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【企業・顧問】電子契約の法的効力、有効性について弁護士が解説
近年ではビジネスの場においても急激にデジタル化が進んでおり「電子契約」を導入する企業が増えています。
ただ「電子契約や電子署名には法的効力が認められるのか?」「契約として有効なのか?」と不安を感じる方も少なくありません。
要件さえ満たせば電子署名にも法的効力が認められます。
今回は電子契約や電子署名の法的効力や有効性について、弁護士が解説します。
1,多くの契約では「契約書」は不要
「電子契約でも契約は有効に成立するのか?」
といった疑問を持つ方がおられます。
実は法律上、ほとんどの契約の成立に「契約書」は必要ありません。
書面やその他の資料がなくても、口頭で契約が成立するのです。
ただ口頭では証拠が残らず、後に証明できません。内容について争いが発生したときに大きなトラブルになってしまいます。
そこで契約内容を明らかにして証拠を残すため、通常のビジネスの場では契約書を作成するのです。
単純に「契約が成立するかどうか?」という意味では、電子契約であっても十分に契約が成立するといえます。
ただし一定の契約については「必ず書面(または電子)で締結しなければならない」と定められています。そういった類型の契約は、契約書や電子契約データを作成しなければ成立しません。
2.電子署名が有効となる要件
次に「電子署名」の有効性についてみてみましょう。
電子契約を締結する際には「電子署名」を付します。
電子データに付す署名であっても、電子署名法の定める要件を満たせば法的効力が認められます。
電子署名法では、2条において「有効な電子署名となるための要件」が規定されています。
- 本人が作成したもの(本人性)
- 改変されていないことを確認できるもの(非改ざん性)
つまり本人確認が行われていて、作成されてから改ざんされていないことを確認できるものであってはじめて有効な「電子署名」となります。
具体的には認証局の発行する「電子証明書」と「タイムスタンプ」によって上記の要件を満たします。
クラウドの電子署名サービスを利用した場合でも、きちんと本人確認されていてタイムスタンプが付与されていれば有効な電子署名となります。
3.電子署名に推定効が及ぶ要件
電子署名法3条では、電子署名に「推定効」が及ぶ要件が規定されています。
推定効とは「本人による電子署名が付されているときに電子データが真正に成立したと推定する」効力です。つまり本人が電子署名していれば、その電子データは署名者自身が作成したと推定できます。
第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
紙の書面に対する署名押印にも同様の効果が認められています。これを「2段の推定」といいます。
電子署名法3条の電子署名といえるには、以下の要件を満たさねばなりません。
- 本人性
- 非改ざん性
- 固有性
電子署名法2条の要件に足して、「本人だけが行うことができる」という固有性の要件を満たす必要があります。
具体的には以下のような方法が考えられます。
- 本人が認証局へ申請して電子証明書を取得して電子署名する
- クラウドの電子署名サービスを使う場合、2要素認証によって厳格に本人確認する
上記のような対応ができれば、電子契約であっても紙の契約書と同等の法的効力が認められます。
4.電子契約を適用される範囲が拡大
現在、電子契約を適用できる範囲は拡大しつつあります。従来は紙の契約書を必要としていた不動産の賃貸や売買などにおいても電子契約を利用できるようになる予定です(ただし事業用定期借地権契約を除く)。
電子契約導入の際に不安な点がありましたら弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
【企業・顧問】商標権侵害で警告されたときの対処方法
「商標権侵害の差し止め警告書が届いたのですが、どう対応すれば良いのでしょうか?」
こういったご相談を受けるケースが少なくありません。
ウェブサイトやパンフレットなどでロゴやイラストなどのマークを利用していると、他社から「商標権侵害」と主張される可能性があります。
ただ、必ずしも相手の主張内容が正しいとは限りません。法的な観点から適切に判断して対応しましょう。
今回は商標権侵害で警告を受けた場合の対処方法を、弁護士がお伝えします。
1.相手の権利を確認
「商標権侵害」といわれたら、まずは対象となっている商標について、相手に権利があるのか確認すべきです。
1-1.そもそも商標権が存在するのか
そもそも相手の主張する商標権が存在するのか、特許庁で登録されているのか確認しましょう。
登録商標はこちらから検索できます。
https://www.jpo.go.jp/support/startup/shohyo_search.html
