遺産が使い込まれる場合、「預金」以外にもいろいろな財産が対象になる可能性があります。
今回はよくある遺産使い込みの具体例や、使い込まれたときの対処方法をお伝えします。
1.生命保険の解約
被相続人が加入していた生命保険を勝手に解約し、解約返戻金を使い込んでしまうパターンです。同居の相続人が被相続人の印鑑などを利用して解約するケースが典型です。
2.賃料の使い込み
被相続人が不動産を所有して賃料を得ていた場合、同居の相続人が賃料を受け取って自分のものにしてしまうケースがよくあります。
特に被相続人が同居の相続人に賃料の管理を任せていた場合、当初はきちんと被相続人のために取り分けていても、だんだんとずさんになってきて使い込みが行われやすくなります。相続発生後の賃料収益も特定の相続人が独り占めし続けるので、トラブルにつながりやすいパターンです。
3.株式や投資信託の売却、使い込み
被相続人が証券会社で取引していた株式や投資信託を、相続人が勝手に売却したり売却金を使い込んだりするパターンがあります。
特に最近ではネット証券を利用する方が多いので、同居人が勝手にログインして売却したり売却金を送金したりするのも容易になっています。
「被相続人自身が売却した」と抗弁されやすいので注意が必要な類型です。
4.現金の使い込み
被相続人が自宅においていた現金を使い込むパターンです。
現金の場合、預金と違って「取引履歴」が残りません。いついくらが使い込まれたのか証拠をつかみにくい問題があります。
5.不動産の売却
被相続人が不動産を所有していた場合、同居の相続人が勝手に委任状等を作成し、被相続人の実印を使って売却してしまうケースもあります。
以上のように、遺産の使い込みには預金以外にもさまざまなパターンがあります。
5.遺産が使い込まれたときの対処方法
5-1.使い込みの証拠を集める
遺産が使い込まれたら、まずは証拠を集めなければなりません。
使い込んだ本人はほとんどの場合、使い込みを否定するからです。
生命保険の解約事例
生命保険会社へ保険解約請求書の開示を求めましょう。相続人の筆跡であれば使い込みを証明しやすくなります。
株式取引の事例
証券会社に請求し、株式売却や売却金の振り込み指示の記録を集めましょう。
ネット上で取引履歴を確認できる証券会社も多数あります。
売却時に被相続人が自分で取引できる状態でなかったことを証明できれば使い込みを立証しやすくなります。
賃料使い込みの事例
賃料管理していた預金通帳や取引履歴の取得と内容分析を行いましょう。
賃料が相続人名義の口座へ送金されていたり多額の出金があったりすると、使い込みを証明しやすくなります。
現金
現金の場合、そもそもいくら現金が自宅にあったのかを証明しなければなりません。
いつ、いくらを何に使ったのかも推測しなければならず、証明のハードルが高くなります。
個別的な対応が必要となるので、弁護士へ相談されるようお勧めします。
5-2.話し合う
証拠が揃ったら、相手に返還請求しましょう。
ただし相手が法定相続人の場合、相手にも相続分が認められるのでその分は請求できません。「請求する相続人の法定相続割合に相当する額」が請求できる金額です。
話し合いによって相手が任意に返還に応じるなら、合意書を作成して支払ってもらいましょう。一括で支払えない場合、分割払いによる対応が必要となります。
5-3.訴訟を起こす
相手が任意に支払いに応じない場合には、訴訟を起こしましょう。
使い込みを立証できれば、裁判所が支払い命令の判決を下してくれます。
相手が判決に従わない場合には、相手名義の資産を差し押さえることも可能です。
ただし訴訟で支払い命令を出してもらうには使い込みを証拠によって証明するとともに法律に従った主張を展開しなければなりません。
ご自身で対応するのは困難なので、弁護士までご依頼ください。
遺産を使い込まれたときには個々の状況に応じた対応が要求されます。当事務所では預金以外のさまざまな使い込み問題にも対応しておりますので、お困りの方はご相談ください。