従業員が残業代請求をしてきても、必ずしも全額の支払いに応じる必要はありません。
まずは弁護士に相談し、本当に支払い義務があるのか、いくら払うべきなのか確かめましょう。
今回は従業員から残業代請求されたときの対処方法をお伝えします。
残業代請求を無視するリスク
残業代が発生しているにもかかわらず支払わないと、企業側には多大なリスクが発生します。以下のような金額が加算されて、支払うべき額が上がってしまう可能性があるのです。
遅延損害金
未払い残業代には遅延損害金が加算されます。
従業員の在職中は年3%ですが、退職すると年14.6%に上がります。
放置していると遅延損害金がどんどん膨らんでしまうリスクがあります。
付加金
残業代請求を無視すると、従業員は残業代請求訴訟を起こす可能性があります。
判決で支払い命令が出るときには、裁判所が「付加金」というペナルティの金額を加算することができます。付加金は「残業代と同等の金額」なので、元本と付加金を合計すると「2倍」の残業代を支払わねばなりません。
従業員からの残業代請求を放置していると過大な支払いが必要になってしまうおそれがあるので、無視してはなりません。
従業員側の残業代計算が正しいとは限らない
従業員から送られてきた請求書に書かれている金額を、鵜呑みにする必要はありません。
従業員側の計算は間違っているケースも多々あります。従業員側に弁護士がついているからといって、正しいとは限りません。
自社に残っている資料と従業員側が送ってきた残業代の明細書を照らし合わせて、本当に払うべき金額といえるのか検討してみるべきです。
残業代を払わなくてよいケース
以下のような場合、残業代を払う必要はありません。
時効が成立している
残業代請求権には時効があります。
2020年3月までに発生した残業代は2年、4月以降に発生した残業代は3年で時効消滅します。従業員の主張する残業時期が古ければ、支払いを拒絶できる可能性があります。
管理監督者である
請求者が労働基準法上の管理監督者に該当する場合、残業代を支払う必要はありません。管理監督者とは経営者側と一体的な立場にあり企業内で相当の権限や報酬が与えられている人です。
管理監督者かどうかは実質的に判断されます。単に「課長」や「マネージャー」という名目を与えているだけでは管理監督者と認められない可能性があるので、自己判断は禁物です。
残業を禁止していた
残業を禁止していたにもかかわらず従業員が違反して残業を行ったら、残業代支払いを拒絶できる可能性があります。ただし従業員が残業していることを知りながら黙認していた場合などには支払い義務が発生するので、判断に困ったときには弁護士へ相談しましょう。
残業代をすでに支払い済みである
固定残業代制度を採用していて予定された範囲内の残業時間であれば、別途残業代を支払う必要はありません。
ただし固定残業制を導入していても、予定された時間を超過した場合には支払う必要があります。
裁量労働制が適用される
裁量労働制が適用されて適正に運営できている状態であれば、個別の残業代請求に応じる必要はありません。ただし深夜労働や休日労働をした場合には割増賃金を支払わねばなりません。
事業場外のみなし労働時間制が適用される
営業担当などで外回りが多く、「事業場外のみなし労働時間制」が適用される労働者の場合にも、個別の残業代は発生しません。ただし深夜労働や休日労働については割増賃金を払う必要があります。
交渉によって減額できることも
従業員側の計算が正しく残業代を払わねばならない状況でも、交渉によって減額できる可能性があります。
弁護士が代理人となって交渉すると、企業側の反論材料をあますところなく主張できて、有利な条件で解決できる可能性が高くなるものです。対応のための労力も削減できてコストカットできるメリットもあるでしょう。
残業代請求されてお困りの方がおられましたらお気軽に弁護士までご相談ください。