1-2.現在も有効なのか
商標が登録されているとしても、更新しなければ期限が切れて効力が失われている可能性があります。
現在も有効なのか、確認しましょう。
2.商標権侵害といえるか確認
次に、自社が本当に商標権侵害をしているのか確認すべきです。
商標権侵害といえるには、以下の2つの要件を満たさねばなりません。
2-1.同一または類似した商標を利用している
相手の登録商標と同じか、類似した商標を使っていることが1つ目の要件です。特に「類似」と主張されている場合、本当に「類似」しているといえるのか、これまでの裁判例も踏まえて慎重に検討しなければなりません。
類似しているかどうかについては、外観や読み方、商標から想起されるイメージなどを考慮して判断されます。
自社では判断が難しいと思われますので、類似性の有無については弁護士にご相談ください。
2-2.商品やサービスの類似
次に、標章を適用している商品やサービスが相手の登録商標の指定商品や指定役務と重なっているか、類似しているか検討しましょう。
商標権による保護は「指定商品」「指定役務」と同じか類似する範囲までしか及ばないためです。
商品やサービスの類似性について判断するには高度な法的知識が必要となりますので、自己判断せずに弁護士へ相談されるようおすすめします。
2-3.商標的な利用をしている
商標権侵害といえるには「商標的利用」をしている必要があります。
商標的利用とは、「自社の商品やサービスの識別のために利用すること」です。
単に他社商品やサービスを説明するために他社商標を利用した場合、普通名詞として使用した場合などには「商標としての使用」に該当しません。
3.先使用権を主張できる場合
他社の商標を利用した場合でも「先使用権」を主張できるケースがあります。
先使用権とは、商標登録を出願する前からその商標を使用している場合に認められる権利です。
他社が商標を出願する前から自社の商品やサービスを表示するために同じ商標や類似する商標を使っており、世間に広く認識されていた場合、例外的にその商標を使用しても商標権侵害になりません。
4.相手に対する返答方法
警告書が送られてきた場合、たいてい期限がついています。
放置すると訴訟を起こされるリスクがあるので、期限内に回答しましょう。
相手の請求に理由がないと考えられる場合、反論を述べて請求には応じられないと回答すべきです。
一方、相手の請求内容が正しくこちらが利用を停止するなら、差止請求に応じると回答しましょう。いつまでに停止するのかも明らかにするとよいでしょう。
損害賠償請求された場合でも、必ずしも相手の言い値を払う必要はありません。「任意に商標利用を停止するので賠償金を免除してもらいたい」といった交渉も可能です。
話し合いによって減額できるケースも多数あるので、そのまま支払いに応じないで交渉すべきと考えます。
商標権侵害の警告書が届くと、どのように対応すればよいかわからずあせってしまうものです。お困りの際にはお早めに弁護士までご相談ください。
【企業・顧問】商標権侵害が成立する要件、侵害されたときの対処方法を弁護士が解説
自社ブランディングのために商標権を獲得しても、他社や個人が勝手に使用するトラブルが少なからず発生しています。
商標権を侵害されたら、使用の差し止めや損害賠償請求ができます。
また商標権侵害には刑事罰も適用されるので、刑事告訴も可能です。
今回は商標権侵害が成立する要件や、侵害されたときの対処方法を弁護士がお伝えします。
自社の商標が勝手に使われてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
1.商標登録した人の権利やメリット
商標とは、事業者が自社の商品やサービスを他社のものと区別するために使用する「マーク(識別標識)」です。
文字の商標、イラストの商標、ロゴなどが代表的な商標です。
自社でロゴなどを作成した場合、特許庁で商標登録すると商標権が認められて独占的に利用できるようになります。
登録商標は自社のみが使うことができて、他人が勝手に使うことは許されません。
同じものだけではなく、類似した標章も利用できなくなります。
自社商品やサービスのブランディングに有効で、商標が世間に認知されると自社の商品やサービスへの信頼が高まるメリットがあります。
また自社商標を他社へ貸し出してライセンス契約を締結し、利益を得る活用方法もあります。
2.商標権侵害の要件
商標登録しても、他社から権利侵害されるケースが少なくありません。
商標権侵害となるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
2-1.無断で商標や類似の標章を利用
1つ目は、権利者の許可なく同一商標や類似商標を使ったことです。
まったく同じマークでなくても、類似していれば商標権侵害になる可能性があります。
2-2.商標的利用に該当する
