賃貸物件内に騒音を出す住人がいると、周辺住民に大きな迷惑がかかってしまいます。
アパートなどの集合物件で騒音を出す住人がいると、他の住戸の入居者が退去してしまうので賃貸オーナーにとっては大きなリスク要因となるでしょう。
今回は騒音を出す迷惑住人に対し、大家側から賃貸借契約を解除できるのか弁護士が解説します。
騒音の苦情にお困りの不動産オーナーさまはぜひ参考にしてみてください。
1.賃貸物件で騒音トラブルを放置するリスク
アパートなどの賃貸物件で騒音を出す迷惑住人を放置していると、大家には以下のようなリスクが発生します。
1-1.苦情が来る
大きな騒音を放置すると、近隣住民から大家へ苦情が来るケースが多々あります。
適切に対応しないと調停や訴訟、仮処分などの申立をされるリスクも発生します。
1-2.入居者が退去してしまう
騒音を出す迷惑住人がいると、他の入居者が住みにくくなって、賃貸アパートから退去してしまう可能性も高くなるでしょう。そうなったらアパートの収益性が落ち込み経済的にダメージも大きくなります。
1-3.新規の入居者が入らない
空き室が生じたときに新規に入居者を募ろうとしても、騒音を出す人がいるとなかなか決まらないものです。
賃料を切り下げなければならない場合もありますし、切り下げても入居者が入らないので空き室状態が続いてしまうリスクも発生します。
2.騒音トラブルを理由に賃貸借契約を解除できるのか
物件内で騒音トラブルを引き起こしている住人がいる場合、大家側から賃貸借契約を解除できる可能性があります。ただしすべてのケースではありません。
以下で解除できるケースとできないケースについて、お伝えします。
2-1.用法遵守義務違反となる場合
賃借人には、適切な方法で物件の利用をすべき「用法遵守義務」を負っています。
日常生活に必要な限度を超えて騒音を発生させると、用法遵守義務違反となると考えられます。賃貸借契約書にも「迷惑行為」を禁止すると定めるものが多数です。
そこで大家側としては、騒音を出す住人に対して用法遵守義務違反を理由に契約を解除することが考えられます。
ただし音を出したからといって、必ずしも契約を解除できるとは限りません。
周辺住人にしてみても、一定限度までの音については「やむを得ないもの」として受け入れるべきだからです。このように「我慢すべき限度」を法律上「受忍限度」といいます。
具体的にどの程度までの音であれば受忍限度内といえるかについては、個別具体的に判断されます。
2-2.騒音の基準値
事業者の出す騒音については、騒音防止法などの法律や条例によって規制されています。
概ね40~60デリベルが基準となっているので、それを超える騒音を発し続けている場合には賃貸借契約の解除も認められやすくなるでしょう。
ただし騒音防止法等の法令は、個人を直接規制するものではありません。40~60デシベルを超えていても、解除が認められない可能性もあります。
なお住人による迷惑行為がひどく、貸主と借主の信頼関係が破壊されてしまった場合には、無催告で賃貸借契約の解除ができると考えられています(東京高裁昭和61年10月28日など)。
3.騒音の苦情を受けたらすべきこと
大家が周辺住民から騒音の苦情を受けたら、以下のように対応しましょう。
3-1.証拠の収集
まずは騒音についての証拠を集めるべきです。音を出している証明ができなければ、迷惑住人に対して何も求められません。録音したり測音計で音量を測ったりしましょう。
3-2.事実関係の調査
周辺住人に聞き込みを行い、騒音が出ている頻度や時刻、音の種類や大きさなどの事実関係を調査しましょう。
3-3.改善を求める
音を出している本人に対し、騒音を発さないように注意しましょう。
3-4.法的な対応
相手に改善を求めても対応してもらえない場合、最終的に賃貸借契約の解除も検討すべきです。法的な要件を満たすかわからない場合には弁護士までご相談ください。
当事務所では、賃貸物件のオーナー様への法的支援に積極的に取り組んでいます。騒音とラブルにお悩みの方がおられましたらお気軽にお問い合わせください。