借金しているのに給料を差し押さえられると、ますます生活が苦しくなってしまいます。
一刻も早く差し押さえを止めたいと考えるのが当然といえるでしょう。
個人再生をすると給与差押を止められる可能性があります。ただしその手続きは複雑なので、間違えないように正確に理解しておく必要があります。
今回は債務整理の一種である個人再生によって給与差押を止める方法をお伝えします。借金を滞納して給料を差し押さえられている方は、ぜひ参考にしてください。
1.給与差押を止められるのは個人再生と自己破産
債務整理によって給与差押を止める方法はいくつかありますが、すべての債務整理で差押を止められるわけではありません。
債務整理には以下の3種類があります。
- 任意整理
債権者と直接交渉して借金の返済方法を決め直す手続きです。
- 個人再生
裁判所へ申立をして借金やその他の負債を大きく減額してもらう手続きです。
- 自己破産
裁判所へ申立をして借金やその他の負債を免除してもらう手続きです。
上記のうち、給与差押を止められるのは「個人再生」または「自己破産」です。任意整理では差押えを止められないので、給料を差し押さえられて困っている場合には個人再生または自己破産を検討しましょう。
2.個人再生で給与差押を止める方法
個人再生によって給与差押を止める方法を具体的にご説明します。
2-1.再生手続開始決定が出たら強制執行停止上申書を提出する
個人再生を申し立てると、裁判所で「再生手続開始決定」が出ます。
すると強制執行(差し押さえ)の停止を申し立てられる状態になるので「強制執行停止上申書」という書類を作成します。
裁判所から交付される「再生手続開始決定」の書類と「強制執行停止上申書」を、差し押さえを決定した裁判所(執行裁判所)へ提出すれば、強制執行を止めてもらえます。
このときの書類の提出先は、個人再生が行われている裁判所ではなく「給与差押を決定した裁判所(執行裁判所)」なので、間違えないように注意しましょう。
強制執行停止上申書と再生手続開始決定書を執行裁判所へ提出すると、裁判所が給与差押の手続きを中止します。すると、それ以後は給料が差し押さえられなくなります。
2-2.給料が全額支払われるわけではない
給与差押の中止決定があってもすぐに給料を全額受け取れるわけではありません。給料は会社に一時的に「プール」される状態となります。プールされた給料は、個人再生の手続きが終了した時点でまとめて債務者へ支払われます。
2-3.給料を全額受け取る方法
個人再生手続きが終了するまで給与の支払いを待てない方もいるでしょう。
その場合には、個人再生手続きを行っている裁判所へ「強制執行取消命令」を申し立てます。
取消命令が認められると、債権者の申し立てた差し押さえが解除されるので、給料が全額支払われるようになります。
ただし強制執行取消は常に認められるものではありません。以下の要件を満たす必要があります。
- 給与差し押さえにとって手取り額が減額されると生活に著しい支障が及ぶ
- 給与差押で手取り額が少なくなると、個人再生に必要な積立ができなくなって手続きに著しい支障が生じるおそれがある
強制執行取消命令は認められないケースも少なくありません。その場合には、個人再生手続きが終結するまで給料の受け取りを待つ必要があります。
3.給料差し押さえを止めたい場合は弁護士に相談を
給与差押を解除するために裁判所へ上申や申立を行う手続きは複雑です。専門知識のない方が行おうとしても、スムーズに進めにくいでしょう。給料を差し押さえられているなら、早急に弁護士へ対応を依頼すべきです。