2つ目に「商標的利用」に該当する必要があります。
商標的利用とは「自社商品やサービスであることを顧客に示す目的での使用」です。
つまり、自社商品やサービスのマークとして示す利用方法でなければ、商標を使っても商標権侵害にはなりません。
たとえば他社商品を説明するために他社商標を表示しても侵害にはなりません。
3.商標権侵害されたときの対処方法
3-1.証拠を集める
商標権侵害されたら、まずは自社商標が侵害された「証拠」を集めましょう。
- 他社商品に関する資料
パンフレットやHPの画面、カタログなど
- 商標が勝手に利用されていることがわかる資料
ウェブサイト画面やチラシ、配布物や商品紹介資料など
- 他社商品の売上や営業に関する資料
開示されている各種報告書など
3-2.差止請求する
商標権を勝手に使われたら、相手に利用の差止を請求できます。相手が利用をやめればこれ以上の損害の拡大を防げます。
証拠がそろった段階で、侵害者に対して商標利用の差止請求をしましょう。
内容証明郵便で警告書を送るのが一般的です。
3-3.損害賠償請求する
商標権侵害によって損害が発生すると、相手に損害賠償請求が可能です。
相手に差止請求書を送る際に、合わせて損害賠償も求めましょう。
3-4.話し合い
差し止めや損害賠償の請求をしたら、具体的な解決方法について相手と話し合います。
相手が利用を即刻停止して損害も発生していなければ、「二度と勝手に商標を使わない」という誓約書を書かせて示談してもかまいません。損害が発生していたら、一定額の賠償金を払わせて解決しましょう。
最適な解決方法はケースバイケースなので、迷ったら弁護士へご相談ください。
3-5.保全や訴訟
相手が請求に応じず商標利用もやめない場合には、裁判手続きをとらねばなりません。
まずは利用を停止させるため、民事保全を申し立てましょう。
損害賠償請求については、訴訟を提起する必要があります。
3-6.刑事告訴する
商標権侵害には刑事罰もあります。
相手が悪質で差し止めにも損害賠償請求にも応じないようなケースでは、刑事告訴も検討しましょう。
刑罰は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金刑です。
当事務所では各業種の企業様への法的支援体制を整えています。千葉県で顧問弁護士をお探しの方がおられましたらお気軽にご相談ください。
【不動産】夫が死亡して妻が物件を使用したら賃借権の無断譲渡で解除できる?内縁の妻の場合は?
「夫婦に物件を貸して夫が賃借人になっていたのですが、夫が死亡して妻や子どもが居住し続けています。物件の転貸借や賃借権の譲渡となって契約を解除できるのでしょうか?」
こういったご相談を受けるケースが少なくありません。
結論的に、相続人が物件を使用するなら解除は困難です。内縁の妻の場合でも保護されるので、退去を求めるのは難しいでしょう。
今回は夫婦が賃貸物件に入居している際に一方が死亡した場合の法的な考え方を解説します。賃貸物件のオーナーの方は是非参考にしてみてください。
1.配偶者が死亡すると賃借権は相続される
夫婦に物件を賃貸している際に名義人となっている夫婦の一方が死亡すると、「賃借権」が遺された配偶者へと引き継がれます。賃借人の地位は「相続」の対象になるからです。
たとえば賃貸借契約の名義人となっている夫が死亡して妻が遺された場合、妻は夫の地位を引き継ぐので妻が賃借人となります。「賃借権の無断譲渡」や「転貸」には該当しません。
相続には賃貸人の承諾も不要です。
よって夫婦のうち一方が死亡して他方が引き続き物件を利用していても債務不履行にはならず、大家側が契約を解除したり明渡し請求したりできません。
2.大家からの「更新拒絶」も難しい
夫が死亡して妻が賃借権を相続した場合、その後に契約期間が終了したら「更新拒絶」して退去を求められるのでしょうか?
普通賃貸借契約では、契約期間が満了しても更新されるのが原則です。大家が更新を拒絶するには「正当事由」が必要となります。法律上、借主は強く保護されるので正当事由は非常に厳しく判断されます。
単に「もともとの賃借人が死亡して配偶者が賃借権を相続した」だけでは、更新拒絶の正当事由になりません。
一方、以下のような事情があれば、更新拒絶の正当事由が認められやすくなるでしょう。
- 相続開始後、妻は実家で生活することが多くほとんど物件を利用していない
- 物件が老朽化しており、このままでは倒壊の危険が高い
- 大家側において、どうしてもその物件に居住する必要がある
名義変更料も請求できない
もともとの契約者が死亡して相続人に賃借権が移った場合、名義変更料も請求できません。
当然のように請求するとトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。
3.内縁の妻の場合
賃貸していた相手が内縁の夫婦だった場合には、大家は賃貸借契約を解除できるのでしょうか?
