Archive for the ‘千葉の弁護士コラム’ Category
【相続】遺言を拒否できるケースとは
遺言書があっても必ずしもその内容どおりに遺産分割する必要はありません。
遺言書が無効になるケースもありますし、遺言書の内容を無視できる場合もあります。
この記事では遺言を拒否できるケースについて、弁護士が解説します。
遺言書の内容に納得できない方はぜひ参考にしてみてください。
1.相続人が全員合意した場合
遺言書があっても、相続人全員が納得して別の遺産分割方法を選択するならば遺言書に従う必要はありません。
相続人同士で話し合い、遺言書どおりに遺産分割しないことに決めたら遺言書で指定された以外の方法で遺産分割できます。
相続人同士の合意で遺言書の内容を拒否しても、特にペナルティや罰則はありません。
相続人全員の合意による遺産分割が難しくなる場合
ただし相続人以外の受遺者がいる場合、相続人だけが合意しても遺言書を無視できません。
受遺者の合意も必要となります。
また遺言執行者がいる場合にも、遺言書を無視した遺産分割は難しくなります。その場合、まずは遺言執行者を解任するか辞任を促さなければならないでしょう。
2.遺言書が無効になる場合
遺言書が無効になる場合にも遺言書どおりに遺産分割する必要はありません。
以下でどういった状況において遺言書が無効になるのか、みてみましょう。
2-1.自筆証書遺言の要式を満たしていない
自筆証書遺言の場合、要式を満たしていないと遺言書は無効になります。
たとえば以下のようなケースです。
全文が自筆で書かれていない
自筆証書遺言は全文を遺言者が自筆しなければなりません。一部でも自筆でない箇所があると無効になります。ただし遺産目録の部分だけは自筆する必要がありません。
日付が入っていない
遺言書には日付を入れる必要があります。日付の入っていない遺言書は無効です。
署名押印が抜けている
遺言書には遺言者の署名押印が必須です。署名押印が抜けている遺言書は無効になります。
加除訂正方法が間違っている
遺言書を訂正したり加筆したりする場合には、法律に従った方式で対応しなければなりません。加除訂正方法が間違っていると遺言書は無効になります。
2-2.遺言書作成時に意思能力を失っていた
遺言書作成当時、遺言者が意思能力を失っていると遺言書の種類を問わず無効になります。
たとえば遺言者が強度の認知症にかかっているのに周囲の親族が無理に遺言書を書かせた場合などです。
この理由で遺言書が無効になる場合、遺言書の種類を問いません。公正証書遺言でも遺言書が無効になる場合があります。
2-3.詐欺や脅迫によって書かれた遺言書
周囲の人による詐欺や脅迫行為によって無理に書かされた遺言書は無効です。
2-4.偽造や変造の遺言書
周囲の親族などが勝手に偽造したり書き換えて変造したりした遺言書も無効になります。
遺言書が無効になる場合には「遺言無効確認」の手続きをしなければなりません。
「遺言書が有効」と主張する相続人がいたら「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」を提起する必要があります。
3.遺留分侵害額請求できるケースも
遺言書が有効でも、兄弟姉妹以外の遺留分を侵害することはできません。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合です。
遺留分権利者は遺留分義務者に対し「遺留分侵害額請求」ができます。
遺留分侵害額請求をしても遺言書が無効になるわけではありませんが、遺留分に相当する金銭の支払いを受けられます。
遺言書の内容に納得できない場合には、遺留分侵害額請求の可否も確認してみてください。
まとめ
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では、遺産相続のサポートに力を入れています。
遺言書の内容に納得できない場合や「遺言書が無効になるのではないか?」と考えられる場合には、お気軽にご相談ください。
遺言書作成を弁護士に相談するメリット
遺言書を作成すると、相続トラブルを予防しやすくなるなどのメリットがあります。
ただ自分1人で遺言書を作成しても、無効になってしまったり発見されなかったりするリスクが心配でしょう。
遺言書を作成するなら、弁護士に依頼するようおすすめします。
この記事では遺言書作成を弁護士に依頼するメリットをお伝えします。
これから遺言書を作成しようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
1.適切な遺言書の種類を選択できる
一般的によく利用されている遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。また自筆証書遺言の管理方法については、自分で保管する方法と法務局に預ける方法があります。
