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【刑事事件】この程度で暴行罪になるの?
事例
Aは「顧客サービス第一」をモットーに千葉市中央区で飲食店を経営しています。
ある日、従業員Bが接客中にクレーマー体質のお客さんから無理な要求をされたのに腹を立て、お客様に暴言を吐くということがありました。
「顧客サービス第一」をモットーとしていたAは、Bに対してお客様に謝罪するよう言いましたが、Bはこれに応じませんでした。
閉店後、AはBを事務室に呼び出し、Bの顧客に対するサービス精神が欠けているとしてBを説教しましたが、Bがこれを無視して事務室を出て行こうとしたため、Bを引き留めようとBの衣服をつかんで引っ張り、その拍子にBが転倒してしまいました。
Bが千葉中央警察署に被害届を出したため、後日、Aは千葉中央警察署と千葉地方検察庁から事情聴取され、供述調書も作成しました。千葉地方検察庁に行った際、検察官からは示談をすすめられましたが、Aとしては、Bに対する教育の一貫でした行為であること、内容としても衣服をつかんで引っ張った程度であるから「犯罪などというのは大袈裟だ」と思って軽く考えています。本当に大丈夫でしょうか?
回答
上記のような行為でも刑法208条の暴行罪が成立します。検察官から示談をすすめられたということは、検察官は被害者Bの供述も踏まえて、Aの行為を暴行罪に該当すると判断していることは明らかです。軽く考えてはいけません。仮にAに前科がなかったような場合でも、Aは略式起訴されて罰金刑に処せられる可能性が高いです。Aが暴行に至った事情は、情状として考慮されますが、それは量刑(罰金の金額)に影響するだけで、不起訴となる訳ではありません。
<刑法208条>
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
罰金も前科となります。これを回避するには一刻も早く被害者Bに誠実に謝罪し、示談する必要があります。
示談が成立すれば、検察官がAを不起訴処分とする可能性が高くなります。
<解説>暴行罪にいう「暴行」とは?
刑法208条にいう暴行とは,人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
典型的なものとしては,殴る,蹴る,突く,押す,投げ飛ばすなど,身体への接触を伴う物理力を行使する行為です。過去には人の毛髪を不法に裁断する行為を暴行罪とした判例もあります(大判明45・6・20刑録18-896)。
また,刑法208条の暴行は,相手の五感に直接間接に作用して不快ないし苦痛を与える性質のものであれば,人の身体に向けられたものであれば足り,必ずしもそれが人の身体に直接接触することを要しないとされています。例えば,命中しなくても,通行人の数歩手前をねらって石を投げ付ける行為,人の乗っている自動車に石を投げて命中させ,ガラスを破損する行為,狭い四畳半の室内で日本刀の抜き身を振り回す行為,車両を衝突させるかのような気勢を示しながら,人に向かって走行させ,その身体に近接させる行為などにも暴行罪が成立します。
更に,音響,光,電気,熱等のエネルギーの作用を人に及ぼすことも有形力の行使に含まれるとされています。例えば,近くで太鼓や鉦等を連打し,頭脳の感覚が鈍り意識朦朧とした気分を与え,または脳貧血を起こらせる程度にさせるような行為,拡声器を用いて耳元で大声を発する行為などにも暴行罪が成立します。