内縁の夫婦とは、婚姻届を提出せずに事実上の婚姻生活を営んでいる夫婦です。
内縁の夫婦には遺産相続権が認められません。配偶者が死亡しても、賃借権を相続できないのです。
そうであれば、内縁の夫婦の一方が死亡したら、大家は遺された配偶者へ退去を求められるようにも思えます。
しかし借地借家法第36条では、被相続人と同居していた内縁の配偶者が保護されています。
借地借家法36条
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後、1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りではない。
このように相続人がいない場合、内縁の配偶者は「賃借人の権利義務を承継する」ため、賃借権の無断譲渡にはなりません。大家が債務不履行によって契約を解除することはできないと考えましょう。
亡くなった人に他に子どもなどの相続人がいる場合でも、内縁の配偶者は相続人の賃借権を「援用」できると考えられています。やはり大家から退去請求することはできません。
不動産を賃貸していると、物件の利用者が変更されたり死亡したりして、対応に迷ってしまう方が多数おられます。千葉の秋山真太郎総合法律事務所では不動産分野に力を入れて取り組んでいますので、お悩みごとがありましたらお気軽にご相談ください。
【不動産】賃貸借契約の債務不履行解除ができるパターン
建物を賃貸している場合、大家の都合で自由に解約できません。契約期間が終了しても継続するのが前提となり、更新を拒絶するにも厳しい「正当事由」の要件を満たす必要があります。
ただし賃借人に債務不履行があれば、大家側から一方的に賃貸借契約の解除ができる場合があります。
今回は賃貸借契約を債務不履行解除できるパターンをご紹介しますので、不良な賃借人にお悩みの不動産オーナー様はぜひ参考にしてみてください。
1.債務不履行解除とは
契約終了の正当事由がなくても、借主側に債務不履行があれば大家側から解除できるケースが多々あります。
債務不履行とは、契約上の義務を果たさないことです。
賃貸借契約は当事者同士の信頼関係にもとづいた契約であり、簡単には解除が認められません。ただし信頼関係を破壊するほどの背信的行為があれば、大家の側から契約を解除できるのです。
以下では借主の債務不履行により、大家側から賃貸借契約を解除できるパターンについてみていきましょう。
2.賃料を滞納された
賃料不払いは、借主における債務不履行の典型的なケースです。
賃貸借契約において、借主が賃料を払うのは契約の根幹となる重要な義務であり、賃料を払わないなら「債務不履行」と言わざるを得ません。
ただし、賃貸借契約は当事者同士の強い信頼関係にもとづいた契約であり、1か月分の賃料を滞納したからといって背信的行為とまではいえません。最低3か月分以上は滞納しなければ、解除は難しいと考えましょう。
また物件に欠陥があったり壊れたりしているにもかかわらず賃貸人が修繕しない場合など、借主側に「賃料を払わない正当な事情」があると、賃料が払われていなくても解除できない場合があります。
3.無断で転貸、譲渡された
2つ目は、借主が貸主に無断で物件を第三者へ転貸した場合や賃借権を譲渡したケースです。
賃貸借契約において、「借主が誰か」は非常に重要なポイントです。利用者を信頼しているからこそ貸主は物件を貸しつけるものだからです。
よって民法においても、不動産の賃借人は賃貸人の承諾を得ない限り、賃借権を譲渡したり転貸したりしてはならない、と規定されています(民法612条)。
それにもかかわらず大家に無断で第三者へ転貸したり賃借権を譲渡したりすると、大家に対する背信的行為となって信頼関係を破壊してしまうでしょう。
そこで無断転貸や賃借権の譲渡が行われた場合には、大家は債務不履行にもとづいて賃貸借契約を解除し、相手へ退去を請求できます。
ただし賃借人と転貸人が実質的に同一でどちらが利用しても物件の使用状況に変わりない場合など、一定のケースでは無断で転貸しても債務不履行とならないことがあります。
4.定められた用法を守らない
不動産を賃貸するときには、一定の用法を定めるものです。
たとえば居住用物件であれば店舗や事業所としての利用ができません。
ペット禁止物件であればペットを飼育すると契約違反となりますし、楽器を禁止する物件であれば楽器演奏が契約違反、学生の単身マンションであれば同居人と一緒に住むと契約違反となるでしょう。
このように、定められた用法に反する使用方法をすると、賃借人の債務不履行となります。
ただし賃貸借契約は当事者同士の強い信頼関係にもとづくものであり、軽い用法違反があったからといってすべてのケースで解除できるとは限りません。
軽微な用法違反の場合、解除が認められない可能性もあります。
5.債務不履行解除の手続きは弁護士へ相談を
大家が自己判断で債務不履行解除通知を送ると、借主が納得せずにトラブルになるケースが少なくありません。いったんもめると裁判が必要となり、トラブルも拡大してしまいがちです。
スムーズに解除を成功させるには弁護士に解除通知の作成や発送、その後の交渉を任せるのが得策といえるでしょう。
千葉県で賃貸借契約の債務不履行解除を検討している不動産オーナー様がおられましたら解除が認められそうかどうか弁護士がアドバイスいたします。お気軽にご相談ください。
【不動産】個人営業の賃借人が法人成りしたら「賃借権の無断譲渡」になる?