自分1人で遺言書を作成する場合、どの種類の遺言書を作成して良いのか悩んだり、法務局に自筆証書遺言を預けるか公正証書遺言を作成するか迷ったりする方が少なくありません。
弁護士に相談すると、状況に応じて適切な遺言書作成・保管方法を確認できます。遺言書の種類や作成方法に迷ったときには弁護士へ相談しましょう。
2.無効になりにくい
せっかく遺言書を作成しても、無効になっては意味がありません。
ところが実際には個人の方が自己判断で遺言書を作成すると、無効になってしまう事例が多々あります。
弁護士に相談しながら遺言書を作成すると、無効になるリスクを大きく低減できます。
遺言書が無効になりにくいことも弁護士に遺言書作成を依頼するメリットといえるでしょう。
3.手間がかからない
遺言書を作成するには手間がかかります。
詳しい知識がない場合には、まずはどのような方法で遺言書を作成しなければならないのか調べなければなりません。慣れない作業に手間取る方も多数おられます。
弁護士に遺言書作成を相談すれば、正しい作成方法や段取りを確認できるのでスムーズに遺言書を作成できます。
手間をかけずに適切な遺言書を作成できることも弁護士に相談するメリットといえるでしょう。
4.遺言内容について相談できる
「遺言書を作成したい」と思っても、どのような内容にすればよいのか決めかねる方が多数おられます。
法務局や公証役場では、遺言書の内容についての相談はできません。遺言書の内容は遺言者が決めなければならないのです。
弁護士であれば、相続人や相続財産の状況を聞いて遺言書の内容からアドバイスができます。遺言内容について相談しておけば、死後の相続トラブルもより効果的に避けられるでしょう。
内容面でのアドバイスを受けられることも、弁護士に相談する大きなメリットの1つです。
5.遺言執行者になってもらえる
遺言書を作成するときには、遺言執行者をつけておくとより安心感が高まります。
遺言執行者とは、遺言内容を実現する人です。たとえば不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどの作業を行います。
ただ相続人から遺言執行者を選ぶと、他の相続人が反発して手続きがスムーズに進みにくくなるケースが少なくありません。
弁護士に遺言書作成を依頼した場合、弁護士が遺言執行者に就任するケースが多数あります。弁護士が遺言執行者になっていれば、相続人らも納得しやすくなりますし、手続自体もスムーズに進みやすくなるでしょう。
6.トラブルが起こっても対応しやすい
弁護士に遺言書作成を依頼していたら、いざトラブルが起こっても解決しやすくなります。
弁護士は紛争解決のプロなので、当事者の代理人などの立場で効果的に対応できるからです。
千葉県の秋山真太郎総合法律事務所では遺言書作成などの相続関係のサポートに力を入れて取り組んでいます。
遺言書の内容が決まっていない段階でもご相談に乗ることが可能ですし、遺言執行者への就任も受け付けています。遺言書を作成しようとする方は、ぜひともお気軽にご相談ください。
労働審判とは?流れや弁護士に依頼するメリットを解説
労働者の方が雇用先の企業とトラブルになったとき、労働審判を利用するとスムーズに解決できるケースがよくあります。
労働審判は裁判とは異なり「話し合い」をメインとして進められる手続きで、裁判より迅速に終了するメリットもあります。
今回は労働審判の概要や流れ、弁護士に依頼するメリットについて解説します。残業代や解雇トラブルなどに巻き込まれた方はぜひ参考にしてみてください。
1.労働審判とは
労働審判とは、残業代不払いや解雇トラブルなど、労働者と雇用者との間の労働紛争を解決するための裁判所の手続きです。
訴訟よりも迅速に問題を解決できて、原則3回までとして審理を終了します。
当初は話し合いによる解決を目指しますが、最終的に当事者が合意できない場合には「審判」によって裁判所が一定の結論を下します。
ただし当事者が審判に対して異議を申し立てた場合、審判は確定せずに訴訟へと移行します。
労働審判にかかる期間はおおむね2~3か月です。裁判所によると、平成18年から令和3年までに終了した労働審判事件の平均審理期間は80.6日で、全体のうち67.6%が申立てから3か月以内に終了しています。
労働訴訟となると1年やそれ以上かかるケースもあるので、迅速に解決できる労働審判は労働者、企業側双方にとってメリットがあるといえるでしょう。
また労働審判は、訴訟とは異なり「非公開」ですので、他人に傍聴されて知られることもありません。
2.労働審判で扱える事件
労働審判で扱えるのは、「労働者と雇用主との間での労働トラブル」に限られます。すべての労働問題を扱えるわけではありません。
よく利用されるのは、以下のような場合です。
- 残業代に関するトラブル
- 賞与や退職金不払いに関するトラブル
- 不当解雇に関するトラブル
- 企業側の安全配慮義務違反に関するトラブル
一方、以下のような場合、労働者対雇用者の問題ではないので労働審判は利用できません。
