企業運営に際し、さまざまな業務を「外注」する場面があります。
商品や製品の開発、アプリやシステムの開発、デザインやホームページの制作など。
そんなときには「業務委託契約」を締結しなければなりません。
後にトラブルにならないよう、業務委託契約書を作成する際の注意点を弁護士がお伝えします。
1.業務委託契約とは
業務委託契約とは、外注者(委託者)が受注先(受託者)へ一定の業務を委託し、対価として報酬を支払う契約です。
以下のような際に業務委託契約を締結する例がよくあります。
- コンサルティング
- 商品や製品の開発
- アプリやシステム開発
- デザインやライティング、翻訳
- ホームページの制作
- SEO対策
- システムの保守管理
- 営業代行
- 広告出稿代行
- 建築設計監理の委託
- 運送業務の委託
- 社員研修の委託
社外の法人や個人に上記のような業務を外注する場合、業務委託契約書を作成すべきです。
契約書がなければ報酬の支払時期や成果物に対する権利、解約できる条件などが明らかにならずトラブルのもとになってしまいます。
2.業務委託契約書作成における注意点
業務委託契約書を作成する際には、以下のような点に注意しましょう。
2-1.契約目的と委託する業務の内容
まずは契約目的と委託する業務の内容を明らかにしましょう。特に業務内容については契約の核となる部分なので、できる限り明確にすべきです。
業務内容があいまいになっていると、受注者の裁量で業務を進められ、希望と異なるものが納品されてもクレーム言えなくなる可能性があります。
2-2.報酬の金額と支払時期
次に報酬の金額と支払時期を明確にしましょう。特に支払時期が不明確だとトラブルになりやすいので要注意です。
たとえば「納品されたタイミング(即時)」で払うのか「納品後2週間以内」とするのか「翌月末」とするのか、あるいは納品後検収期間をもうけるのかなど、相手と話し合って決定する必要があります。
2-3.納期
システム開発やデザインやライティング、翻訳などの「成果物の提出」を要する案件の場合、納期も定めておくべきです。納期が決まっていないと、いつまで経っても納品されず、発注企業側が不利益を受ける可能性があります。
2-4.契約期間
単発案件でない場合、契約期間も定めておくと良いでしょう。1年などとして、場合によっては自動更新条項をもうけましょう。
2-5.成果物に対する権利
成果物に対する権利が誰に帰属するのか、発注企業に帰属する場合にはいつのタイミングで権利が移転するのかなど、明確に記載しておきましょう。
たとえばデザインを外注した場合、基本的にはデザイナーに著作権が認められます。
納品と同時あるいは報酬支払と同時に著作権の譲渡を受けておかないと、企業側で自由な利用や改変ができません。
また著作権が問題になる場合には「著作者人格権を行使しない」ことも定めておくべきです。著作者人格権は譲渡できないので、行使しないと定めておかないと後に作品を活用できなくなる可能性があります。
2-6.秘密保持
業務を外注する場合、企業の内部機密を伝えなければならないケースも多く、外注先に秘密を漏えいされる可能性があります。
必ず秘密保持の条項を入れましょう。
ただし実際には業務委託契約書とは別途、秘密保持契約書を作成するケースが多数です。
2-7.再委託について
受注先が第三者に業務を再委託できるのか、できるとすればどういった条件下で認められるのかを記載しましょう。
再委託を認める場合には、「事前に発注者による書面(あるいは電子メール)による承諾を要する」と記載しておくと、無断で再委託されないので安心です。
また再委託先にも秘密保持の契約を締結させる必要があります。
2-8.解除と損害賠償
どういった場合に契約を解除できるのか、損害賠償ができる条件についても定めておきましょう。
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