に請求することによって相続人資格を剥奪される「相続人廃除」などで、相続人が欠けた場合にも適用されます。

【相続】遺言書にも種類がある? 3種類の遺言書の特徴を知っておこう

2019-11-12

遺言書といえば、ドラマなどで一家の当主が亡くなったあと、弁護士が現れて遺言書を公開するというシーンが思い浮かびます。ドラマではあまり描かれることがありませんが、実は遺言書には種類があり、それぞれに特徴があるのをご存知でしょうか。

今回は、遺言書の種類と特徴について見ていきましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、自分で作成した遺言書のこと。紙とペンと印鑑さえあれば作成できるので、費用がほとんどかかりません。また、誰とも相談せずに作成すれば、遺言の秘密も守られます。書き直すのも自由です。なお、方式については、次の記事をご参照ください。相続法改正 自筆証書遺言の方式の緩和について

一方で、専門家のチェックを受けていないので、不備があれば無効になる可能性もあります。

紛失や隠匿、偽造、死後どうやって相続人たちに遺言の存在を知らせるか、という点も自筆証書遺言を作る際の問題です。また、相続時には家庭裁判所で検認を受ける必要があります。裁判所では形式のみチェックをし、内容については触れないので、後に内容について争われることもあり得ます。

(なお、令和2年7月10日から法務局で「遺言書保管制度」が開始されます。こちらを利用すれば裁判所の「検認」は不要となります。また、紛失や相続人への通知の問題は解消される見込みです。)

費用をかけずに遺書を残したい人、大きな財産がない人、相続人の仲が良く遺産相続でもめそうにない場合などは自筆証書遺言が向いていると言えます。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に作成してもらい、公証人役場に保管してもらう遺言書のことです。

公証人は元判事や元検事など、長年法律に関わってきた人が法務大臣によって任命される公務員ですから、法律のプロです。そのプロにきちんと確認してもらって作成するので、遺言書に不備があるという事態にはならず、法的には最も安全と言えます。また原本は公証人役場で保管されるため、改ざんや紛失の危険性がないのがメリット。裁判所の検認も不要です。

しかし、作成には時間と費用がかかること、相続に関わらない成人2名を証人にしなければならないため、遺言の内容を第三者に知られてしまうというデメリットもあります。

とは言え安全で確実な方法です。実際、3つの遺言のうち最も多く使われているのが、この公正証書遺言になります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは自分で作成した遺言書に封をした状態で公証人役場に持っていき、遺言書を作成したということを証明してもらう遺言書のことです。

公証人のほかに証人2名が必要になりますが、封をした状態で持っていくので遺言書の内容に公証人や証人はタッチしていません。そのため、遺言の秘密は守られるわけですが、一方で法律上の要件を満たしているかなどのチェックをしてもらえないので、不備があると無効になる可能性があり注意が必要になります。

自筆証書遺言と同様に、相続時には家庭裁判所での検認も必要です。

遺言の中身は秘密にしておきたいが、遺言の存在そのものの証明はしてほしいという方に向いている遺言書になります。

 

3つの遺言書のうち、一番多いのが公正証書遺言、次に自筆証書遺言です。3番目の秘密証書遺言は年間100件程度と少数派です。遺言書を書くことを考えているなら、どのタイプの遺言書で残すかも一緒に考えておきましょう。

【相続】遺産相続トラブルを回避! 知っておきたい予防対策

2019-10-26

遺産相続のトラブルは資産家だけの話ではありません。ごく普通の、一般的な家庭にも起こり得るトラブルです。しかし、こうしたトラブルは事前に対策を立てておくことで回避できるものも多くあります。

そこで今回は、遺産相続トラブルを回避するための予防策についてご紹介しましょう。

遺産相続ではどんなトラブルが多い?