「個人営業の自営業者へ物件を賃貸していたら、いつの間にか法人成りしていた。賃借権の無断譲渡にならないのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
賃借権の無断譲渡は賃貸借契約の基本となる信頼関係を破壊する背信的な行為であり、大家は債務不履行による解除ができます。
ただし個人事業主が法人成りした場合、必ずしも債務不履行解除ができるとは限りません。
以下で解除できるケースとできないケースとについて、裁判例を踏まえて弁護士が解説します。
1.賃借権を無断譲渡されたら債務不履行解除ができる
賃貸借契約において、借主による賃借権の無断譲渡は禁止されます。
賃借権の無断譲渡とは、貸主に無断で借主の地位を第三者へ移転することです。
民法では、借主が賃借権を譲渡する際には貸主による承諾が必要とされており、無断譲渡されたら貸主は債務不履行によって賃貸借契約を解除できます。
無断譲渡が禁止される理由
賃貸借契約において、「借主が誰か」は物件の利用方法に直結する問題であり、非常に重要な事項です。それにもかかわらず借主が勝手に賃借権を譲渡したら、借主と貸主の間の信頼関係は破壊されてしまうでしょう。
借主の背信的行為によって賃貸借契約を維持できなくなるので、貸主は賃貸借契約を解除できるのです。
2.個人事業が法人化したら賃借権の無断譲渡になる?
個人事業主が法人化すると、物件の利用者が個人の経営者から法人へと変更されます。
形式的には「賃借権の無断譲渡」と同一の状態ともいえるでしょう。
しかし実際に債務不履行となって賃貸借契約を解除できるかは、別途検討を要します。
たとえば個人事業主が法人化したとはいっても、1人法人で経営者が1人で経営している場合、ほとんど何の変化もありません。もともと事業所として利用していた物件について、法人成りした後も従前と同様の方法で利用し続けているのであれば、物件の利用状況も変わらないでしょう。
大家にとって「信頼関係を破壊された」というほどの事情は認められず、債務不履行解除はできない可能性が高いといえます。
最高裁でも同様の判断が出ていますし(昭和39年11月19日)、裁判例にも、個人事業主の賃借人が税金対策で法人化して営業実態に変化がない場合などには債務不履行解除を認めないものがあります。
3.法人化によって賃貸借契約を解除できるケースとは
一方、個人事業主が法人化することによって大家が賃貸借契約を解除できるケースもあります。
それは経営陣の実態や利用形態に変更が起こった場合です。
たとえば個人営業の賃借人が法人化の際、第三者による資本を導入するケースを考えてみましょう。その場合、もともとの経営者が退任するケースもありますし、取締役に就任したとしても代表取締役には第三者が就任する可能性があります。会社株式も資本投入者や代表取締役、他の役員などが取得するケースが多いでしょう。そうなると、法人化と同時に経営権が移転し、もはや従前の個人事業主と同一視するのは難しくなってしまいます。
また法人化した後に物件の利用方法が変わるケースもよくあります。たとえばもともと居住用として賃貸していた物件について、法人成り後には事業所として利用し始めたら用法遵守義務違反となるでしょう。
裁判例でも、法人成りによって物件の利用状況が変わったり経営権が実質的に移転したりすると、大家と借主の信頼関係が破壊されたものとして債務不履行を認めるケースがあります(参考 福岡高裁昭和49年9月30日判決など) 。
個人事業主が法人成りした場合、大家側から契約を解除できるケースとできないケースがあります。専門知識がないと、正確な判断は難しくなるでしょう。千葉県で対応にお困りの不動産オーナー様がおられましたら、お気軽に秋山慎太郎総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
【不動産】立退料を払えば賃貸借契約を解約できる?
