辞めさせたい従業員がいるからといって、不当解雇してはなりません。後に「解雇は無効」などと主張されて、大きなトラブルにつながる可能性があります。
不当解雇と正当な解雇の違いを知り、適切な方法で解雇手続きを進めましょう。
今回は不当解雇になるケースはどのような場合なのか、ご説明します。
そもそも不当解雇とは
不当解雇とは、法令や就業規則などのルールを守らないで行われる解雇です。
不当解雇をすると、解雇が無効となるので従業員を辞めさせることができません。
後に訴訟を起こされて、未払い賃金や従業員としての地位確認を求められる可能性が高くなり、慰謝料請求されるケースもあります。
辞めさせたい従業員がいるとしても、不当解雇と主張されないよう、慎重に退職への手続きを進めるべきです。
不当解雇のパターン
不当解雇には、以下の3パターンがあります。
法律上解雇が認められていない場合
労働契約法などの法令により、解雇が認められないパターンで、以下のような規制があります。
- 産休中や産休明け30日間における解雇
- 業務上のケガによる療養中や休業明け30日における解雇
- 男女差別にもとづく解雇
- 妊娠や出産したことによる解雇
- 育児休業や介護休業を取得したことによる解雇
- 思想や信条にもとづく解雇
- 労働組合活動にもとづく解雇
- 会社の不正を労働基準監督署へ申告したことによる解雇
上記のような解雇は無効です。
就業規則に違反する
就業規則に違反する解雇が無効となるケースもあります。
よくあるのが、懲戒解雇が不当解雇になるパターンです。
そもそも懲戒解雇するには、就業規則に懲戒解雇についての規定をおかねばなりません。
懲戒の手続きが定められている場合には、その手続きに従わないと懲戒解雇が無効になる可能性があります。たとえば本人の弁明を聞かねばならないと定められているのに本人の弁明を聞かずに一方的に解雇すると、不当解雇になる可能性が高くなります。
解雇権濫用法理に違反する
安全に従業員を解雇するには「解雇権濫用法理」についての知識が必須です。
解雇権濫用法理とは、以下の2つの要件を満たさない解雇は認められない、という法的なルールです(労働契約法16条)。
- 解雇の客観的合理的理由
社会一般的な視点からしても解雇を避けることができない、客観的かつ合理的な理由が必要です。
- 解雇の社会的相当性
解雇の方法についても社会的に相当で、適切な手続きをとらねばなりません。
不当解雇になる具体例
以下のような解雇は不当解雇になる可能性が濃厚です。
能力不足による解雇
- 単に他の従業員より成績が悪いというだけで解雇した
- 不合理な成績評価により一方的に解雇した
- 未経験の新入社員に教育を行わないまま「能力不足」と決めつけて解雇した
遅刻欠勤
- 遅刻欠勤がさほど頻繁でないのに解雇に踏み切った
- 改善指導をしないままいきなり解雇した
協調性がない、反抗的
- 改善指導や他の従業員との調整を行わずに解雇した
- 人事異動などの他の手段を尽くさないまま解雇した
- 業務命令に従わない場合、なぜその業務が必要なのか十分な説明をしないまま解雇した
整理解雇
- 解雇以外の方法で経営再建が可能なのに、整理解雇した
- 整理解雇の対象者選定方法が不合理、差別的であった
懲戒解雇
- 従業員が起こした問題行動に対し、解雇処分が重すぎた
安全に解雇を行うために弁護士へ相談を
解雇トラブルを避けるには、どういった状況であれば有効に解雇できるのかを知ったうえで、適切な手順で解雇の手続きを進めなければなりません。
いきなり解雇をするのではなく、まずは退職勧奨を行うのも有効です。
「解雇できるかできないか」を判断するには法的知識が必要ですので、辞めさせたい従業員がいる場合には、お気軽に弁護士までご相談ください。