多くの場合、遺産相続のトラブルは「不公平さ」から発生します。

法定相続分どおりに分けるとすると、同居や介護をして最期まで面倒をみた人と、普段は遠くにいて分割協議にだけ姿を現す人が同じ取り分では、前者の立場の人が納得いかないのは当然と言えるでしょう。

また、こうした相続人同士の取り分の不公平感の他にも、特定の相続人が遺産を独り占めしている、両親が相次いで亡くなる二次相続、不動産など分割が難しい遺産の分割協議、婚外子など思わぬ人物の登場など、トラブルのもとはたくさんあります。

遺産相続でトラブルが続出している背景には、もう一つ、遺言書の作成がされていないということがあります。

遺言書がないと、被相続人の死後に相続人たちが話し合って遺産の分け方を決めることになるため、お互いの主張がぶつかり合ってもめることになるのです。

法律で定められている遺産の相続のしかた

遺言で相続の方法について指定されていない場合は、法律に則って遺産を分割することになります。

この取り分も民法に規定されており、被相続人の配偶者が遺産の2分の1を、残り2分の1を子供達が均等に分けます。

相続の順位は、第1順位が子供、第2順位が被相続人の両親、第3順位が被相続人の兄弟姉妹です。

遺言書を作成している場合は、法律のとおりに分ける必要はなく、遺産分割協議をおこなう必要もありません。とはいえ、遺言書があっても事情があってそのとおりに分割することが難しい場合は、相続人同士で遺産分割協議を行うこともできます。

相続トラブルを避ける5つの対策

遺産相続トラブルを起こさないためには、第一に、生前に被相続人と相続人がしっかりコミュニケーションを取っておかなくてはいけません。どのような遺産があり、どのように相続してもらいたいのか、相続人同士も説明を受け、納得しておけばトラブルになりにくいものです。

第二に、遺産の目録を作っておくこと。どのような遺産があるのか把握しておかなくては、どう分けるか話し合うこともできません。

第三に、相続税の対策をしておくこと。相続税は相続人全員で連帯責任を負います。払えない人がいると、一旦他の相続人が負担することになるので、相続税がどういうものなのか、いくら発生するのか確認しておきましょう。

第四に、法定相続人の数の確認。いざ相続というときになって婚外子が発覚するなどの可能性があります。婚外子も認知されていれば実子として平等に遺産をもらう権利がありますので、誰が相続人になるのか調べておきましょう。

第五に、法律上はどのような分け方になるのか、予め知っておくことが有用です。その上で生前に被相続人を交えてよく話し合った方が、思わぬトラブルは回避できるでしょう。

分け方の不公平感がトラブルのもとですから、予めどう分けるか全員で話し合っておくことが肝心です。ここでご紹介したことを参考にして、遺産相続に関しては早いうちから準備しておくようにしましょう。

【相続】婚外子の遺産の取り分はどうなる? 婚外子と相続の関係

2019-07-20

「婚外子(こんがいし)」とは結婚していない男女から生まれた子供のことです。父親から認知されているか、されていないかで相続権の有無が変わってきます。2013年の民法改正により認知されている子の相続分は、嫡出子(ちゃくしゅつし=法律上の婚姻関係がある男女から生まれた子)と同等となりました。

婚外子とは? 相続権が発生する婚外子について確認

結婚していない男女から生まれた子供のことを婚外子、法律用語では「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と言います。未婚のまま生んだ子供や、事情があって入籍をしていない男女の子供がこの婚外子に当たるのです。逆に、入籍している男女から生まれた子供は嫡出子と言います。後に夫婦が離婚して一人親になったとしても、入籍している間に生まれた子供は嫡出子です。

婚外子には父親に認知されているケースと、認知されていないケースが存在します。

父親に認知されているということは、両親は結婚していないけれど「生まれてきた子は父の実子と認められた」ということです。その結果、子供の戸籍にはその父親の名前が載ることになります。法的にきちんと「実の子である」と認められているので、相続の際には他の実子と同じように相続権が発生します。

これに対し、認知されていない婚外子には相続権は発生しません。

婚外子は父親が死去し、相続の話が出て来たときになって突然見つかるケースも少なくありません。父親が家族関係に配慮して秘密のままにしておくからなのですが、遺産分割協議をするためには相続人すべてに協力してもらわなければなりませんので、婚外子のことは必ず知られてしまいます。婚外子を無視しての遺産分割協議は無効となるので注意しましょう。

婚外子の相続分はどうなる?

