使い込まれた預金を取り戻すには「証拠」を集めなければなりません。
証拠がなければ相手が「使い込みをしていない」と主張し、言い逃れをされてしまうためです。
今回は預金使い込みで必要な証拠の内容や集め方をご説明します。
1.預金使い込みで必要な証拠
預金使い込みを証明するために必要な証拠は、以下の2種類です。
1-1.使い込まれた証拠
使い込みそのものに関する証拠です。
被相続人名義の預金口座からいついくらの金額が出金されたのか、証明します。
1-2.被相続人が自分で出金していない証拠
被相続人名義の口座から出金されたとしても「被相続人本人が使い込んだ」といわれる可能性があります。その抗弁を崩すため「被相続人が自分で出金できなかった事情」を証明しなければなりません。出金当時の被相続人の状況を証明するための資料が必要です。
以下でそれぞれの証拠の例や集め方をみていきましょう。
2.使い込まれた証拠の例と集め方
2-1.預金取引履歴や通帳
使い込まれた証拠としては、被相続人名義の預金取引履歴や通帳が必要です。
たとえば以下のような記載があると使い込みを立証しやすくなります。
- 不自然に多額の出金が行われている
- 何日も連続して数十万円ずつの出金が行われている
- 相続人口座へ送金されている
2-2.取引履歴の入手方法
被相続人名義の預金口座取引履歴は、対象の金融機関へ請求すれば開示してもらえます。
相続人であることがわかる戸籍謄本類や申請者の身分証明書、印鑑などを用意して金融機関へ行き、申請書を提出しましょう。
3.被相続人が自分で出金していない証拠
3-1.医療機関の診療記録
被相続人が入院していた場合、自分で出金するのは困難です。認知症にかかっていた場合にも、自分の判断で出金したとは考えにくいでしょう。
病状を確認するため、病院へカルテや看護記録、診断書などの資料を請求してみてください。
請求方法について
相続人が病院へ申請すると開示を受けられるケースがありますが、病院によってはスムーズに開示を受けられない可能性もあります。
自分たちで請求しても難しい場合には、弁護士に相談しましょう。弁護士法23条照会を行うと開示を受けられる可能性があります。
3-2.介護認定の記録
介護認定を受けていた場合には、介護認定の際の資料も証拠になります。
たとえば役所から届いた通知書、主治医の意見書、提出した診断書の写しなど。
介護認定に関する記録は市区町村役場で保管されているので、行政文書の開示請求をしてみてください。
なお相続人の請求によって開示される自治体もありますが、裁判所からの照会でないと回答しない自治体もあり、ケースバイケースの対応が必要です。
3-3.介護日誌などの介護記録
被相続人が介護施設に入所していた場合や在宅で介護サービスを受けていた場合、利用していた介護事業所に記録が残っているはずです。
介護日誌や介護計画書などの資料の開示を受けましょう。
相続人が請求しても開示してもらえない場合、弁護士から弁護士法23条照会を行うと開示を受けられる可能性があります。
4.証拠の申請先
使い込みを立証するための証拠について、それぞれの申請先は以下の通りです。
- 預金の取引履歴…該当する金融機関
- 介護認定記録…自治体
- 介護記録…介護事業所
- 認知症の状態や入院記録…該当する医療機関
開示請求の手順
まずは相続人であることを示す戸籍謄本などの資料をもって、上記機関へそれぞれ申請してみてください。対応してもらえない場合、弁護士が「弁護士法23条照会」という情報照会手続きを利用すれば開示してもらえる可能性があります。
それでも開示されない場合、最終的に訴訟を申し立てて職権調査嘱託を行い、裁判所から照会をしてもらえればほとんどのケースで開示されます。
状況によっては「証拠保全」などの手続きを利用できる可能性もあります。
預金の使い込みが疑われる場合、早めに証拠を集めて相手に返還請求しましょう。お困りの方がおられましたら弁護士までご相談ください。