- 上司からパワハラやセクハラなどの被害を受け、上司に対して損害賠償請求を行う
この場合、上司は雇用者ではないので「労働者対雇用者」という構図になりません。よって労働審判は利用できないのです。
なお同じセクハラやパワハラのケースでも、会社による職場環境配慮義務違反を問う場合であれば労働審判を利用できます。
3.労働審判の流れ
STEP1 証拠を集める
まずは申立を行う側が証拠を集めましょう。たとえば残業代請求なら、雇用契約書や給与明細書、タイムカードやシフト表の写しなどが必要となります。
STEP2 申立を行う
証拠が揃ったら申立書を作成し、申立を行いましょう。
裁判所の管轄は以下の3つのうちいずれかとなります。
- 相手方の住所や居所、営業所などを管轄する地方裁判所
- 現在の就業場所あるいは最後に就業した場所を管轄する地方裁判所
- 当事者間の合意によって定めた地方裁判所
STEP3 企業側から答弁書が提出される
申立後、通常は企業側から答弁書が提出されます。
STEP4 第1回期日
第1回期日では企業側との話し合いを進めます。間に労働審判委員が介入するので、当事者同士で話し合うよりはスムーズに進むケースが多数です。1回目で調停が成立すれば1回で手続きが終了します。
STEP5 第2回期日、第3回期日
継続して話し合いを行います。両者で合意ができれば調停が成立します。
STEP6 審判
3回の期日においても合意できない場合には、裁判所が審判によって結論を出します。
STEP7 異議申立て
当事者が審判内容に納得できない場合、異議申し立てが可能です。異議申し立ては、審判書を受け取ってから2週間以内に行う必要があります。
4.労働審判を弁護士に依頼するメリット
労働審判は自分でもできますが、主張を認めてもらうには的確な証拠を集めて法律的な主張を行わねばなりません。
専門知識のない方が1人で取り組むと不利になりやすいでしょう。
弁護士に依頼すると専門家である弁護士が証拠や主張をまとめるので、手間が省けるだけではなく有利に進めやすくなるものです。精神的負担も軽減されるでしょう。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者の法的サポートにも力を入れて取り組んでいます。会社とトラブルになってお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
【借金】奨学金を返せないときの対処方法
奨学金を返済できずに放置していると、日本学生支援機構などの債権者から訴訟を起こされる可能性もあります。
返せないときには放置せず、減額返還制度などを使って適切に対応しましょう。
今回は奨学金を返せないときの対処方法を解説します。
1.奨学金を返せないとどうなるのか
奨学金を返せないで放置していると何が起こるのか、みてみましょう。
STEP1 請求される
まずは借入先である日本学生支援機構から督促が来ます。
郵便による督促が行われるケースが多数です。
STEP2 信用情報に事故情報が登録される
次に個人信用情報に事故情報が登録されて、いわゆる「ブラックリスト状態」になります。
いったんブラックリスト状態になると、ローンやクレジットカードを利用できません。
今使っているクレジットカードもいずれ解約されてしまいます。
ブラックリスト状態になるのは、奨学金の滞納後約3か月後となるのが標準的です。
STEP3 訴訟を起こされる
奨学金を長期にわたって払わずに放置しておくと、日本学生支援機構から訴訟を起こされる可能性もあります。
STEP4差し押さえを受ける
訴訟で判決が出たら、日本学生支援機構から給料や預金などの差し押さえを受ける可能性があります。差し押さえは奨学金を完済するまで止まりません。
2.奨学金を返せないときの対処方法
奨学金を返せないなら、以下のような方法で対処しましょう。
2-1.減額返還制度
まずは減額返還制度の利用を検討するようおすすめします。
減額返還制度とは、一定期間、奨学金の返還額を減額してもらえる措置です。
認められれば毎月の返済額が2分の1または3分の1になるので、有効な対処方法となるでしょう。
減額返還できる期間は最長15年です。ただし1年ごとに願い出る必要があります。
また減額返還とはいっても償還総額が減額されるわけではありません。単に返還期間が延びるだけなので、間違えないようにしましょう。
天災に遭った場合や低所得の場合などに減額返還制度を申請できます。
なおすでに奨学金を滞納していると減額返還制度は利用できません。
2-2.返還期限猶予制度
返還期限猶予制度とは、一定期間、奨学金の支払いを延ばしてもらえる制度です。
猶予してもらえる期間は最長10年です。
返還期限猶予制度の場合にも単に返還期限が延びるだけであり、利息を含めた総支払額が減額されるわけではありません。
滞納していても返還期限猶予制度を利用できることもあります。
2-3.免除制度
ご本人が死亡した場合や重度障害者となった場合には、免除制度を利用して奨学金の残金を免除してもらえることもあります。
