【相続】相続開始から3か月以上経過してからの相続放棄

事例

前回の事例の続きになります。

Yさんは、6年前に亡くなった伯母さんの相続人として、市原市にある亡伯母さん名義の固定資産税を支払わなければならないことになってしまいました。建物は老朽化しており、Yさんとしては、建物を相続するつもりはなく、滞納している固定資産税も支払いたくはありません。

しかし、Yさんは「相続放棄は3か月以内にしなければならない」と聞いたことがあり、伯母さんが亡くなってから既に6年も経ってしまっているため相続放棄できないのではないかと不安になりました。

 

回答

相続放棄は、相続開始(被相続人の死亡)から3か月以上経ってもできる場合があります。

相続の承認または放棄をすべき期間について、民法第915条第1項は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三個月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」と規定しています。

 

本件は「自己のために相続の開始があったことを知った時」に該当するか否かの問題であり、判例は「相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指す」(大決大15.8.3民集5-679)という基準を示しています。

 

Yさんは、6年前に伯母さんが亡くなったのは知っていましたが、従兄弟が伯母さんの養子だったことも、伯母さんと離縁していたことも知らず、伯母さんの相続人は従兄弟だと思っていました。Yさんにとって「相続開始の原因たる事実の発生」すなわち伯母さんが亡くなった事実を知っただけでは「自己のために相続の開始があったことを知った」ことにはなりません。Yさんが、従兄弟は伯母さんの相続人ではないという事実を知ってはじめて「自己が相続人となったことを覚知した」ことになります。

よって、Yさんが、従兄弟は伯母さんの相続人ではないこと、すなわち伯母さんの相続人はYさん自身だということを知ってから3か月以内に相続放棄の手続をすればまだ間に合います。

当事務所において相続放棄の手続をし、無事、Yさんは固定資産税を支払わなくて良いことになりました。

 

相続放棄の手続について

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続します。

相続放棄の申述書を作成し、

①被相続人の除籍謄本
②被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
③放棄する人の戸籍謄本
④被相続人と放棄する人との関係が分かる戸籍謄本(①③で分かれば不要)

と一緒に家庭裁判所に提出します。印紙800円と指定された券種の郵便切手も納付します。

申述書には「相続の開始を知った日」「放棄の理由」「相続財産の概略(資産・負債)」を記載します。

申述書を提出してからおよそ1か月で家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。さらに「相続放棄申述受理証明書」を希望する場合には、家庭裁判所に印紙150円を納付して発行を受けることができます。

 

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