住宅ローンが残っている場合、家はどのように財産分与すればよいのでしょうか?
まずはオーバーローンになっていないか調べたうえで、離婚後も家にどちらかが住み続けるのか、家を売却して清算するのかなどいろいろなことを決めなければなりません。
今回は住宅ローンが残っている場合の財産分与方法を弁護士が解説しますので、離婚を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
1.オーバーローンかアンダーローンか調べる
住宅ローンが残っている家に居住している場合、まずは「オーバーローン」か「アンダーローン」か確認しましょう。
オーバーローンとは住宅ローン残額から家の価値を引いたときに「マイナス」になる場合です。「家を売却してもローンを完済できないケース」にオーバーローンとなります。
アンダーローンは住宅ローン残額から家の価値を引いたときに「プラス」になる場合です。
家を売却するとローンを完済できるのがアンダーローンの状態です。
オーバーローンかアンダーローンか調べる方法
家がオーバーローンかアンダーローンか調べるには、以下の手順で進めてください。
残ローン額を把握する
まずは残ローン額を把握しなければなりません。金融機関から受け取っているローン償還表をみて現在のローン残高を確認しましょう。
家を査定に出す
次に「家の価値(時価)」を知る必要があります。お近くの不動産会社やネットの査定サービスを使って無料の簡易査定を依頼しましょう。
数日~1週間程度で家の査定額が明らかになります。
差し引き計算する
3ステップ目として、家の査定額から残ローン額を引き算します。
マイナスになればオーバーローン、プラスになればアンダーローンです。
2.オーバーローンの場合の財産分与
残ローン額が高額でオーバーローンになる場合、家は財産分与の対象になりません。
家は除外し、他の預貯金や保険、車などの財産についてのみ財産分与を進めます。
3.アンダーローンの場合の財産分与
残ローン額より家の価値が高くアンダーローンの場合、家は財産分与の対象になります。
「家の価値–残ローン額」の価額が財産分与対象額となり、原則的にはその金額を夫婦2分の1ずつにします。
たとえば家の価値が3000万円、残ローン額が1000万円の場合、夫婦の取得分はお互いに1000万円ずつとなります(2分の1ずつの割合で分与するケース)。
夫が家を取得するなら妻へ1000万円の代償金を払うと清算できます。反対に妻が家を取得するなら夫へ1000万円を払います。
家を売却して清算するなら受け取った売却金2000万円を、夫婦で1000万円ずつに分配するとよいでしょう。
4.家に住み続けるか売却するか決める
住宅ローンつきの家がある場合、離婚後もどちらかが家に住み続けるのか売却するのか、検討しなければなりません。
4-1.どちらかが住み続ける場合の対処方法
住宅ローンを払っている側が家を取得するなら、継続して住宅ローンを払い、家に住み続けるとよいでしょう。
問題は住宅ローンを払っていない側が家に居住する場合です。この場合、金融機関と交渉して住宅ローン名義を変更する必要がありますが、金融機関は名義変更に簡単には応じてくれません。そのままでは居住者と所有名義や住宅ローン名義が異なる状態になってしまいます。
名義を揃えるために「住宅ローンの借り換え」が必要になるケースも多いですが、居住者に収入や資力がなければ借り換えは困難です。
結果的に住宅ローン債務者と居住者が異なってしまい、毎月住宅ローンが支払われるかどうかが不安定な状態になる可能性があります。
4-2.家を売却する方法
離婚後の家の処分に困ったら、家を売却しましょう。
アンダーローンなら家を売却してローンを完済できます。
オーバーローンのケースでも「任意売却」すれば家を売却できます。ただし残ったローンについては離婚後も継続して返済していく必要があります。
住宅ローンが残る家がある場合、財産分与は複雑になります。きちんと処理しておかないと、離婚後に大きなトラブルになる可能性があり、注意すべきといえるでしょう。
迷ったときには弁護士までお気軽にご相談ください。