<事例>
Yさんは、ある日突然、市原市役所から手紙を受け取りました。手紙には、6年前に亡くなった伯母さん名義の建物の固定資産税を納付するよう書いてありました。伯母さんが亡くなってからずっと固定資産税の滞納が続いているようです。
Yさんの亡くなった両親と伯母さんとは不仲であったため、Yさんも生前の伯母さんとは全く交流がありませんでした。伯母さんには子供(Yさんの従兄弟)が1人いたはずであり、Yさんとしては伯母さんの相続人でも何でもないので支払う必要はないと思っています。しかし、役所からの手紙でもあるので心配になり、市役所の窓口に行って聞いてみたのですが、詳しいことは「個人情報」を理由に教えてくれません。そこで、弁護士に相談することにしました。
<回答>
Yさんは伯母さんの相続人になっている可能性があります。Yさんが考えているとおり、本来伯母さんの相続人は伯母さんの子供でありYさんではありません。しかし、市役所が相続人の調査をしないままYさんに手紙を送って来たとは考えられません。考えられるのは、伯母さんの子供は相続放棄をしており、その結果Yさんが相続人となったのではないかということです。そこで、伯母さんの子供が相続放棄をしているか否かを調査する必要があります。
相続放棄の調査方法
相続人が相続放棄をしているか否かは、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に照会することによって調べることができます。照会手数料は無料です。
「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会申請書」と「被相続人等目録」を作成し、
①被相続人の住民票除票(本籍地が表示されているもの)
②照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本
③照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
④相続関係図
と一緒に家庭裁判所に提出します。返信用封筒と返信用切手を一緒に提出すれば郵送で回答してもらえます。
「被相続人等目録」には被相続人の本籍・最後の住所地・氏名・死亡日と,照会したい相続人の氏名を記載します。
申請をしてからおよそ1か月以内には家庭裁判所から回答が届きます。
<解決>
当事務所は、Yさんから相続放棄の有無の照会手続の依頼を受け、被相続人の最後の住所地である市原市を管轄する千葉家庭裁判所に照会をする予定で準備を開始しました。ところが、被相続人(伯母さん)の除籍謄本を確認したところ、新事実が判明しました。
Yさんが伯母さんの実子だと思っていた従兄弟は、実は伯母さんの養子であり、生前伯母さんは養子縁組を解消していたことが判明したのです。市原市役所がYさんから詳しい事情を聴かれても回答しなかったのは、亡伯母さんと従兄弟の養子縁組解消の事実を「個人情報」と判断したためだったのでしょう。
本件では、伯母さんと養子が離縁していたため、伯母さんの相続人はYさんで間違いなく、Yさんは亡伯母さん名義の建物の固定資産税を支払わなければならないということになります。
なお、実際には、その後、当事務所において、Yさんは伯母さんの遺産に対する相続放棄の手続をしましたので、固定資産税は支払わずに済みました(相続開始から3か月以上経過してからの相続放棄)。