3.どうしても返せないときには債務整理をする
奨学金の減額返還制度などを利用してもどうしても支払いが難しい方もいるでしょう。
その場合には債務整理を検討するようおすすめします。
3-1.個人再生
個人再生をすると、奨学金の債務を含めたほとんどすべての負債を減額してもらえます。
たとえば奨学金以外にカードローンなどの借り入れがある場合にも、個人再生をしたらまとめて減額してもらえます。
住宅ローン返済中の方の場合「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローンの支払いは継続して家を守ることも可能です。
- 継続的な収入がある
- 家を失いたくない
- 財産を失いたくない
- 自己破産はしたくない
こういった状況の方は個人再生を検討すると良いでしょう。
3-2.自己破産
自己破産とは、裁判所へ申立をしてほとんどすべての負債を免除してもらう手続きです。
奨学金も全額免除してもらえるので、支払いの必要はなくなります。
ただし自己破産をすると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。
以下のような状況なら自己破産を検討しましょう。
- 収入がない
- 守りたい資産はない
- 奨学金の額が大きすぎて個人再生で減額されても払えない
なお個人再生や自己破産をすると、連帯保証人に一括請求されます。親族に連帯保証人になってもらっている場合、事前に相談しておくと良いでしょう。
奨学金の返済が難しい場合、ひとりで抱え込まずに専門家へご相談ください。
法定後見と任意後見の違い
後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
それぞれ利用すべきケースや利用の際の手続きの流れなどが異なるので、双方について正しく理解しておきましょう。
この記事では法定後見制度と任意後見制度の違いについて、弁護士が解説します。高齢になった後の財産管理方法などに関心のある方はぜひ参考にしてみてください。
1.後見制度とは
法定後見制度も任意後見制度も、両方とも後見制度の一種です。
後見制度とは、判断能力の低下した人の代わりに後見人が財産管理や身上監護などを行うための制度です。
認知症にかかったり知的障害・精神障害があったりして自分では適切に財産を管理できなくなった方のために後見制度が適用されます。
後見制度には法定後見制度と任意後見制度があるので、それぞれの特徴や違いについてみてみましょう。
2.法定後見と任意後見の違いとは
2-1.法定後見とは
法定後見とは、本人の判断能力が低下したときに親族などが家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて後見人を選任してもらう制度です。
後見人としては本人の判断能力の低下度合いに応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」の3種類から選ばれます。
また後見人は裁判所が選任するので、本人が選ぶことはできません。
2-2.任意後見とは
任意後見は、本人があらかじめ後見人となろうとする人と契約しておく後見制度です。
判断能力が低下すると、事前に締結された任意後見契約内容に従って任意後見人が後見活動を開始します。
本人の判断能力があるうちに本人が契約するので、任意後見人になる人は本人が選べます。
2-3.後見人を選べるかどうかの違い
法定後見と任意後見では、後見人の選任方法が異なります。法定後見の場合、本人が後見人を選ぶことはできず、裁判所が選任します。一方任意後見の場合、本人が気に入った人を任意後見人として選任できます。
ただし法定後見でも、申立人(本人ではなく親族であるケースが多数)は後見人の候補者を立てられます。親族同士に争いがなく財産関係も単純な事案であれば、候補者がそのまま後見人に選任されるケースが少なくありません。親族同士で争いがある場合などには、裁判所が弁護士などの専門家から選任するのが一般的です。
2-4.後見開始の手続方法の違い
法定後見制度の場合、本人や親族などが家庭裁判所で後見開始の申立を行わねばなりません。調査を経て、本人に後見人が必要と判断されると、裁判所の決定によって後見が開始されます。
一方、任意後見の場合には本人があらかじめ後見人となる人と任意後見契約を交わします。任意後見契約書は公正証書にして、登記しなければなりません。
後に本人の判断能力が低下したときに任意後見人などが家庭裁判所へ申し立てて任意後見監督人が選任されると、予定されていた任意後見人による後見が開始されます。
2-5.本人の判断能力が低下してから利用できるかの違い
法定後見と任意後見では、利用できる時期も異なります。
任意後見の場合、本人が契約をしなければならないので契約できるだけの意思能力が必要です。意思能力が失われてしまったら、有効な契約ができないので任意後見を利用できません。
