熟年離婚するときには、若い夫婦とは異なる注意点があります。
離婚後の生活、財産分与、年金分割などが重要なポイントとなってくるでしょう。
後悔しないため、離婚を切り出す前に、正しい知識をもって適切に準備を進める必要があります。
今回は熟年離婚で注意すべきポイントを弁護士が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.離婚後の生活について
熟年離婚するなら、離婚後の生活について具体的な計画を立てておく必要があります。
50代、60代以上になると、新たに就職するのは難しくなるケースも多いためです。
専業主婦だった方などは夫から充分な財産分与を受けておかないと、たちまち生活に困ってしまうこともあるでしょう。
子どもが成人していたら養育費は請求できませんし、ひとり親への行政支援(児童扶養手当など)も受けられません。
- 自分で仕事をして収入を得る
- 田舎のある方は、実家に戻って生活する
- 子どもと同居して生活費を折半する
- 老齢年金を受け取っている方は、年金で足りない分のみはたらいて稼ぐ
こういった対応が考えられます。
収入の範囲で生活を維持できそうか、どのくらい財産分与や慰謝料を得られそうかなど、離婚を切り出す前にしっかりシミュレーションしておきましょう。
2.財産分与
熟年離婚するとき、非常に重要となるのが財産分与。婚姻期間が長い分、分与を受けられる資産額が大きくなるのが一般的です。
財産分与の対象となるのは、婚姻中に積み立てた夫婦共有財産。具体的には以下のようなものが対象になります。
- 預貯金
- 保険
- 車
- 不動産
- 株式、投資信託
- 積立金
- 退職金
- 貴金属や時計などの高価品
相手が財産管理している場合には、財産隠しをされないようにしっかり調査しなければなりません。離婚を切り出すと警戒されて財産調査しにくくなる可能性があるので、離婚の話をする前に預貯金通帳や保険証書、ネット証券の取引明細書などの資料を集めましょう。
相手が財産を隠す場合、弁護士が情報照会したり裁判所から調査嘱託してもらったりすることで、明らかにできる可能性もあります。
自分で財産調査するのに限界を感じたら、弁護士までご相談ください。
3.年金分割
熟年離婚では、年金分割も忘れてはなりません。
年金分割とは、婚姻中に夫婦が払い込んだ年金保険料を分け合う手続きです。
熟年離婚では婚姻期間が長くなるので、分割対象となる金額も大きくなる傾向があります。
主婦などの方は年金分割をしておくと、将来年金を受け取れる年齢になったときに支給額を増額してもらえるので、生活が随分と楽になるでしょう。
平成20年3月31日以前に婚姻期間のある方や相手の扶養に入っていない方は、年金分割に際して相手の同意が必要です。同意を得られない場合、家庭裁判所で調停や審判を申し立てて年金分割の決定をしてもらわねばなりません。
また離婚が成立したら、2年以内に年金事務所へ行って「標準報酬改定請求書」を提出しなければならないので注意してください。2年を超えると年金分割を受け付けてもらえなくなるので、必ず早めに手続きを済ませましょう。
4.離婚前、別居中の生活費
離婚前に別居する際には「婚姻費用」も問題となります。
婚姻費用とは、夫婦がお互いに分担すべき生活費。離婚が成立するまでは夫婦はお互いに助け合わねばならないので、収入の高い側は低い側へ婚姻費用を払わねばなりません。
たとえば専業主婦で収入がなくても、別居したら相手に収入に応じた婚姻費用を請求できます。「別居したら生活できなくなる」と思い込んで我慢して無理に同居を続ける必要はありません。
婚姻費用の金額はこちらの算定表で計算できますし、弁護士に問い合わせていただけましたらご案内できますのでお気軽にご相談ください。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
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「養育費」ではなく「婚姻費用」の表を参照しましょう。
ただし離婚すると婚姻費用はもらえなくなるので、離婚後は財産分与で受け取ったお金や自分の収入で生活をまかなう必要があります。
熟年離婚で後悔しないためには、事前の入念な準備と法的な知識が必須です。お子様にも相談しにくい方もおられるでしょう。弁護士は秘密を厳守いたしますのでご安心ください。長年の結婚生活に終止符を打ちたいとお考えの方がおられましたら、お気軽にご相談いただけますと幸いです。