かつて民法900条では「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。」と規定されていました。そのため、長らく「実子であるのに嫡出子と婚外子の扱いが違うのは憲法違反ではないか」という指摘がされていたのです。

現在では、2013年の最高裁の違憲判決を受けて「ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし」の部分が削除され、婚外子でも認知されていれば嫡出子と同じ扱いを受けられることになりました。

法定相続分は、死去した父親の妻が2分の1、残る2分の1を実子全員で均等に分けることになります。

 

認知した婚外子を秘密にしておくと、相続の際にトラブルになることはよくあります。婚外子であっても被相続人の実の子なのですから、扱いは全員平等になることを知っておきましょう。なお、トラブルを避けるためには、遺言書を作成しておくことが有効です。

【相続】車を相続したらどうなる? 車を相続する際に注意したいこと

2019-07-10

相続財産の中に故人が所有していた車がある場合に注意しておきたい点について、見ていきましょう。

車の相続の流れ

相続が発生すると、被相続人の財産は一旦相続人全員の共有財産となります。その後、遺産分割協議が行われ、誰が何を相続するのかを話し合うことになります。

車も同様に、車の所有者が亡くなれば、その車は一旦相続人全員の共有財産となります。

注意点1 名義変更を行うこと

相続した車は、名義変更をしなくても使用できるので、被相続人の名義のまま、相続人の中の一人がそのまま使っているケースがよくあります。

しかし、名義変更をしないまま長期間放置してしまうと、いざ売ろうとしたときや処分しようとしたときに他の相続人の協力が得られず、書類の取得が難しくなってしまうといったリスクが高くなります。また、もしも相続人の中の一人がそのまま使って人身事故を起こしたりしたら、他の相続人もその車の保有者(共有者)として損害賠償責任を負うことになります。

車を相続したら速やかに名義変更を行うことが大切です。名義変更は必要書類を準備の上、陸運局で行います。

車の所有者欄が故人ではなく自動車販売会社などになっていたら、自動車販売会社に連絡して名義変更に必要な書類を準備してもらっておく必要があります。

注意点2 車にローンが残っている場合の扱い

車にローンが残っている場合、車の名義は使用者ではなくローン会社になっています。このように残ローンがある場合、残ローンはマイナスの遺産として相続人が払わなくてはなりません。

まずはローン会社へ使用者が亡くなったことを伝え、残ローンの返済方法を相談します。

遺産分割協議の結果、車を取得して引き続き使用することになった相続人が、残ローンも引き継ぐ方向で話をするのが一般的です。

誰も車を取得せずに手放す場合は、ローン会社と協議の上、車をローン会社へ返却して精算してもらいます。ローン会社で車を売却してもローンが残る場合には、残ローンは相続人全員で返済しなければなりません。

注意点3 相続人の一人が高額な車を買ってもらっていたら

被相続人名義の車の相続とは異なる話ですが、余談として。たとえば被相続人の生前に長男だけ高額な車を買ってもらっている場合、その分だけ遺産は減っています。その少なくなった遺産を相続人で均等に分けるとなると、高額な車を買ってもらっていた長男だけが得をすることになります。

この場合は、長男の特別受益として、計算上、相続財産に持ち戻した上で、具体的な相続分を計算することが考えられます。詳しくは専門家にご相談ください。

 

相続財産の中に車がある場合、名義変更しないまま放置しておくと売却や処分だけでなく、納税や事故などの際にトラブルになるリスクがあるので注意しましょう。他の相続財産の分割協議が未了でも、車を取得する相続人だけは先に決めて、速やかに名義変更することをお勧めします。

【相続】遺留分の権利が兄弟姉妹に認められていない理由とは?

2019-07-01

遺留分とは?