土地や建物を賃貸しているオーナー様から「立退料を払えば借主に出ていってもらえるのでしょうか?」というご質問を受けるケースがよくあります。
法律上、立退料を払えば借主を退去させられるわけではありません。
立退料はあくまで「正当事由を補完する事情」であり、立退料の支払いのみによって退去請求できる法的根拠はないからです。
ただし当事者同士で交渉し、借主が応じるなら立退料を払って退去してもらえる可能性があります。
今回は、賃貸物件から立ち退きを求める際の「立退料」の意味や効果的に借主を退去させる方法について、弁護士が解説します。
1.借地借家契約を終わらせるには正当事由が必要
土地や建物を貸し出している場合、地主や大家が土地や建物を取り戻すのは容易ではありません。
法律上、土地や建物の借主は非常に強く保護されるためです。
契約期間がもうけられている場合、期間中は基本的に解約できません。
契約期間が終了しても更新されるのが原則で、更新を拒否するには「正当事由」が必要です。
正当事由の有無は非常に厳しく判断されるため、地主や大家が単に「自分で使いたい」というだけでは認められない可能性が高いといえます。
正当事由が認められやすい具体的な状況
- 建物が老朽化していてこのまま放置すると倒壊や崩落などの具体的な危険が生じている場合
- 借主がほとんど物件を使用しておらず、貸主側に利用すべき重大な事情がある場合
上記のような状況であれば、正当事由が認められやすいでしょう。
2.立退料とは
貸主側の都合で土地や建物の賃貸借契約を終了させたいときには、貸主が借主へ立退料を支払うケースが多数です。裁判になった場合にも、立退料の支払いと引き換えに賃貸借契約の終了を認めるものが少なくありません。
立退料とは、賃貸借契約を終わらせる際に貸主が借主へ支払う補償金のようなお金です。
賃貸借契約が終了すると、借主には引越し費用や新居を借りる費用などがかかって負担が生じるでしょう。そこで貸主がそうした損失補填を含めて立退料を支払い、正当事由を補完する事情とするのです。
3.立退料を払えば退去させられる?
ここで勘違いしてはならないのは、「立退料は正当事由を補完する事情」という点です。
「正当事由が一応あるけれども補完する必要がある場合」に立退料を払って退去させることはできますが、「正当事由が初めから無い」なら立退料を払っても退去は認められません。
「立退料さえ払えば物件から出ていってもらえる」わけではないので、間違えないようにしましょう。
4.当事者同士で交渉すれば退去させられる
土地や建物から借主を退去させたいとき、立退料を払っても出ていってもらえないならあきらめるしかないのでしょうか?
そういうわけではありません。立退料の位置づけが問題となるのは、あくまで裁判になった場合です。当事者間で合意解約ができれば、正当事由の有無を検討しなくても物件から退去してもらえます。
たとえば物件を自分で使いたいとき、借主に契約終了の話を持ちかけて、相手が納得したら建物を明け渡してもらえます。
交渉の際には、相手の納得する価額の立退料を支払えば、スムーズに出ていってもらいやすくなるでしょう。
5.立退き交渉を弁護士に依頼するメリット
貸地や貸し物件の立退き交渉は、地主や大家が自分で行うより弁護士へ依頼する方が効果的です。当事者同士で直接話し合うと、どうしても感情的になってこじれてしまいがちだからです。いったん相手との仲が悪化すると、合意解約ができなくなって訴訟が必要となるケースも少なくありません。そうなったら厳格な正当事由がないと退去の実現が困難となり、時間も労力も費用もかかってしまいます。
はじめから弁護士に任せてスムーズに立退きを実現しましょう。
千葉県にて賃借人に物件からの退去を求めたい地主や大家の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
【不動産】賃貸借契約を中途解約できるケースと手順について
土地や建物を賃貸しても、途中解約したいケースがあるものです。
ただし中途解約は必ず認められるとは限りません。
この記事では大家や地主などの貸主の立場から中途解約できるケースや方法について、解説します。
1.期限の定めのある契約の場合
中途解約できるかどうかは、賃貸借契約に「期限」があるかどうかで異なります。
契約期限を定めた場合、借主からも貸主からも、中途解約は基本的にできません。
途中で契約を打ち切ると、相手へ不足の不利益を与えてしまうおそれがあるためです。
1-1.例外的に中途解約できるケース
契約期間を定めていても、例外的に中途解約が認められる可能性があります。
それは、契約において中途解約を認める特約をつけている場合です。
期間の定めのある賃貸借契約において途中解約を認める特約を「解約権留保特約」といいます。
ただし貸主側からの中途解約は、解約権留保特約があっても必ずしも認められません。
解約の「正当事由」が必要と考えられています。
正当事由とは、賃貸借契約を終わらせざるをえない事情です。
たとえば貸主側がどうしても物件を利用しなければならない事情がある場合、建物が老朽化して建て替えの必要性が高い場合などには正当事由が認められやすいでしょう。
