【企業・顧問】副業禁止は違法?裁判例や副業解禁のメリット、デメリットを弁護士が解説

日本では従来、副業を禁止する企業が大多数でした。しかし近年では働き方改革の影響もあって、副業解禁の動きが加速しています。

 

就業規則で副業を禁止して懲戒すると「違法」になる可能性もあります。

今回は副業禁止規定にもとづく懲戒解雇が違法とされた裁判例を交えながら、副業を解禁するメリットやデメリットを弁護士が解説します。

 

1.副業を認めるかどうかは企業の自由

従業員に副業を認めるかどうかは、基本的に企業側の自由です。

確かに副業を認めると、本業への支障が及んだり労働時間の把握が難しくなったりする可能性があり、副業を制限する合理性も認められます。副業を禁止しても、必ずしも違法ではありません。

 

ただし最近では「働き方改革」のスローガンのもと政府の方針も転換され、副業を解禁する動きが目立ってきています。

 

2.副業禁止規定にもとづく懲戒解雇が違法になるケース

副業禁止は基本的に違法ではありませんが、副業禁止規定にもとづいて懲戒処分を行うと違法になってしまう可能性があります。

副業が本業に支障を及ぼしておらず、他にも会社に損害やリスクを発生させていないのに懲戒解雇する合理的な理由がないと考えられるためです。

 

2-1.副業禁止規定にもとづく解雇が無効とされた裁判例

副業禁止規定にもとづく懲戒解雇が違法と判断された裁判例を示します。

 

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)

運送会社のドライバーが年に1、2回程度、他社で貨物運送のアルバイトを行った事案です。会社は兼業禁止規定に基づいて懲戒解雇しました。

裁判所は、従業員が職務専念義務に違反しておらず勤務先との信頼関係を破壊したとまでいえないとして、解雇無効と判断しました。

 

2-2.副業禁止規定が違法と判断されやすい要素

副業禁止による懲戒解雇が違法になりやすいのは、以下のような場合です。

  • 本業に対する影響がない、ほとんどない
  • 副業の内容は本業と無関係で、競業の可能性がない
  • 副業の規模が小さい
  • 勤務先の信用やブランドが毀損されるおそれがない

 

一方、従業員が競業によって企業に迷惑をかけた場合、信用やブランドを毀損した場合、本業をおろそかにした場合、情報を漏洩した場合などには懲戒解雇が認められる可能性も高くなります。

 

3.副業解禁のメリット

3-1.労働者のスキルアップ

従業員が副業をすると、新たな知識や経験を身につけられるのでスキルアップにつながります。副業で身につけたスキルを本業に活かせれば企業にとっても強い戦力となり、メリットを得られます。

 

3-2.人材確保

副業を認めると「自由に働ける職場」と評価されて優秀な人材が集まりやすくなります。

はたらきやすい職場であれば、人材が定着しやすく戦力確保にもつながるでしょう。

 

3-3.事業拡大のチャンス

従業員が副業で獲得した人脈や情報、スキルを企業が積極的に活用すると、他企業や団体と関わりができて取引につながったり、共同で技術開発したりして、事業拡大の機会になる可能性もあります。

 

4.副業解禁のデメリット

4-1.本業がおろそかになる

本業の最中に副業のメールチェックや返信などの作業を行う人もいますし、本業が休みの際にアルバイトなどをして疲れが溜まったり睡眠不足になったりする人もいます。

本業に支障をきたし、生産性が低下してしまうリスクが発生します。

副業を解禁するなら、本業に支障の及ばない方法を検討し、従業員と会社がお互いに確認しておいた方がよいでしょう。

 

4-2.情報流出のリスク

従業員が副業の際に勤務先企業の情報を漏らしてしまうリスクも発生します。

副業を解禁するなら、情報取扱い方法についてしっかり取り決めておくべきといえるでしょう。

 

4-3.信用毀損リスク

従業員が副業の遂行に際して違法行為を行ったり不用意な発言をしたりして、企業の信用が害される可能性もあります。企業側が副業を解禁するなら、従業員の情報発信方法についても確認しておきましょう。

 

企業が副業を解禁するなら、リスクを軽減するためのルールを取り決めておくと安心です。労務管理に関してお悩みがある方は、お気軽に弁護士までご相談ください。

 

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