「遺産分割協議には期限があるのでしょうか?」
というご相談をお受けすることがよくあります。
遺産を相続したら、相続人同士で話し合って遺産分割をしなければなりません。
遺産分割そのものには期限がありませんが、早めに対応しないと不利益を受けるリスクが発生します。
今回は遺産分割協議や調停、審判の期限について解説しますので、相続人の立場になった方は参考にしてみてください。
1.遺産分割に期限はない
遺産分割は、どの相続人がどの遺産を相続するか決める手続きです。
話し合いによって分割する「遺産分割協議」、家庭裁判所の調停を利用する「遺産分割調停」、家庭裁判所の裁判官に遺産分割方法を決定してもらう「遺産分割審判」の3種類があります。
遺産分割自体に期限はありません。
相続開始後3年や5年、10年以上が経過した後でも遺産分割協議や調停を行って遺産分割できますし、相続登記や預貯金の名義変更も受け付けてもらえます。
ただし遺産分割が遅れると以下のようなさまざまなリスクが発生するので、できるだけ急いで遺産分割協議を進めましょう。
2.相続登記の期限や義務化
不動産を相続したら、「名義変更(相続登記)」しなければなりません。
2021年時点において相続登記には期限がありませんが、今後法改正によって期限が設定され義務化されることが決定しています。義務化後は、基本的に不動産の所有者となった日から3年以内に相続登記しなければなりません。期限に遅れると「過料」の制裁が適用される可能性もあります。
義務化前の現時点においても相続登記をせずに放置していると、他の相続人が勝手に共有登記にして表見的な持分を売却してしまうなどのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
不動産が遺産に含まれているなら、早めに遺産分割を終えて相続登記しましょう。
3.相続税の期限について
相続税の申告や納税には「相続開始後10ヶ月以内」という期限があります。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があるので、必ず期限内に申告と納税をしなければなりません。
実は相続税の申告期限までに遺産分割が終了していないと、配偶者控除や小規模宅地の特例などの相続税の控除や減税制度を適用できない可能性があります。申告前に遺産分割できなかったケースで控除や特例による減税を受けるには、いったん高額な税金を収めてから後に還付請求を行わねばなりません。
相続税の申告納税期限を考えると、遺産分割は「相続開始後10ヶ月以内」に成立させるのが得策です。
なお相続税が発生するのは、遺産額が「相続税の基礎控除額を超える場合」です。
- 相続税の基礎控除=3000万円+法定相続人数×600万円
遺産額が上記以下であれば相続税の申告や納税の義務はありません。
4.預金が休眠口座扱いになってしまう
遺産に預貯金が含まれている場合にも遺産分割の期限に注意が必要です。
預貯金を10年以上放置していると、「休眠口座」扱いとなって預貯金が公益活動へ使われてしまう可能性があるからです。申請すれば休眠状態から復活させることも可能ですが、預貯金には時効もあります。今後、金融機関の運用方針が変更されれば、預金の払い戻しに応じてもらえなくなるリスクが発生します。
5.株式の権利を失う
遺産に株式が含まれている場合、遺産分割協議をして名義変更しないと相続人による議決権行使や配当金受け取りが困難となります。
また一定期間以上株式の保有者が不明な状態が続くと、会社には強制的に株式を買い取る権利や競売を申し立てる権利が認められます。売却代金は所有者に支払われるはずですが、所有者不明であれば代金受け取りが不可能となってしまうでしょう。
株式を相続した場合にも、やはり早めに遺産分割を行うべきです。
遺産分割協議の進め方や遺産分割協議書の作成方法がわからない場合、他の相続人ともめてしまった場合には弁護士がサポートいたします。まずはお気軽にご相談下さい。