貸している土地や建物の賃料が不相当に低くなっている場合、地主や大家は賃料増額を求められます。
ただ、手順を間違えると借主との間で大きなトラブルになってしまう可能性もあるので、法律の定める正しい方法で増額請求を進めましょう。
今回は賃料増額請求の進め方を弁護士が解説します。
借主と話し合う
賃料を増額してもらいたいなら、まずは借主と直接話し合うようおすすめします。相手に周辺の賃料相場を示して今の賃料が低すぎることを理解してもらえれば、任意に増額に応じてもらえる可能性もあります。
増額の合意ができたら、増額した賃料について定めた合意書を作成しましょう。
賃貸借契約書を作成し直してもかまいません。
賃料増額調停を申し立てる
当事者間の話し合いでは増額について合意できない場合には、裁判所で賃料増額調停を申し立てる必要があります。
相手が強固に賃料増額に反対していて調停が成立する余地がなくても、必ず調停を申し立てなければなりません。賃料増額請求には「調停前置主義」が適用されるからです。調停なしにいきなり訴訟を申し立てても受け付けてもらえないので注意しましょう。
なお協議段階をとばしていきなり調停を申し立てるのは自由です。
調停では、不動産鑑定士などの専門知識を持った人が調停委員として関与し、当事者の意見を調整してくれます。調停委員を介した話し合いとなるので、相手と直接話す必要はありません。調停委員から「どの程度増額すべきか」金額についても意見を言ってもらえるケースがあります。
当事者双方が賃料の増額や増額割合について納得したら、調停が成立し新たな賃料が適用されるので、増額された賃料を受け取れるようになります。調停調書には強制執行力もあるので、相手が従わない場合には差し押さえも可能です。
賃料増額訴訟を提起する
調停はあくまで話し合いによる解決手段なので、合意できなければ不成立となってしまいます。
それでも賃料の増額を求めたい場合には、賃料増額訴訟を提起しましょう。
訴訟では裁判所が賃料増額の必要性や増額幅を判断し、判決を下します。
借主が納得しなくても、賃料を増額すべき事情があれば裁判所が増額を認めてくれますし、いくら増額すべきかも裁判所が決定します。
ただし訴訟で増額を認めてもらうには、貸主側が以下のような事実を立証する必要があります。
- 公租公課が上がり、現在の賃料が不相当に低くなっている
- 近隣の相場と比べて現在の賃料が著しく低くなっている
- 経済事情の変動により現状の賃料が不相当に低い状態である
また当事者の主張や立証資料だけでは不足するため、訴訟で判決が下される場合には「不動産鑑定」が行われるケースが多数です。鑑定が行われると、当事者が数十万円程度の鑑定費用を負担しなければなりません。
和解するケースも多い
賃料増額訴訟では途中で当事者が和解するケースもよくあります。
裁判官が貸主と借主の間に入って利害を調整し、両者が納得できる妥協点を見出します。
和解すれば早めにトラブルを解決できますし、鑑定を避けられるので余分な費用負担をせずにすむメリットもあります。
賃料が決まるまでの支払金額
貸主側が借主側へ賃料増額請求をしても、すぐに増額されるわけではありません。
調停や裁判をしている間に1年以上の時間が経つケースもあります。
借地借家法によると、借主は増額が確定するまでの間「自分が相当と考える賃料」を払えば済むと規定されています。たとえば従来通りの賃料が相当と考えるなら、従来通りの金額を支払っていれば遅延状態にはなりません。
ただし判決で増額が確定した場合には、不足分に年10%の利息をつけて貸主へ払う必要があります。
賃料増額請求をスムーズに進めるには弁護士によるサポートが必要です。当事務所では不動産オーナー様へのご支援に力を入れていますので、千葉県で不動産をお持ちの方がおられましたらお気軽にご相談ください。