法定後見の場合、親族などが申し立てをして裁判所が後見人を選任できるので、本人に意思能力は不要です。認知症などが進行して本人が寝たきり状態となっても法定後見なら利用できます。
2-6.後見人の権限
法定後見と任意後見では、後見人に与えられる権限も異なります。
法定後見の場合、後見人の種類にもよりますが、法律によって取消権や代理権、同意権が認められます。
一方、任意後見の場合には、どのような事柄を委任するかは本人と任意後見人の契約によって定めます。任意後見人に同意権や取消権はありません。
第三者による財産管理が必要な場合、状況に応じて法定後見や任意後見を使い分ける必要があります。千葉県で後見制度のご利用を検討されている場合、お気軽に秋山慎太郎総合法律事務所までご相談ください。
【労働】残業代請求の推定計算とは
残業代を請求しようとしても、具体的にいくらの残業代が発生しているのか正確に算定できないケースが少なくありません。労働者側には残業代を計算するための資料が十分に揃っていないケースが多いからです。
そんなときには「推定計算」を行って企業側へ請求する残業代を算定できることもあります。
この記事では推定計算とは何か、残業代の証拠がないときにどのように対応すればよいのか弁護士が解説します。
1.未払い残業代の立証は労働者側がしなければならない
未払い残業代を請求するには残業代を計算しなければなりません。
訴訟になると、残業代の金額も労働者側が証明する必要があります。裁判では「証拠のないことは認められない」ので、労働者側が残業代を立証できなければ、裁判に負けてしまうのが原則です。
残業代の計算で必須となるのが残業代の証拠です。たとえばタイムカードやシフト表、パソコンのログインログオフ記録などが証拠になりえます。
残業代の立証ができないケースが多い
ただし現実的に労働者側が残業時間を証明するのは簡単ではありません。
たとえばタイムカードやシフト表、作業報告書などは通常、会社が把握しているでしょう。
会社がタイムカードなどの証拠を労働者側へ提示するとは限りません。
またタイムカードに全ての勤務時間が正確に打刻されているとも限りません。
パソコンのログインログオフ記録についても、会社が労働者へ貸与していたパソコンの場合には労働者が入手できないケースが多いでしょう。
そうなると、労働者側による残業時間の立証が困難になってしまいます。
そんなときには残業代の推定計算が認められる場合があります。
2.残業代の推定計算とは
残業代の推定計算とは、正確に証明できない残業時間について他の事情から推定を及ぼし、残業代を計算する方法です。
合理的な理由がないにもかかわらず、企業側が容易に提出できると考えられる計算資料を提示しない場合には、公平の観点からして推定計算が認められる可能性があります。
労働者側が十分な証拠を持っていなくても、推定計算によって残業代が認められる事例は珍しくありません。
手元に十分な証拠が揃っておらず企業側が非協力的な態度をとっていても残業代請求できる可能性はあります。あきらめる必要はありません。
3.推定計算の具体的な方法
残業代の推定計算の方法は、事案によって異なります。
たとえばタイムカードがある場合とない場合でも異なりますし、タイムカードがあっても正確に打刻されていない場合にはまた対応が異なってきます。
参考として、タイムカードなどの証拠が存在する月としない月があった事案において、以下のような計算方法がとられた裁判例があります(東京地裁平成23年10月25日)。
このようにして、タイムカードなどの証拠がない月や、タイムカードがあっても打刻が不十分な月についても残業代が認められました。
4.残業代の証拠がなくてもご相談ください
確かに残業代の証明は労働者側の義務ですが、場合によっては公平性の観点から残業代の推定計算が認められる可能性があります。ただしその場合でも、計算方法は合理的でなければなりません。
専門知識がなければ妥当な方法による推定計算は困難でしょう。
千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者の支援にも積極的に取り組んでいます。残業代請求でお悩みがありましたら、お手元に残業代の証拠が揃っていなくてもお気軽にご相談ください。
【借金】自己破産の「免責不許可事由」とは
自己破産をしても、必ず免責してもらえるわけではありません。
自己破産には「免責不許可事由」があるからです。
免責不許可事由に該当する場合、借金などの負債が免除されずにそのまま残ってしまう可能性もあります。
今回は自己破産の免責不許可事由について解説しますので、これから破産しようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
1.免責不許可事由とは
免責不許可事由とは、該当すると免責を受けられなくなる一定の事情です。
