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【相続】どんな分け方がある? 遺産分割の方法
遺産相続の際、遺言書があればそれに従って遺産を分割するのが原則ですが、遺言書がない場合、あるいは遺言書があっても遺言書に記載されていない遺産がある場合には、遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議の際には、無用なトラブルを避けるためにも、具体的な遺産分割の方法を知っておく必要があります。
ここでは、遺産相続の際の「遺産分割の方法」についてご紹介します。
方法その1:現物分割
現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく、遺産をそのまま各相続人に割り当てていくという方法です。
例えば「預金は妻に」「不動産は長男に」「現金と自動車は次男に」などというように分けることができれば、最も単純で分かりやすく、手続も簡単に行えますが、この場合、公平か否かをひと目で判断できないという難点があります。相続人同士の強い信頼関係と譲り合いの気持ちが必要です。
不動産の場合、公平性を重視して、土地であれば分筆、建物であれば区分して各相続人が取得するということも考えられますが、この場合、土地については地積測量図、建物については建物図面及び各階平面図を用いて取得部分を特定する必要があります。また、建築関係の法令等の確認も必要となります。
方法その2:代償分割
代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を越える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させるという方法です。例えば、相続人の1人が不動産を全部取得する代わりに、他の相続人に対して、各自の法定相続分に相当する金銭(代償金)を支払うという方法です。
現物分割が不可能な場合、現物分割をすると遺産の価値が損なわれてしまう場合、特定の相続人に特定の遺産を取得させる必要がある場合などに有用な分割方法です。
但し、代償分割の対象となる財産の評価をいくらと見るのかによって、支払うべき代償金の額が変わってきますので、この点で争いになることがあります。また、代償金が多額になると、そもそも高額な代償金を準備できるか否かという資力の問題も出てきます。
方法その3:換価分割
換価分割とは、不動産や株式といった遺産を売却等で換金した後に、それを分配するという方法です。
遺産を換金してしまうことで価値が明確になりますので、現物分割による不公平感や代償分割による財産の評価の問題は解消されますが、遺産に思い入れがある場合には、それを手放さなければならないという難点があります。また、常時価格が変動する株式などは、売却の時期についてもきちんと合意しておく必要があります。
方法その4:共有分割
共有分割とは、遺産の一部、遺産の全部を具体的相続分による物権法上の共有取得とする方法です。ある意味公平な分割方法ですが、将来的に共有状態を解消するには、改めて共有物分割請求をする必要がありますので、問題解決を先送りしているだけという感が否めません。因みに、家庭裁判所の審判では「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の順に検討することになっており、共有分割は限定的な場合にしか認められません。
遺産分割には、以上にご紹介した4つの方法があります。これらの枠組みの中で、更に具体的にどのように分割するのかを相続人同士で話し合うことになります。相続人同士の話合いで解決できない場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
【相続】遺言書に自分の名前がない場合は諦めるだけなの?(遺留分侵害額請求権)
遺産相続の際に大きな意味を持つ遺言書。そこに名前があれば、本来は相続権のない内縁の妻や夫でも、遺産を受け取ることができるようになります。
では、もしも相続人の立場にありながら遺言書に自分の名前がなかったら、その人は相続を諦めなければならないのでしょうか。
遺言書に名前がない、という問題は遺産相続においてよく発生します。
ここでは、遺言書に自分の名前がない場合における相続人の権利についてご紹介します。
相続人には遺留分がある!
遺言書に自分の名前がなかった場合でも、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、親)であれば、法律で定められた最低限の遺産を受け取る権利があります。それを遺留分と呼びます。
本来、被相続人には自分の財産を自由に処分する権利があります。被相続人が特定の相続人に全財産を相続させたり、第三者に全財産を贈与したり遺贈したりすることは、被相続人の自由であり、相続人が口を挟むことではありません。しかし、これによって相続人の相続分に対する正当な期待が裏切られ、相続人の生活が脅かされるような事態になることは、決して好ましいことではありません。
そこで、被相続人の自由な財産処分と相続人の保護との調和の観点から、遺言でも侵し得ない、相続人の最低限の取得分の確保を目的として定められたのが遺留分という制度です。
相続人は、遺言書に自分の名前がなかったとしても、遺留分侵害額請求権を行使して、法律で定められた割合の遺産を取得することができるのです。
遺留分の割合
遺留分の割合については民法1028条で以下のように定められています。
① 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
② 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
被相続人の父母や祖父母などの直系尊属のみが相続人の場合(被相続人に配偶者や子どもがいない場合)は①に該当し、遺留分割合は3分の1。相続人が配偶者や子どもの場合は②に該当し、遺留分割合は2分の1になります。例えば、相続人が妻と子ども3人の場合には、妻の遺留分割合は4分の1、子どもの遺留分割合は各12分の1となります。
遺留分侵害額請求の方法
では、遺留分はどのようにして請求するのでしょうか。
遺留分は、受遺者および受贈者に対して遺留分侵害額請求の意思表示をします。遺留分侵害額請求は、口頭でも書面でもおこなうことができますが、請求したことを証拠に残しておくために内容証明郵便で通知した方が良いでしょう。なぜなら、遺留分侵害額請求権には消滅時効があるからです。民法1042条は「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と定めています。以後は、遺留分を請求することができなくなってしまうのです。
