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相続トラブルQ&A
(1)兄が遺産を独占しようとしています。
先日父が亡くなり、残された兄と弟である私で遺産を相続する予定です。
ところが、父が施設に入ったころから父の財産を管理していた兄は、父の預金や不動産等の財産を独り占めにしようとし、私が何度話合いを求めても、はぐらかされたり無視されたりしていて、ついには遺産の話をすると怒り出すようになってしまいました。
私は遺産相続を断念しないといけないのでしょうか?
【回答】
お父様の遺産を相続する権利は、当然ながら弟さんにもありますので、断念する必要はありません。遺産分割協議をして、どのように遺産を分割するのか、お兄様とよく話し合って決めていくことになります。
ただし、今回のケースのように他の相続人が遺産分割協議に応じなかったり、あるいはこちらの要望を全く聞き入れてくれないような場合には、弁護士を代理人に立てて話合いを求めたり、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが有効です。
(2)兄が遺産分割協議書への署名押印を要求していますが、内容に同意できません。
父が亡くなりました。相続人は私(弟)と兄です。
先日、実家に行って兄と遺産分割の話合いをしたのですが、兄は「自分は長男で実家の家業を手伝って来たし、自分達夫婦が父親の介護もして来たのだから、父の遺産は全部自分が相続する」などと言って、兄が事前に準備していた「遺産分割協議書」に署名押印するよう強く求められました。その「遺産分割協議書」は、兄ひとりが遺産全部を取得し、私は何も取得しないという内容のものでした。
兄が実家の家業を手伝い、また、兄夫婦が父の介護をしてくれていたのは事実なのですが、全ての遺産を兄が取得するという内容の「遺産分割協議書」には納得がいかず、その日は物別れになって帰宅しました。今後どのようにすればよいでしょうか。
【回答】
お兄さんが実家のお父さんの家業を手伝い、また、お父さんの介護をしていたということであれば、お兄さんの貢献を「寄与分」と評価し、遺産に対するお兄さんの取得分があなたの取得分より多くなるということはあります。しかし、そうは言っても、お兄さんが遺産の全てを取得できるということにはなりません。
お兄さんとの話合いが難しいようであれば、弁護士を代理人に立てて話合いを求めたり、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることで、解決することができます。
安易に「遺産分割協議書」に署名押印をしてしまい、後になって悔やまないよう、ご自分だけで判断せずに、一度は弁護士にご相談されることをお勧めします。
(3)兄が遺産の内容を教えてくれません。
父が他界しました。兄と私(弟)に相続の資格があります。亡くなる2年ほど前から父は施設で生活をしており、兄はその頃より父保有の財産を全て預かって管理するようになりました。
しかし、先日、兄から父は財産をほとんど残していなかったと告げられ、相続放棄の書類に署名押印するように求められました。
兄が私より多く相続することは一向に構わないですし、本当に財産がほとんどなかったのであれば放棄してもよいと思っているのですが、兄からは父の預金通帳を見せてもらえず、本当に遺産が残っていないのか確認することが出来ません。
実際に父の遺産がどれくらいだったのか確認もなしに署名押印することは避けたいのですが・・・。
【回答】
あなたはお父様の相続人ですので、相続人として金融機関にお父様の預貯金残高や取引履歴の開示を求めることができます。また、不動産については、市役所で固定資産税台帳を閲覧する等して確認することができます。
(4)兄が遺言書を理由に遺産の内容を教えてくれません。
母が他界しました。兄と私(妹)が相続人です。兄から見せられた母の遺言書には、現金200万円を私が相続し、それ以外の財産は全て兄に相続させるとだけ記載されていました。
その後、私は兄から現金200万円を渡されたのですが、母の財産が全部でどれだけあったのかは私には分かりません。
兄に尋ねましたが、兄は「おまえは現金200万円しか相続出来ないのだから、遺産総額を知っても意味がないだろう」と言って教えてくれません。
そういうものなのでしょうか。
【回答】
あなたには、最低でもお母様の相続財産に対して4分の1の遺留分がありますので、遺言書に記載されている現金200万円がお母様の相続財産の4分の1に満たなければ、あなたは遺留分が侵害されているということになり、その差額をお兄様に請求することができます。
簡単に説明しますと、例えば、お母様の相続財産の総額が1,600万円とすると、あなたの遺留分は400万円です。そうすると、あなたが遺言により取得した現金200万円と遺留分400万円との差額である200万円を、お兄様に請求することができます。
あなたの遺留分が侵害されているか否か確認するためには、お母様の遺産の全容を知る必要がありますので、お兄様に教えてもらうか、教えてくれなければ調査をしなければなりません。また、念のため遺留分減殺請求の意思表示を時効期間内にしておいた方が良いでしょう。お兄様との協議が難しいようでしたら弁護士にご相談ください。
(5)姉から見せられた遺言書の信憑性に疑問があるのですが・・・。
母親が亡くなりました。姉と私(妹)が相続人になるので、私は遺産を2人で平等に分割しようと考えていたのですが、姉から見せられた母の遺言書には、手書きで母の遺産の全てを姉に相続させると記載されていました。その遺言書は、姉が母へ指示をして書かせたもののようです。
姉は遺言書の内容は絶対だと言うのですが、生前母は常々「遺産は二人で半分に分けるように」と言っていましたし、遺言書の作成日を見たところ、母の認知症がかなり進行していたころに作成されたものであることが分かりました。
このようなことから、私は遺言書の信憑性に疑問を感じています。よく見ると、筆跡も母のものとは異なるような気もしてきました。
この様な状況で、どのような手続をすればよいのでしょうか?