免責とは、借金などの負債の支払義務をなくしてもらえる決定をいいます。自己破産をしても免責してもらえなかったら、借金がそのまますべて残ってしまうので意味がありません。
免責不許可事由に該当すると、せっかく自己破産を申し立てても借金が免除されない可能性があるので要注意です。
2.免責不許可事由に該当する事情一覧
具体的にどういったケースで免責不許可事由に該当するのか、みてみましょう。
- 破産者を害する目的で財産を減少させる
- 破産手続きの開始を遅延させる目的で不利益な条件で債務を負担する、クレジットカードなどで現金化をする
- 特定の債権者にだけ弁済する、担保を提供する
- 浪費やギャンブルをする
- 支払い能力や意思がないのにあるような素振りを見せて相手を騙して借り入れをする
- 財産隠しをする
- 裁判所へ虚偽の報告をする
- 管財人の業務を妨害する、協力しない
- 7年以内に免責許可を受けている
たとえばパチスロや競馬などのギャンブルで大きな借金を作ってしまった場合、免責不許可事由に該当して免責してもらえない可能性があります。
3.裁量免責について
免責不許可事由があっても、必ず免責してもらえないというわけではありません。
現実には「裁量免責」によって免責してもらえるケースが多数です。
裁量免責とは、裁判官の裁量によって免責を認めることをいいます。
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由があっても、裁判官が「この人は更生できる可能性が高い」と判断し、裁量免責してもらえれば、借金の返済義務はなくなります。
裁量免責してもらえる割合は高い
免責不許可事由があっても裁量免責してもらえるケースはどのくらいの割合なのでしょうか?
毎年、自己破産をして最終的に免責を受けられるケースは全体の90%を越えており95%を超える年もあります。
この中には当然、免責不許可事由のある方が多く含まれます。
こういった事情からすると、現実には免責不許可事由があってもほとんどのケースで免責を受けられているといえるでしょう。当事務所で取り扱った事案でも、免責不許可事由があってもほとんどの事案で裁量免責を受けられています。
4.管財事件になる可能性が高い
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合、自己破産の手続きが「管財事件」になる可能性が高くなります。
管財事件とは、破産管財人が選任されて裁判所で債権者集会が開かれる破産手続きです。
免責不許可事由のある方の場合、本当に裁量免責してよいか判断するために破産管財人が観察をするのです。同時廃止より複雑で時間も長くかかります。
破産管財人が選任されると予納金も高額になるなど、破産者に負担が掛かる可能性があります。
管財事件になってしまうことは、免責を受けるためにやむを得ないといえるでしょう。
5.裁量免責を受けるために
免責不許可事由が合っても裁量免責を受けるには、誠実な態度で破産手続きに臨む必要があります。反省の態度をしっかりと示し、問題行動を二度と繰り返さないことを誓いましょう。
裁判所や管財人の指示にもきちんと従う必要があります。
千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では、借金問題の解決に力を入れて取り組んでいます。
免責不許可事由があっても免責決定を勝ち取ってきた実績がありますので、安心してご相談ください。
【労働】管理職の残業代請求について
管理職の方が残業代を請求しようとすると、企業側から「管理職には残業代が出ない」と言われてしまうケースが多々あります。
しかし管理職だからといって残業代が出ないわけではありません。
会社に拒否されても請求できるケースは多いので、あきらめる必要はありません。
この記事では管理職の残業代請求について解説します。店長やマネージャー、部課長職などで残業代請求を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
1.管理監督者と残業代
マネージャーや店長などの管理職の方が会社へ残業代を請求した場合、断られる理由はたいてい「管理監督者に該当するため」です。
管理監督者とは、労働基準法に規定されている言葉で「監督若しくは管理の地位にある者」と表現されています。
そして、管理監督者の場合には時間外労働の割増賃金などの規定が適用されません。
労働基準法41条2号に規定があります。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
労働基準法上の管理監督者とは「経営者側と一体となって労働条件について裁量を持ちふさわしい権限を持ち待遇を受けているもの」を意味すると考えられています。
管理監督者に該当する場合、割増賃金などの規定が適用されないので「残業代を請求できない」といわれるのです。
2.管理職=管理監督者ではない
