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【企業・顧問】退職勧奨とは?メリットとデメリットを解説

2021-10-28

「退職させたい従業員がいるけれど、法律上の解雇理由があるかどうかわからない」

そんなときには「退職勧奨」が役立ちます。

退職勧奨により従業員が自主的に退職すれば、基本的に「不当解雇」にはなりません。

 

今回は退職勧奨とはどういった手続きなのか、企業にとってのメリットとデメリットや退職勧奨をお勧めする状況など、お伝えします。

 

 

1.退職勧奨とは

退職勧奨とは、企業側が従業員に対し、自主的な退職を促すことです。

対象の従業員に「退職してはどうか?」と告げて説得し、本人が納得して自ら退職届を提出することによって退職を実現します。

 

退職勧奨以外の方法で従業員を辞めさせるには「解雇」しなければなりません。

しかし解雇が有効になるには「客観的合理的理由」や「社会的相当性」といった厳格な要件を満たす必要があります。現実には、企業側が辞めさせたくても退職理由が認められないケースも少なくありません。退職勧奨の場合、解雇と異なり、法律上の解雇理由がなくても退職させることができます。

 

辞めさせたい従業員がいる場合、いきなり解雇するより退職勧奨を行う方が安全といえるでしょう。

 

 

2.退職勧奨のメリットとデメリット

メリット

法律上の解雇理由がなくても解雇できる

従業員を解雇するには「解雇の客観的合理性」と「社会的相当性」の厳格な要件を満たさねばなりません。満たさなければ解雇は無効になってしまいます。

たとえば「他の社員より成績が悪い」「遅刻や早退が目立つ」といった程度であれば、解雇が認められない可能性が高くなります。

 

退職勧奨であれば、厳密な解雇の要件を満たす必要はありません。勤務態度が悪い、成績が振るわないなどの理由であっても従業員が納得さえすれば、退職させることができます。

 

不当解雇と主張されるおそれが低い

従業員を解雇すると、後に「解雇理由がなかった」「不当解雇」と主張される可能性があります。「従業員としての地位確認」や「未払い賃金」「慰謝料」などを請求され、最終的には訴訟に発展してしまうケースも少なくありません。

 

退職勧奨であれば、従業員は納得して自主的に辞めるので「不当解雇」にはなりません。

後に法的トラブルとなるリスクを大きく軽減できるメリットがあります。

 

デメリット

手間がかかる

退職勧奨には手間がかかります。

どういった方法で退職を勧めるか事前に検討しなければならず、従業員を説得する必要もあります。従業員がすぐには納得しない場合、粘り強く説得しなければなりません。

 

退職金の上乗せが必要なケースもある

従業員に自主退職を受け入れさせるには、説得だけでは足りず「退職金の上乗せ」が必要となるケースもよくあります。

解雇であれば退職金を上乗せする必要はありません。

退職勧奨をすると経済的にデメリットが生じる可能性があります。

 

従業員が受け入れるとは限らない

退職勧奨をしても従業員が必ず受け入れるとは限りません。強要はできないので、断られると退職勧奨には失敗してしまいます。

 

3.退職勧奨でよくある理由、検討すべき状況

以下のような従業員を辞めさせたいなら、退職勧奨を検討してみてください。

 

勤務態度が悪い

遅刻や早退、欠勤を繰り返すなど、勤務態度が悪い従業員に対しては、退職勧奨が有効です。

周囲とトラブルを起こす

協調性に欠け、同僚や上司、部下、他の部署の従業員など周囲とのトラブルを起こす人、パワハラやセクハラ行為をする人などへ退職勧奨するケースもよくあります。

能力不足

成績があまりに悪い、飲み込みが悪い、いくら指摘してもミスが続く、顧客から苦情が来ているなど、能力があまりに劣る従業員についても退職勧奨が有効です。

経営上の理由

経営が苦しくなって人員削減するとき、いわゆる「リストラ」として退職勧奨を行うケースもあります。

 

