【不動産】夫が死亡して妻が物件を使用したら賃借権の無断譲渡で解除できる?内縁の妻の場合は?

「夫婦に物件を貸して夫が賃借人になっていたのですが、夫が死亡して妻や子どもが居住し続けています。物件の転貸借や賃借権の譲渡となって契約を解除できるのでしょうか?」

 

こういったご相談を受けるケースが少なくありません。

結論的に、相続人が物件を使用するなら解除は困難です。内縁の妻の場合でも保護されるので、退去を求めるのは難しいでしょう。

 

今回は夫婦が賃貸物件に入居している際に一方が死亡した場合の法的な考え方を解説します。賃貸物件のオーナーの方は是非参考にしてみてください。

 

1.配偶者が死亡すると賃借権は相続される

夫婦に物件を賃貸している際に名義人となっている夫婦の一方が死亡すると、「賃借権」が遺された配偶者へと引き継がれます。賃借人の地位は「相続」の対象になるからです。

 

たとえば賃貸借契約の名義人となっている夫が死亡して妻が遺された場合、妻は夫の地位を引き継ぐので妻が賃借人となります。「賃借権の無断譲渡」や「転貸」には該当しません。

相続には賃貸人の承諾も不要です。

 

よって夫婦のうち一方が死亡して他方が引き続き物件を利用していても債務不履行にはならず、大家側が契約を解除したり明渡し請求したりできません。

 

2.大家からの「更新拒絶」も難しい

夫が死亡して妻が賃借権を相続した場合、その後に契約期間が終了したら「更新拒絶」して退去を求められるのでしょうか?

 

普通賃貸借契約では、契約期間が満了しても更新されるのが原則です。大家が更新を拒絶するには「正当事由」が必要となります。法律上、借主は強く保護されるので正当事由は非常に厳しく判断されます。

単に「もともとの賃借人が死亡して配偶者が賃借権を相続した」だけでは、更新拒絶の正当事由になりません。

 

一方、以下のような事情があれば、更新拒絶の正当事由が認められやすくなるでしょう。

  • 相続開始後、妻は実家で生活することが多くほとんど物件を利用していない
  • 物件が老朽化しており、このままでは倒壊の危険が高い
  • 大家側において、どうしてもその物件に居住する必要がある

 

名義変更料も請求できない

もともとの契約者が死亡して相続人に賃借権が移った場合、名義変更料も請求できません。

当然のように請求するとトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。

 

3.内縁の妻の場合

賃貸していた相手が内縁の夫婦だった場合には、大家は賃貸借契約を解除できるのでしょうか?

 

内縁の夫婦とは、婚姻届を提出せずに事実上の婚姻生活を営んでいる夫婦です。

内縁の夫婦には遺産相続権が認められません。配偶者が死亡しても、賃借権を相続できないのです。

 

そうであれば、内縁の夫婦の一方が死亡したら、大家は遺された配偶者へ退去を求められるようにも思えます。

しかし借地借家法第36条では、被相続人と同居していた内縁の配偶者が保護されています。

 

借地借家法36条

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後、1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りではない。

 

このように相続人がいない場合、内縁の配偶者は「賃借人の権利義務を承継する」ため、賃借権の無断譲渡にはなりません。大家が債務不履行によって契約を解除することはできないと考えましょう。

 

亡くなった人に他に子どもなどの相続人がいる場合でも、内縁の配偶者は相続人の賃借権を「援用」できると考えられています。やはり大家から退去請求することはできません。

 

不動産を賃貸していると、物件の利用者が変更されたり死亡したりして、対応に迷ってしまう方が多数おられます。千葉の秋山真太郎総合法律事務所では不動産分野に力を入れて取り組んでいますので、お悩みごとがありましたらお気軽にご相談ください。

 

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