一般には「管理職=管理監督者」と考えられているケースが多いのですが、必ずしもそうとはいえません。労働基準法上の管理監督者といえるには、自分の出勤時間について裁量を持ちそれなりの待遇を受けていて、経営者と一体といえるような職務権限を有している必要があります。
管理監督者に該当するかどうかの判断は、名称や肩書き、就業規則の定めなどにとらわれず、実態に即して客観的に行われるべきです。
単に「店長」や「マネージャー」「課長」などの役職名がついていても、実態として経営者と一体になっているといえなければ労働基準法上の管理監督者にはなりません。
労働基準法上の管理監督者でない限り、管理職であっても一般の労働者と同様に時間外労働の割増賃金等を含めた残業代請求ができます。
3.管理監督者と認められる要件
では労働基準法上の管理監督者となるためにはどういった条件を満たす必要があるのでしょうか?以下で管理監督者と認められる要件をみてみましょう。
- 経営者と一体性を持つ職務権限を有している
- 自分の出勤退勤時間について、自由裁量が認められている
- 地位にふさわしい待遇を受けている
上記を満たさない限り、名称のみが管理職となっていても労働基準法上の管理監督者になりません。
管理職が管理監督者にならないケースの例
- 経営会議に出席したことがない
- パートやアルバイトなどの採用権限がない
- 部下の人事考課に関する権限がない
- 遅刻や早退をすると減給対象になる
- 長時間労働を強いられている
- 給与を時給換算するとパートやアルバイト従業員と変わらない
- 基本給や役職手当が不十分
上記のような場合、名ばかり管理職であって管理監督者にはならない可能性があります。
4.管理監督者と残業代
労働基準法上の管理監督者に該当する場合でも、深夜労働をすると割増賃金を請求できます。
管理監督者だからといって残業代請求が一切できないわけではありません。また有給休暇を取得することも可能です。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者側の法的サポートも取り扱っております。管理職となって残業代を払ってもらえなくなった方などがおられましたら、お気軽にご相談ください。
【相続】遺言書を作成した方が良いケース
遺言書を作成すると、遺産相続トラブルを防止しやすくなります。
ただ、いつのタイミングで遺言書を作成すれば良いのかわからない方も多いでしょう。
この記事では遺言書を作成した方が良いケースについて、解説します。
遺言書を作成しようかどうか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
1.相続分を指定したい
特定の相続人に遺産を多めに渡したいなど、相続分を指定したい場合には遺言書が必要です。遺言書がなかったら、法定相続分に応じて遺産が分配されてしまうからです。
たとえば長男にすべての財産を受け継がせたい場合などには、必ず遺言書を作成しましょう。
2.特定の財産を特定の相続人へ相続させたい
自宅不動産など、特定の財産を特定の相続人へ相続させたい場合にも遺言書を作成しましょう。遺言書がなかったら、相続人たちが自分たちで話し合って遺産相続の方法を決めます。その際、誰がどの財産を相続するかは相続人たちが決めるので、被相続人は決められません。
遺言書があれば特定の財産の相続方法まで指定できるので、希望があれば遺言書を作成しておくべきです。
3.相続人以外の人に遺贈したい
相続人以外の人に財産を受け継がせたい場合にも遺言書が必要です。
遺言書がなかったら、財産は法定相続人にしか受け継がれません。たとえば長男の嫁やお世話になった人などに遺産を受け継がせたい場合、必ず遺言書を作成して「遺贈(遺言によって財産を受け継がせること)」しておきましょう。
4.内縁の配偶者がいる
内縁の配偶者がいる場合にも、必ず遺言書を作成しておきましょう。
内縁の配偶者には相続権が認められないからです。自宅不動産や預金などが引き継がれないので、死亡するとたちまち配偶者の生活が脅かされる可能性もあります。
内縁の配偶者の生活を守るため、お互いが元気なうちに自宅や預金などの財産を遺贈する内容の遺言書を作成しておくようおすすめします。
5.天涯孤独
天涯孤独で親族がいない方の場合にも、遺言書を作成するようおすすめします。遺言書がなかったら、財産は最終的に国のものになってしまいます。
お世話になった人に遺贈したり自分が関連する団体、慈善団体などに寄付したりして有用な方法で財産を使ってもらいたい場合、遺言書の作成が必須となります。
6.事業承継のケース
経営者の方が事業承継を検討している場合にも、必ず遺言書を作成しておきましょう。
遺言書で後継者へ財産を集中させておかないと、後継者による経営の引き継ぎがスムーズに進まない可能性が高まります。
ただし他の相続人による遺留分侵害額請求の可能性にも配慮しなければなりません。
遺留分侵害額請求を避けられない場合には、後継者へ死亡保険金を受け取らせて遺留分侵害額の支払資金にするなど対策しましょう。