退職勧奨を行う際には退職を強要してはなりません。強要すると「退職が無効」と判断される可能性があり、正しい方法で進める必要があります。辞めさせたい従業員がいるときには弁護士がお力になりますので、お気軽にご相談ください。

【企業・顧問】残業代請求されたときの対処方法

2021-10-22

従業員が残業代請求をしてきても、必ずしも全額の支払いに応じる必要はありません。

まずは弁護士に相談し、本当に支払い義務があるのか、いくら払うべきなのか確かめましょう。

 

今回は従業員から残業代請求されたときの対処方法をお伝えします。

 

残業代請求を無視するリスク

残業代が発生しているにもかかわらず支払わないと、企業側には多大なリスクが発生します。以下のような金額が加算されて、支払うべき額が上がってしまう可能性があるのです。

 

遅延損害金

未払い残業代には遅延損害金が加算されます。

従業員の在職中は年3%ですが、退職すると年14.6%に上がります。

放置していると遅延損害金がどんどん膨らんでしまうリスクがあります。

 

付加金

残業代請求を無視すると、従業員は残業代請求訴訟を起こす可能性があります。

判決で支払い命令が出るときには、裁判所が「付加金」というペナルティの金額を加算することができます。付加金は「残業代と同等の金額」なので、元本と付加金を合計すると「2倍」の残業代を支払わねばなりません。

 

従業員からの残業代請求を放置していると過大な支払いが必要になってしまうおそれがあるので、無視してはなりません。

 

従業員側の残業代計算が正しいとは限らない

従業員から送られてきた請求書に書かれている金額を、鵜呑みにする必要はありません。

従業員側の計算は間違っているケースも多々あります。従業員側に弁護士がついているからといって、正しいとは限りません。

 

自社に残っている資料と従業員側が送ってきた残業代の明細書を照らし合わせて、本当に払うべき金額といえるのか検討してみるべきです。

 

残業代を払わなくてよいケース

以下のような場合、残業代を払う必要はありません。

 

時効が成立している

残業代請求権には時効があります。

2020年3月までに発生した残業代は2年、4月以降に発生した残業代は3年で時効消滅します。従業員の主張する残業時期が古ければ、支払いを拒絶できる可能性があります。

 

管理監督者である

請求者が労働基準法上の管理監督者に該当する場合、残業代を支払う必要はありません。管理監督者とは経営者側と一体的な立場にあり企業内で相当の権限や報酬が与えられている人です。

 

管理監督者かどうかは実質的に判断されます。単に「課長」や「マネージャー」という名目を与えているだけでは管理監督者と認められない可能性があるので、自己判断は禁物です。

 

残業を禁止していた

残業を禁止していたにもかかわらず従業員が違反して残業を行ったら、残業代支払いを拒絶できる可能性があります。ただし従業員が残業していることを知りながら黙認していた場合などには支払い義務が発生するので、判断に困ったときには弁護士へ相談しましょう。

 

残業代をすでに支払い済みである

固定残業代制度を採用していて予定された範囲内の残業時間であれば、別途残業代を支払う必要はありません。

ただし固定残業制を導入していても、予定された時間を超過した場合には支払う必要があります。

 

裁量労働制が適用される

裁量労働制が適用されて適正に運営できている状態であれば、個別の残業代請求に応じる必要はありません。ただし深夜労働や休日労働をした場合には割増賃金を支払わねばなりません。

 

事業場外のみなし労働時間制が適用される

営業担当などで外回りが多く、「事業場外のみなし労働時間制」が適用される労働者の場合にも、個別の残業代は発生しません。ただし深夜労働や休日労働については割増賃金を払う必要があります。

交渉によって減額できることも

従業員側の計算が正しく残業代を払わねばならない状況でも、交渉によって減額できる可能性があります。

弁護士が代理人となって交渉すると、企業側の反論材料をあますところなく主張できて、有利な条件で解決できる可能性が高くなるものです。対応のための労力も削減できてコストカットできるメリットもあるでしょう。

 

残業代請求されてお困りの方がおられましたらお気軽に弁護士までご相談ください。

 

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