個人再生には「住宅資金特別条項」という特則があります。通称「住宅ローン特則」とよばれます。
これを利用すると、住宅ローンの残っている家を守りながら他の借金のみを減額できます。
住宅ローンの返済が苦しくなって借金してしまっている方にはメリットの大きな制度といえるでしょう。
今回は個人再生の住宅ローン特則について解説しますので、住宅ローンやカードローン、キャッシングなどの借り入れのある方はぜひ参考にしてみてください。
1.住宅ローン特則とは
個人再生の住宅ローン特則とは、住宅ローンの返済は継続しながら他の借金を減額できるという個人再生手続きの特則です。
一般的に、個人再生を利用すると借金がすべて減額されるので、住宅ローンも減額対象になってしまいます。しかしそうなると抵当権を実行されて家が競売にかかってしまうので、家を守れません。
住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンの返済を続けながら他の借金のみを減額できるので、家を守りつつ借金を整理できるのです。
たとえば以下のような状況であれば住宅ローン特則つきの個人再生を検討してみましょう。
- 住宅ローンの他にカードローンやキャッシングを利用していて返済が苦しい
- 住宅ローン返済が負担になってカードローンやクレジットカードの借り入れをしてしまった
- 借金があるけれども持ち家、マンションを失いたくない
2.巻き戻し効果
住宅ローン特則には「巻き戻し効果」があります。
巻き戻し効果とは、保証会社による代位弁済をなかったことにする効果です。
住宅ローンを長期にわたって滞納し続けると、保証会社が代位弁済をして一括払いを請求してきます。
そういった状況でも住宅ローン特則付きの個人再生を申し立てると、代位弁済をなかったことにして家を守ることが可能となります。
ただし巻き戻し効果を得られるのは「代位弁済後6か月」のみです。6か月を過ぎると住宅ローン特則を使えなくなるので、滞納しているなら早めに個人再生を申し立てましょう。
3.リスケジュール効果
個人再生の住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンの返済方法をリスケジュールできる可能性もあります。
たとえば一定期間元本や利息の支払いを減額・猶予してもらったり、返済方法を柔軟に決め直したりできるのです。
今のままの返済方法が負担になる方にとっても住宅ローン特則は非常に役立つといえるでしょう。
4.競売を中止して家を守れるケースも
住宅ローンを払わないまま長期間が経過すると、家が競売にかかってしまいます。
個人再生を申し立てると、競売を中止させることも可能です。競売が止まっている間に個人再生の手続きを進めたら、家を失わずに済むメリットがあります。
住宅ローンを滞納して保証会社が代位弁済したり競売が開始したりしているなら、一刻も早く住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てましょう。
5.住宅ローン特則を利用するための要件
個人再生で住宅ローン特則を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。
5-1.住宅資金貸付債権(住宅ローン)である
借り入れは住宅ローンでなければなりません。住宅以外の一般のローンなどは対象になりません。
5-2.再生債務者(申立人)が所有する住宅である
申立人の所有住宅でなければなりません。ただし共有している物件であれば適用対象になります。
5-3.居住用の建物である
居住用の建物でなければ住宅ローン特則を使えません。ただし店舗権住居物件の場合、住居部分が2分の1以上であれば住宅ローン特則を使えます。
5-4.他のローンの担保にしていない
住宅を他のローンの担保にしていると住宅ローン特則を利用できません。たとえば不動産担保ローンを利用して2番以降の抵当権がついていると、住宅ローン特則を適用できない可能性があります。その場合、先に担保抹消の手続きをしなければなりません。
5-5.代位弁済後、6か月以内
保証会社が代位弁済している場合には、その後6か月以内に個人再生を申し立てる必要があります。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では借金トラブルの解決に力を入れて取り組んでいます。住宅ローンやその他の借金返済にお困りの方がおられましたらお早めにご相談ください。