正当事由を補完するため、立退料が支払われる事例もよくあります。
1-2.借主に債務不履行がある場合には解除できる
期間の定めのない契約であっても、借主に債務不履行があれば貸主側から契約を解除できます。
たとえば以下のような事情がある場合です。
- 借主が3か月分以上の賃料を滞納し続けている
- 借主が無断で物件を転貸した、無断で借地権を譲渡した
2.期間の定めのない契約の場合
賃貸借契約に期間が定められていない場合、借主も貸主もいつでも解約申し入れができます。
期間の定めのない契約になるのは以下のような場合です。
- そもそも契約期間を定めていない
契約当初から契約期間についての定めをしなかった場合です。
- 法定更新された
当初は契約期間について取り決めをしても、更新時にお互いに合意をせずに法定更新された場合には期間の定めのない契約となります。
法定更新されるのは、期間満了前にお互いに更新をしない旨の通知をしなかった場合や、期間満了後も借主が物件の利用を続け、貸主が異議を出さなかった場合などです。
ただし期間の定めのない賃貸借契約であっても、貸主側による解約は常に認められるとは限りません。借主は物件に居住していたり生活の基本となる営業をしたりしているケースが多く、貸主による自由な解約を認めると借主に大きな不利益が発生するからです。
貸主からの解約には、やはり正当事由が必要となります。
3.中途解約の手続き方法
貸主が賃貸借契約を中途解約したい場合には、事前に解約申入れをしなければなりません。
土地の場合には1年前、建物の場合には6か月前に借主へ通知する必要があります。
4.合意解約する場合
以上のように、賃貸借契約に期間があるかどうかで途中解約の可否が変わりますし、貸主側からの解約にはいずれにせよ正当事由が必要です。また事前の解約申入れが必要で、すぐに解約して物件を取り戻すことはできません。
一方、貸主と借主が話し合って合意で解約するなら、こういった要件は不要となります。
たとえば大家が借主へ解約を持ちかけて借主が即時退去に納得すれば、すぐにでも明け渡してもらえる可能性があり、正当事由も不要です。
ただし合意解約の場合でも一定の立退料や引越し費用などの補償を行うケースが多数となっています。
賃貸借契約のご相談はお気軽に
賃貸借契約を途中解約するには、借主との交渉が必要となるケースもよくあります。弁護士に依頼するとスムーズに解約しやすくなり、ご自身で対応する労力やストレスもかかりません。賃貸オーナー様のお悩み解決は、千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
【不動産】賃貸借契約の更新拒絶が認められるための「正当事由」とは?
土地や建物を賃貸している場合、期間が満了しても契約関係を終了できるわけではありません。多くの場合、賃借人が希望すると契約が継続します。
貸主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要です。
今回は賃貸借契約の更新拒絶が認められるための「正当事由」とはどういったものか、判断基準も交えて解説します。
1.賃貸借契約は継続が原則
土地や建物の賃貸借契約を締結する際には、期間を定めるのが一般的です。
ただ期間が満了したからといって、契約が終了するとは限りません。
通常の借地借家契約の場合(定期賃貸借契約でない場合)には、契約期間の満了後も以前と同一の条件で更新されるのが原則となります。
借主側からの退去申出は比較的簡単に認められますが、貸主側からの更新拒絶には「正当事由」が必要だからです。
2.正当事由とは
正当事由とは、賃貸借契約を終わらせざるを得ない正当な理由をいいます。
賃貸借契約において、借主は居住場所や営業場所として物件を利用しているケースが多く、貸主から一方的に更新を拒否されると大きな不利益を受ける可能性が高まります。
そこで借主は借地借家法によって強く保護されており、貸主からの更新拒絶は厳しく制限されているのです。
貸主が更新を拒絶するために正当事由を要するのは、借主保護のためといえるでしょう。
ただし正当事由が必要なのは、借主に債務不履行がない場合です。
長期にわたる家賃不払いなどの責任があれば、貸主側から賃貸借契約を解除できます。
3.正当事由の判断基準
貸主側に正当事由が認められやすいのは、以下のような場合です。
- 貸主が物件を自分で使う必要性が高い
貸主に他に住む場所がなく、どうしても貸している物件に住む必要がある場合などです。
- 建物が老朽化していて建て替えが必要
建物の老朽化が進み、そのまま放置すると倒壊の危険などがあって建て替えなければならない場合です。
- 借主に他に使える物件がある
借主に他に使える物件があると保護の必要性が小さくなるので、正当事由が認められやすくなります。
- 借主があまり物件を利用していない
借主が積極的に物件を利用していない場合、契約を更新する必要性が低いので正当事由が認められやすくなります。
4.正当事由を補完する立退料