【回答】
仮に遺言書の筆跡がお母様のものではないとすると、遺言書は偽造ですので無効となります。また、偽造ではなくお母様がご自身で作成された遺言書であったとしても、作成当時お母様の認知症がかなり進行していたということになりますと、お母様の遺言能力が問題となります。お母様に遺言能力がない状態で作成された遺言書は無効です。
このような場合、遺言無効確認訴訟を提起して、裁判所の判断を仰ぐことになります。
なお、裁判所に遺言書が有効であると判断される可能性もありますので、その場合に備えて、予備的にお姉様に対する遺留分減殺請求の意思表示を時効期間内にしておくべきでしょう。
(6)遺言書で私の取り分は全くありませんでした。
母が先ごろ他界しました。相続人は私(妹)と兄の2人になります。
葬儀の後、兄から母が「遺言公正証書」というものを作成していたことを知らされましたが、その内容は、全ての遺産を兄へ相続させ、私の取り分は全くないという偏ったものでした。
兄は「遺言は母の希望なのだからそれに従うべきだ」の一点張りで、私が遺産の分割を求めても拒否し続けています。
私は遺産を全く分けてもらえないのでしょうか?
【回答】
たとえ遺言書であなたの取得分がないものとされていても、あなたには、最低でもお母様の相続財産に対して4分の1の遺留分がありますので、この権利が侵害されているとして、お兄様に遺留分減殺請求をすることができます。
ただし、遺留分減殺請求の意思表示は、遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内にしなければ時効によって消滅してしまいますので、速やかにお手続ください。
(7)亡くなった父が多額の借金をしていました。
父が亡くなりました。相続人は母と兄弟2人なのですが、生前父が多額の借金をしており返済もまだ終わっていませんでした。今現在、母は父名義のマンションで生活をしています。
父の遺産を相続するということは、父の借金も引き継ぐことになると聞いたのですが、私達残された家族で父の借金を返済しなければいけないのでしょうか?
【回答】
遺産の相続は、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐということになりますので、あなた方ご家族がお父様の遺産を相続するのであれば、お父様の借金を返済しなければなりません。
お父様の借金が高額で返済は難しいということであれば、家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることをお勧めします。ただし、この場合、相続放棄により、お父様名義のマンションも放棄することになりますので、お母様が引き続きマンションで生活することは難しくなります。
(8)遺留分放棄を要求されました。
私の両親は、私が幼いころ離婚し、母に引き取られた私はその後一度も父と会ったことはありませんでしたが、先日父の後妻の方から父が亡くなったとの手紙が届きました。
後妻の方に連絡をし、ご自宅に線香をあげに行った際、後妻の方から、父は全ての財産を後妻に相続させるとの遺言書を作成している、私に遺留分を放棄して欲しい、と頼まれました。
私は父の顔も覚えていないですし、後妻の方の気持ちも分かりますが、私も経済的余裕があまりないので少しでも何かいただければ助かります。
そうは言っても、後妻の方と直接会って話合いをするのは気が引けるので、出来れば避けたいと思っているのですが・・・。
【回答】
例えお父様と長年交流がなかったとしても、あなたが実の息子である以上、法律的にあなたには遺留分があります。そこで、遺留分を放棄するという100か0かということにするのではなく、お互いの事情を考慮しながら、遺留分としてのあなたが取得する分をどれくらいにするのが妥当なのかを協議していくのが良いのではないでしょうか。
もしも後妻の方との話合いが気まずいのであれば、弁護士に委任して手続を進めることも可能です。
(9)ほとんど交流がなかった父が亡くなりました。
何十年もの間ほとんど交流がなかった父が亡くなりました。連絡をして来た叔父からは「親子関係が途絶えていたのだからおまえは何も相続できない」と一方的に告げられました。
叔父と相続の協議を行うのは厳しい状態です。
【回答】
長期に渡り交流がなかった親子関係だったとしても、お父様の実子である以上、あなたはお父様の相続人となります。他方、叔父様は、お父様の相続人ではありませんので、遺産分割協議の相手方ではありません。
先ずは、長年交流のなかったお父様の相続人として、他にどなたがいるのか、あなたが知らないお父様のお子様がいないか、お父様が養子をとっていないか等を戸籍謄本等で確認する必要があります。また、お父様の遺産の調査も必要です。
その上で、他の相続人に対して遺産分割協議を求めていくことになります。
(10)連絡を取っていなかった弟が他界しました。
長期間連絡を取っていなかった弟が亡くなりました。弟の家族は子供なしの夫婦2人。兄弟は兄である私と弟の2人でした。
先ごろ弟の妻より、私は弟と疎遠だったので相続を放棄してほしいと告げられました。
弟と何十年も連絡を取っていなかったのは事実なので、遺産相続にあれこれ意見を言うべきでないと思っています。これといって遺産がないということであれば、私は遺産を取得しなくても構いません。
とは言え、両親は生前弟にかなり金銭的な支援をしていましたし、両親の遺産も弟が相続したという事情もありますので、余裕があるのであれば、私も相続したいと思っています。
ところが、弟の妻は遺産の内容を教えてくれません。どうしたらよいでしょうか。
【回答】
交流の有無に関わらず、あなたは弟さんの遺産の4分の1を相続する権利があります。
弟さんの妻が遺産の内容を教えてくれないということであれば、相続人として、金融機関に弟さんの預貯金残高や取引履歴の開示を求めたり、市役所で固定資産税台帳を閲覧する等して遺産を調査する必要があります。
弟さんの妻と対面で協議をするのが気まずければ、弁護士を代理人に立てて弟さんの妻と交渉し、解決を図ることができます。