7.生前贈与した相続人がいる
生前贈与した相続人がいる場合にも、遺言書を作成しておくべきです。
生前贈与した相続人がいると、その相続人には「特別受益」が認められます。特別受益がある場合、特別受益の持戻計算を行ってその相続人の取得分を減らせます。
ただ特別受益の持戻計算を行うべきかや、どのようにして持戻計算をすべきかなどの点で相続人がもめてしまうケースが少なくありません。
遺言書であらかじめ遺産分割の方法を指定しておけば、特別受益の持戻計算の問題で相続人たちがもめる必要はありません。遺言書で特別受益の持戻計算を免除することも可能です。
8.死後に子どもを認知したい
生前に子どもを認知するとトラブルが予想されるので、死後に子どもを認知したい場合にも遺言書を作成しましょう。なおその場合、遺言執行者が必要になります。弁護士などの信頼できる人を遺言執行者にしておくと良いでしょう。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では遺産相続の案件に積極的に取り組んでいます。遺言書作成のサポートも承りますので、お気軽にご相談ください。
【借金】債務整理したときの仕事への影響
「債務整理をすると、仕事を続けられなくなりませんか?会社に知られませんか?」
といったご相談を受けるケースがあります。
債務整理をしても、ほとんどのケースで仕事に影響はありません。
従来通り、仕事を続けられますし会社に知られない事例がほとんどです。
今回は債務整理をすると仕事にどういった影響が及ぶのか、注意点も含めて解説します。
1.債務整理をしても会社に知られない
債務整理をしても、会社に知られるケースはほとんどありません。
債務整理が会社に通知される仕組みがないからです。
裁判所からも債権者からも弁護士からも会社へ連絡はしません。
このことはすべての債務整理において共通で、任意整理でも個人再生でも自己破産でも会社に知られる心配はほとんどありません。
2.会社に知られるケースとは
ただし会社から借り入れをしている場合には、例外的に会社に債務整理を知られる可能性があります。
任意整理であれば会社からの借入れ以外を整理すれば会社に知られることはありません。しかし他の債務整理の場合、整理の対象にせざるを得ないからです。
つまり個人再生や自己破産の場合、債権者を全員対象にしなければなりません。
会社を外すことができず、会社に対しても債権調査票を送るなど債権者としての扱いをしなければならないので、会社に知られる結果となります。
また個人再生や自己破産をするときに退職金証明書を会社に請求すると、理由を聞かれて債務整理を感づかれるケースもあります。「債務整理をするため」と説明するともちろん会社に知られますし、うまく説明できずに感づかれるケースもあるでしょう。
会社に退職金証明書を請求するときに債務整理を知られなくなかったら「住宅ローン審査のためなどに必要」などと説明すると良いでしょう。
3.債務整理を知られても解雇されない
会社に債務整理を知られたくない方は、「会社に知られたら解雇されるのでは?」と心配しているケースもよくあります。
結論的に、債務整理を会社に知られても解雇される心配はほとんどありません。
債務整理は法律上の解雇理由にならないからです。
債務整理はプライベートな事情であり、仕事とは基本的に関係ありません。
債務整理したからといって解雇された場合には、解雇無効を主張して争うことも可能です。
万一自己破産をして解雇されてしまったら、お早めに弁護士までご相談ください。
4.自己破産の資格制限とは
自己破産をした場合には「資格制限」によって一定の仕事ができなくなる可能性もあります。
資格制限とは、自己破産の手続き中に一定の資格が制限されることです。
たとえば以下のような資格が制限対象になります。
- 弁護士、司法書士、行政書士、税理士、宅建士などの士業
- 警備員
- 生命保険外交員
- 質屋
- 貸金業者
- 卸売業者
- 旅行業
- 騎手、調教師
成年後見人や遺言執行者の業務もできなくなります。
一方、資格制限に該当しない職種の場合には自己破産をしても問題なく仕事を続けられます。たとえば以下のような仕事は制限対象になっていないので安心しましょう。
- 医師や看護師、薬剤師などの医療職
- 地方公務員や国家公務員などの一般の公務員
- 銀行員
資格制限を受ける期間
資格制限を受けるのは、いつからいつまでなのでしょうか?
多くの場合、「破産手続開始決定時から免責決定が確定するまで」の期間です。
同時廃止の場合には2~3か月、管財事件の場合で6か月程度が標準的です。
その期間を過ぎたらまた、元のように制限されていた仕事を再開できます。
資格制限を受けても永遠に仕事が制限されるわけではないので、過剰に心配する必要はありません。
秋山慎太郎総合法律事務所では債務整理に力を入れて取り組んでいます。会社やご家族に知られずに手続きすることも可能ですので、まずは一度ご相談ください。
« Older Entries