私有財産制のもとでは、原則として人は自分の財産を自由に処分することができます。この原則は、生前だけでなく、死後にも及ぶとされ、故人は生前に自分の遺産の処分方法を遺言で自由に決めておくことができます。しかし、この原則を貫くと、例えば故人の遺言書に「全財産を友達の〇〇に遺贈する」と書いてあれば、故人の相続人には全く遺産が入らないことになってしまいます。こうなってしまうと、それまで故人の財産で生計を立てて来た遺族は、今後の生活が立ち行かなくなってしまうという不安定な立場に置かれてしまう恐れがあります。

そこで、故人の財産処分の自由と遺族の生活の安定や遺族の財産の公平な分配という相対立する要求を調整するために民法が設けたのが「遺留分」という制度です。

ところでこの遺留分は、相続人となった兄弟姉妹には認められていません。その理由は一般的には次のように説明されています。

【相続関係が最も遠いから】

民法では相続の順位が規定されており、たとえば一家の大黒柱である父親が亡くなった場合、相続の順番の第1位は子供たち、第2位は父親の両親、第3位は父親の兄弟姉妹となります。なお、配偶者である母親は常に相続人になります。つまり、亡くなった人の兄弟姉妹に相続の権利が生まれるのは、亡くなった人に子供や両親がいない場合に限られます。

このように、兄弟姉妹は、相続においては被相続人と一番縁が遠いことになります。また、実際問題としても、兄弟姉妹が生活する上で被相続人の遺産をあてにしているということもあまり考えられないでしょう。そのため、民法は、兄弟姉妹には遺留分を認めなかったと説明されています。

【代襲相続のことを考えなければならないから】

日本では配偶者や直系の子孫が優先されます。相続人になるはずの子供が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、被相続人の兄弟姉妹ではなく、被相続人の孫が相続人になるのです。この制度のことを代襲相続といいます。

もし兄弟姉妹に遺留分があるとすると、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていれば、亡くなった人から更に遠い存在である甥・姪にも遺留分の権利が行くことになりかねません。そこで、甥や姪からの権利主張によって遺言が一部否定されてしまうのは不合理だという考えから、兄弟姉妹には遺留分がないのだ、という説明がなされることもあります。

ただし、この説明は、単純に代襲相続の範囲を規定(兄弟姉妹の子への代襲相続を認めないと規定)すれば解決する問題ですので、兄弟姉妹に遺留分が認められていないことの説明にはなっていないように思われます。

 

兄弟姉妹は遺留分がなくても寄与分の請求ができる?という誤解

兄弟姉妹に遺留分がないことと関連して、その代わりに兄弟姉妹には寄与分の請求ができるといった記事を目にしたことがありますが、これは誤解を与えるもので正しくはありません。

確かに、兄弟姉妹が相続人になる場合(つまり、被相続人に子供や両親がいない場合)で、兄弟姉妹が被相続人と共同で事業を行っていたり、被相続人へ生活、医療、介護などで援助を行っていたりしたような、被相続人の財産の増加や維持に大きく貢献(寄与)していた場合には、貢献した相続人には「寄与分」が認められます。これにより、貢献した兄弟姉妹は法定相続分よりも多くの遺産を請求することができるのです。

しかし、これはあくまで、兄弟姉妹が相続人となり、かつ、分割の対象となる遺産が十分にある場合の話です。元々兄弟姉妹が相続人にならないのであれば、寄与分の話をするまでもなく、そもそも相続分自体がありません。また、配偶者や第三者に財産を与えるという遺言や生前贈与によって、分割の対象となる遺産がほとんどないような場合であれば(相続人が子供や親であれば、遺留分が侵害されているような状況)、例え寄与があった兄弟姉妹であっても残された遺産を取得するしかないのですから、ここで寄与分の話を持ち出すこと自体がナンセンスというべきでしょう。つまり、遺留分の話と寄与分の話は全く別次元の話なのです。

どれほど、被相続人の財産の増加や維持に貢献してきた兄弟姉妹であっても、相続人でなければ何の権利も主張できません。また、兄弟姉妹が相続人になる場合であっても、例えば被相続人が全財産を妻(配偶者)や第三者に贈与する旨の遺言をしていた場合には、例え兄弟姉妹が被相続人の財産の増加や維持に貢献してきたとしても、遺留分がない以上は妻(配偶者)や第三者に対して何の請求もできないのです。

 

兄弟姉妹は相続関係から一番遠く、遺留分の請求ができないことを知っておきましょう。兄弟姉妹と相続トラブルが発生しそうなら、前もって相続人同士で相続について話し合っておいたり、専門家と話をしておくことも大切です。

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