グローバル化が進み、家族の誰かが外国に住んでいるという方も多くいると思います。「相続人が海外に在住しているけど、どうすればいい?」というような相談件数も増加傾向です。相続人が海外に住んでいる場合、遺産相続はどのようにおこなえばよいのでしょう。ここではそのようなケースの相続手続についてご紹介します。
遺産相続に必要な書類
遺産相続に最低限必要な書類は次のとおりです。
・故人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本
・故人の住民票除票
・相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印
・遺産分割協議書
相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票に関しては、相続人全員のものを用意しなくてはなりません。それは相続人が海外に住んでいる場合も同じことです。しかし相続人が海外に住んでいる場合、それらの必要書類を用意できないケースもあります。
そのような場合には、必要書類を別のものに置き替えることが可能です。
住民票の代わりになる在留証明書
海外に在住していて日本に住民票がない場合や、日本に住民票はあっても海外に在住していることを証明するためには、現地の日本領事館で「在留証明書」を取得することになります。在留証明書の発行を受けるには、日本国籍があり、現地に3か月以上居住していることが条件となりますので、本人確認のためにパスポートや日本で発行された運転免許証、3か月以上居住していることを確認するために滞在許可証、現地の運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書、賃貸借契約書などを日本領事館に提示します。
印鑑証明書の代わりになるサイン証明書
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での捺印、そして印鑑証明書の添付が必要です。ところが、外国には印鑑証明書がありませんので、海外在住の相続人は遺産分割協議書に実印を押捺することができません。
そこで、海外在住者は、遺産分割協議書に実印を押捺して印鑑証明書を添付する代わりに、遺産分割協議書にサインをしてサイン証明書を添付することになります。サイン証明書は、遺産分割協議書を日本領事館に持参し、係官の面前でサインすることで発行してもらえます。
戸(除)籍謄本の代わりになる法定相続情報証明制度
海外在住の場合に限った話ではありませんが、平成29年5月29日から法務局において各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。法務局に戸籍謄本・除籍謄本一式と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを交付するという制度です。認証された法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸除籍謄本一式を何度も出し直す必要がなくなります。
以上のように、相続人が海外に在住している場合の遺産相続は少々特殊なものになります。しかし相続手続ができないわけではありません。海外に住んでいる方、またはご家族の誰かが海外に住んでいるという方は、事前にきちんと手続を確認しておくようにしましょう。