「独身と聞いていたから交際していたのに、実は奥さんがいた」
「結婚しようと言ってくれていたのに、実は既婚者だった」
「既婚男性に騙されたので、慰謝料請求したい」
相手が独身と聞いていて結婚の約束までしていたのに、実は既婚者だったというケースがあります。そのようなとき、「貞操権侵害」として、相手に慰謝料請求できる可能性があります。
今回は「貞操権」とは何か、貞操権侵害で慰謝料請求できる場合とできない場合について、解説します。
1.貞操権とは
貞操権とは、性的な自由に対して不当に干渉されない権利です。
相手が未婚と信じて肉体関係を持ったにもかかわらず実は既婚だった場合、始めから既婚と知っていたら男女関係にはならなかったでしょうから、性的な判断の自由が奪われています。そこで貞操権が侵害されたと言え、不法行為が成立する可能性があります。
不法行為が行われると被害者は加害者に対して損害賠償請求(慰謝料請求)できます。
2.貞操権侵害で慰謝料請求できるケース
ただし、既婚者と肉体関係を持ったとしても、常に損害賠償請求できるわけではありません。
貞操権侵害として慰謝料が認められるのは、以下のような場合です。
- 肉体関係があった
- 「結婚する」と言われていた
- 女性側が未成年
- 性交渉が無理に行われた
- 男性は遊びのつもりだった
男性側の違法性が強いケースにおいて、貞操権侵害と認められやすいです。
3.貞操権侵害で慰謝料請求できないケース
反対に、以下のような場合には貞操権侵害として慰謝料請求することが難しくなります。
- 肉体関係がなかった
- 結婚する話は出ていなかった
- お互いに遊びだった
- 女性側も、判断能力のある年齢になっていた
4.貞操権侵害の裁判例
貞操権侵害による慰謝料を認めた裁判例をいくつかご紹介します。
4-1.最高裁昭和44年9月26日
19歳の女性が既婚者の男性から「結婚しよう」と嘘をつかれて肉体関係を持った事案です。
女性は妊娠出産して、捨てられました。裁判所は男性に対し、60万円の慰謝料支払い命令を下しています。
4-2.東京地裁平成19年2月15日
男性が「妻と別れるから結婚しよう」と言って女性と肉体関係を持ち、婚約を破棄した事例です。裁判所は慰謝料399万円(すでに合意書によって取り決められていた金額)と弁護士費用39万円の合計438万円の支払い命令を下しています。
ただし、男性の妻による慰謝料請求についても、165万円を認容しています。
貞操権で慰謝料を請求する際には、相手の妻から反対に不倫慰謝料を請求される可能性もあるので慎重な対応が必要です。また、具体的なケースによって、請求の可否や慰謝料の金額も変わってきます。
適切に対応して有利な解決に結びつけるには、弁護士によるサポートが必要です。お困りの際には、一度ご相談下さい。