賃貸借契約の際に「ペット禁止」というルールを設定していても、家主に無断でペットを飼う住人が後を絶ちません。勝手にペットを飼われた場合、大家は賃貸借契約を解除して借主へ退去を求めることができるのでしょうか?
またペットを飼われると原状回復の費用が高額になる場合もあります。契約解消の際には、借主へどこまでの原状回復費用を求めることができるのかが問題となるでしょう。
今回はペット禁止物件でペットを飼われたときの解除や原状回復義務について、弁護士が解説します。
1.ペット禁止特約は有効
賃貸借契約においては、強行規定に反しない限り貸主と借主が合意して特約を定めることができます。法律上、ペット禁止特約は禁止されていないのでペット禁止規定を定めることは有効です。
ペット禁止特約がついている場合、借主がペットを飼わないのは借主の義務となるので、貸主に無断でペットを飼育してはなりません。無断で飼育すると「用法遵守義務違反」として一種の債務不履行となってしまいます。
2.ペット禁止特約違反を理由とした解除はできるのか?
借主が勝手にペットを飼育した場合、貸主は賃貸借契約を解除して借主へ退去を求められるのでしょうか?
確かに特約に違反しているので、借主には債務不履行があります。ただし賃貸借契約はお互いの強い信頼関係を前提としたものなので、解除が認められるには信頼関係が破壊されるほどの背信的行為が必要と考えられています。
たとえば借主が他の住人にも特に迷惑をかけずひっそりと室内で犬や猫を飼っていた、というだけでは信頼関係が破壊されたとはいいにくく、解除が認められない可能性が高いでしょう。
一方、多数のペットを飼って臭いや騒音を発生させて周辺住人に迷惑をかけて苦情が来ているケース、部屋を非常に汚く使って家主に大きな損害を発生させている場合などには解除が認められる可能性があります。
ペット禁止特約違反にもとづく解除が認められるかどうかはケースバイケースなので、不明なときには弁護士へ相談しましょう。
3.ペット禁止特約違反を理由とした違約金の請求は?
ペット禁止特約に違反してペットを飼育されると、貸主側が借主側へ損害賠償請求することが考えられます。
このとき「違約金」の請求はできるのでしょうか?
違約金の請求の可否は「違約金についての規定」があるかどうかによって変わります。
賃貸借契約書に違約金が発生することや金額などについて明確にされていたら、定められた違約金を請求できるでしょう。
一方、違約金に関する規定がなければ請求はできません。
賃貸借契約締結の際にペット禁止特約をつけるなら、合わせて違約金についても合意して契約書に盛り込んでおくようおすすめします。
4.ペット禁止特約に違反された場合の原状回復について
ペット禁止特約に違反された場合、高額な原状回復費用が発生することがあります。
たとえばペットによる尿や糞の臭いがしみついていたり、犬が壁や柱を噛んだり猫がひっかいたりするケースも多いでしょう。
こういった場合、どこまでの原状回復を求められるのかが問題になります。
基本的に借主は貸主に対し、物件を元の状態にして返さねばなりません。ただし経年劣化についての損耗分は原状回復義務の範囲にならないと考えられています。
ペットによって特に大きく物件が損耗した場合には、借主が負担して原状回復しなければなりません。
とはいえ違約金の定めがあれば、貸主が損害を証明しなくても賠償金や原状回復の費用を請求できます。立証の負担を軽減するためにも、ペット禁止特約をつけるなら違約金についての定めをしておくのが得策といえるでしょう。
千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では、不動産に関する法務サポートに力を入れています。契約や借主との関係についてお悩みのある不動産オーナー様がおられましたら、お気軽にご相談ください。