遺留分侵害額請求の意思表示は、できるだけ早めに内容証明郵便で通知するようにしましょう。
以上のように、相続人には遺留分が認められており、遺言書に名前がなかった場合でも、相続財産に対して最低限の割合は確保することができます。
遺言書に自分の名前がなかったと言う方も、ここで紹介したことを参考に、落ち着いて対処するようにしてください。
【相続】遺言書作成の注意点
「遺産相続をめぐるトラブルから事件に発展した」というようなニュースを耳にすることは少なくありません。こうした問題を未然に防止するための重要なカギとなるのが「遺言」です。ここでは遺言をする際の注意点について解説します。
そもそも「遺言」とは
「遺言」とは、自分の死後の財産の分け方などについて、遺族にその意思を伝えるものです。つまり遺言は人生で最終の意思表示と言えます。
自分で築いてきた財産を自分の意思に沿う形で相続人に分配し、後々の相続人間での争いを防ぐには、遺言はとても有効な方法です。また、遺言を利用することで、例えば内縁の妻のように相続人になることができない人に対しても、自分の死後に財産を遺すことも可能になります。
民法の定める方式に従って遺言書を作成する必要がある
このように遺言は上手に利用すれば非常に意味のある制度です。しかし、注意しなければならないのは、遺言の方式や効果については、民法が細かく定めており、民法の定める方式に従って作成された遺言書でなければ、遺言の効果は生じないということです。例えば相続人となる配偶者と子供達を全員枕元に呼び、全員の面前で遺産の分配方法を口頭で伝えたものをビデオ撮影していたという場合、一見、相続人全員に故人の意思が明確に伝わっている以上、相続人は故人の意思に拘束され、その後争いになる心配はないようにも思われます。しかし、このような場合でも、民法に定める方式に従っていない以上、法律上は有効な遺言があったとは認められません。もし相続人の一人が、故人の意思に反する主張をし出したとしても、その者に対して法的には故人の最終意思を尊重するよう要求することはできないのです。
遺言をしても、そのとおりに遺産分割がなされないこともある
遺言は故人の最終の意思を伝えるものなので、できる限り尊重されなければなりません。遺言による財産処分は、法定相続分に優先します。相続人は、法的な要件を満たした遺言には原則として従わなければなりません。
とは言え、全ての相続人と遺贈を受ける人(受遺者)の同意が得られる場合には、遺言と異なる遺産分割を行うことは認められます。関係者全員が遺言の内容とは異なる内容での遺産分割に合意する以上、そのような円満になされた合意を否定する理由はないからです(注:遺言者が遺言と異なる遺産分割を禁じている場合や、選任された遺言執行者の同意が得られない場合など認められない場合もあります。)。但し、税務上は、一旦遺言によって他の人が取得した遺産を別の人に譲渡したとみなされ、贈与税が発生する可能性もありますので、税理士さんに相談して、よく検討する必要はあります。
相続人には最低限の財産をもらう権利がある
遺言に定められていたとしても、亡くなった方の兄弟姉妹を除く相続人には、相続財産の一定割合が確保される制度があります。「遺留分」と呼ばれる制度です。この遺留分は、遺言によっても奪うことができない最低限の権利ですので、相続人が遺言の内容に拘束されないケースの一つといえるでしょう。遺言によって遺留分を侵害された相続人は、他の相続人や受遺者に対して遺留分侵害額請求を行い、遺産の返還を受けることができます。
遺言書作成の注意点
このように、遺言は、民法の定める方式に従って遺言書を作成しなければ効力が生じないという点に、先ずは注意が必要です。そして、仮に遺言書を作成したとしても、その内容が相続人の誰かの遺留分を侵害しているような場合には、後々トラブルになってしまうことがありますので、トラブルの防止を重視するならば、予め遺留分を考慮した内容で遺言書を作成するようにしましょう。
【相続】遺産相続の際の法定相続分とは
遺産相続において、各相続人が取得すべき遺産の割合は法律で定められています。法律で定められた各相続人の取り分のことを「法定相続分」と言います。この法定相続分についてご説明します。
法定相続分は遺産分割の目安
亡くなった方の財産を分割する際に最優先されるのは、故人の意思すなわち「遺言」です。遺言によって決められた相続分(割合)は「指定相続分」と呼ばれます。
一方、遺言がない場合には、相続人が話合いで分け方を決めることになります。その分け方の目安として民法に定められているのが「法定相続分」です。
相続人となるのは誰?
亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。なお、内縁関係の人は、相続人にはなりません。
配偶者以外の人は、以下の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第一順位 亡くなった人の「子」
第二順位 亡くなった人の「直系尊属」
第三順位 亡くなった人の「兄弟姉妹」
第一順位の人がいない場合は第二順位の人、第一順位の人も第二順位の人もいない場合は第三順位の人が相続人となります。
法定相続分はどう定められている?
民法は法定相続分を次のように定めています。
・配偶者と子が相続人である場合
配偶者2分の1 子2分の1
・配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者3分の2 直系尊属3分の1
・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
子、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、その中で均等に分けます。例えば、配偶者がおらず子が3人いる場合は、子それぞれが3分の1、配偶者と子3人がいる場合は、配偶者が2分の1、子それぞれが6分の1となります。
冒頭でもお伝えしましたとおり、民法に定められた法定相続分は、必ずこの相続分で遺産分割しなければならないというものではありません。実際には、法定相続分どおりの割合で分割されるケースよりも、相続人全員で話し合ってそれぞれが取得する遺産を決めるケースの方が多いのではないでしょうか。法定相続分は、そのような話合いの際に一つの目安として役立つものなのです。
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