賃貸借契約を終了させる場合、正当事由を補完する材料として「立退料」の支払いが行われるのが一般的です。
立退料とは、貸主が賃貸借契約の更新を拒否するため、借主へ支払うお金です。裁判例でも、貸主に一定の立退料の支払いを命じて更新拒絶を認めるものが多数存在します。
ただ立退料され払えば更新拒絶の正当事由が認められるわけではありません。
立退料はあくまで「正当事由を補完する材料」であり、そもそも正当事由がなければ立退料を払っても更新を拒否できないので注意しましょう。
なお当事者間で話し合って契約を終了させる場合には、厳密に正当事由の有無を判断する必要はありません。貸主と借主の双方が納得すれば、契約を終了させられます。
5.立ち退き交渉は弁護士へお任せください
賃貸借契約の更新を拒絶したり解約したりする際には、借主と交渉しなければなりません。その際、相手から立ち退きを拒否されたり高額な立退料を要求されたりしてトラブルになる事例が多々あります。
弁護士が代理で交渉すれば、法的な観点から相手を説得できます。有利な条件でスムーズに契約を終了しやすくなりますし、ご自身で対応しなくて良いので手間やストレスも軽減できるでしょう。
秋山慎太郎総合法律事務所では不動産オーナー様へのサポートに力を入れています。
千葉県で更新拒絶や立ち退き交渉に関してお悩みのある不動産オーナー様は、お気軽にご相談ください。
【不動産】更新料を請求できるケースとできないケース
賃貸借契約を更新する際、貸主側から「更新料」を請求できる場合とできない場合があります。更新料を巡るトラブルもよく起こるので、賃貸オーナーの立場として更新料について正しく理解しておきましょう。
以下では更新料を請求できる場合とできない場合、更新料の相場や定め方をご説明します。
賃貸物件のオーナー様はぜひ参考にしてみてください。
1.更新料とは
更新料とは、契約期間が満了しても契約を更新する場合、賃借人が賃貸人へ支払うお金です。
法律上、当然に発生するものではなく貸主と借主の合意によって生じます。
更新料が生じるのは以下のようなケースです。
- 賃貸借契約の締結時に契約書で「期間満了時に契約を更新する際は、借主は貸主へ賃料○か月分の更新料を支払う」などの条項を定めている
- 契約更新時に貸主と借主があらためて話し合い、更新料について合意した
更新料の金額は「相当」でなければなりません。賃料の額や契約期間などの諸事情からしてあまりに高額な場合、更新料の規定が無効になる可能性もあります。
更新料を請求できるかどうかは「合意更新」か「法定更新」かによっても変わるので、以下でそれぞれについてみてみましょう。
2.合意更新の場合
合意更新とは、借主と貸主が話し合い合意して契約を更新することです。
合意更新の場合、契約書に更新料の規定があれば貸主は借主へ更新料を請求できます。
一方、以下のような場合には合意更新であっても更新料を請求できません。
- 契約で更新料について定めておらず、合意時に借主が更新料の支払いに応じなかった
- 更新料の金額が高額に過ぎる
契約更新時に更新料を払ってもらいたい場合には、契約書において更新料の金額や支払い義務について定めておきましょう。
3.法定更新の場合
法定更新とは、法律の規定によって当然に賃貸借契約が更新されることです。
以下のような場合に法定更新されます。
- 契約期間満了の6か月前までに大家が更新しない旨の通知をしなかった(建物賃貸借)
- 契約期間満了後も借主が物件を利用し、大家が異議を出さなかった(建物賃貸借)
- 土地上に建物が建っていて借主が地主へ更新請求した(借地契約)
- 土地上に建物が建っていて契約期間満了後も借主が土地利用を続けている(借地契約)
法定更新の場合、契約書に更新料の定めがあっても必ずしも適用されません。更新料の規定は合意更新のみを対象としているケースがあるためです。
契約書において「法定更新の場合でも更新料が発生する」と書かれていれば、貸主は借主へ更新料を請求できますが、合意更新を前提とした記載になっていると請求できません。
法定更新の際にも更新料を請求したいなら、契約書に「法定更新の場合でも更新料を請求できる」と明示しておきましょう。
4.更新料の金額や相場、計算方法
賃貸借契約で更新料を定めるとき、単に「更新料が発生する」とだけ書いていると具体的にいくらを請求できるのかがわかりません。
更新料については、具体的な金額を定めるか計算方法を明示しましょう。
更新料の金額は相当な範囲内であれば借主と貸主の話し合いによって自由に定められますが、およその相場は以下のとおりです。
- 建物賃貸借の場合…家賃の1~2か月分
- 土地賃貸借の場合…更地価格の3%、借地権価格の5%、年間地代額の4~8年分程度
ただし地域や物件の状況、当事者の関係性などによっても適切な金額は異なります。上記を参考にして、当事者同士で話し合って納得できる金額を定めましょう。
賃貸物件の更新料を巡っては、借主と貸主の間でトラブルになるケースがよくあります。対応に迷われたときには、お気軽に弁護士へご相談ください。
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