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労働訴訟とは?流れや対応ポイントについて弁護士が解説

2023-06-23

残業代や解雇などのトラブルが発生して会社側ともめてしまった場合、「労働訴訟」によって解決できる場合があります。

 

労働訴訟とは、従業員と会社側のトラブルを解決するための訴訟です。

「労働訴訟」という特別の類型があるわけではありませんが、訴訟で労働問題をとりあげるので労働訴訟とよばれます。

 

労働訴訟を起こすときには、必要な証拠を集めて法律的に正しい主張を行い、立証活動もしなければなりません。

 

この記事では労働訴訟について、弁護士がわかりやすく解説します。会社相手に裁判を起こそうとしている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.労働訴訟とは

労働訴訟とは、残業代や解雇などの労働者と企業側の間のトラブルを解決するための訴訟をいいます。労働訴訟を起こすと裁判所が判決を出してくれるので、会社側とのトラブルを解決できます。労働審判と違い、訴訟自体に対する異議申し立てはできません。紛争を最終的に解決できることが労働訴訟のメリットとなります。

労働訴訟で取り扱うことができる事件

労働訴訟で取り扱うことができるのは、労働問題に関するあらゆる法的問題を含む事件です。

労働審判にように「労働者対事業者側」という構図でなくてもかまいません。

たとえばセクハラやパワハラを受けた場合、直接の加害者(上司などの個人)に対しても労働訴訟を起こせます。

 

よくある労働訴訟の例をみてみましょう。

  • 残業代請求
  • 解雇無効(不当解雇)
  • 安全配慮義務違反(労災関連)
  • セクハラやパワハラの損害賠償請求(会社相手、加害者個人相手の両方)

 

対象となる事件が制限されないのは、労働審判と比べたときの労働訴訟のメリットといえるでしょう。

2.労働訴訟の流れ

労働訴訟の大まかな流れを示します。

STEP1 証拠集め

まずは証拠を集めましょう。たとえば残業代請求であれば、タイムカードやシフト表、営業日報の写し、給与明細書などが必要となります。

STEP2 訴訟提起

証拠が揃ったら訴状を作成して訴訟を提起します。

訴訟提起後、特に不備がなければ担当係が決まって第1回期日の呼出状が届きます。

 

STEP3 第1回期日

第1回期日が開かれます。被告は答弁書を提出している場合、第1回期日に出席する必要はありません。

STEP4 第2回以降の期日

第2回以降の期日では、争点や証拠の整理を行っていきます。

STEP5 尋問

争点や証拠の整理が終わったら、当事者や証人の尋問が行われます。

STEP6 判決

すべての証拠調べが終わったら判決が言い渡されます。

STEP7 控訴

判決内容に不服がある場合には、控訴して争うことが可能です。控訴は判決書を受け取ってから2週間以内に手続きしなければなりません。

 

3.労働訴訟のポイント

労働訴訟で主張を認めてもらうには、証拠が必要です。訴訟では立証されない事実は認められないからです。事前にできるだけ多くの証拠力の高い証拠を集めましょう。

証拠の集め方がわからない場合、弁護士までご相談ください。

 

4.労働訴訟は1人でもできる?

労働訴訟は本人お1人でもできますが、専門知識がない方が1人で進めるのは実質的に困難です。不利になってしまい、敗訴するリスクも高まってしまうでしょう。

有利に訴訟を進めるには弁護士に依頼することをおすすめします。

 

5.労働訴訟を弁護士に依頼するメリット

5-1.証拠の集め方がわかる

残業代などの証拠の集め方がわからない場合でも、弁護士に相談すれば適切な証拠集めの方法がわかります。

5-2.手間がかからない

訴訟には膨大な手間がかかりますが、弁護士に任せれば大きく手間を省けます。

5-3.裁判所へほとんど行かなくて良い

基本的には弁護士のみが出廷すれば良いので、尋問の日以外はほとんど裁判所に行かずに済みます。

 

5-4.ストレスが軽減される

弁護士にトラブルを預けてしまえば精神的にも楽になるでしょう。

 

千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働トラブル解決に力を入れて取り組んでいます。お困りの際にはお気軽にご相談ください。

労働審判とは?流れや弁護士に依頼するメリットを解説

2023-04-21

労働者の方が雇用先の企業とトラブルになったとき、労働審判を利用するとスムーズに解決できるケースがよくあります。

労働審判は裁判とは異なり「話し合い」をメインとして進められる手続きで、裁判より迅速に終了するメリットもあります。

今回は労働審判の概要や流れ、弁護士に依頼するメリットについて解説します。残業代や解雇トラブルなどに巻き込まれた方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.労働審判とは

労働審判とは、残業代不払いや解雇トラブルなど、労働者と雇用者との間の労働紛争を解決するための裁判所の手続きです。

訴訟よりも迅速に問題を解決できて、原則3回までとして審理を終了します。

当初は話し合いによる解決を目指しますが、最終的に当事者が合意できない場合には「審判」によって裁判所が一定の結論を下します。

ただし当事者が審判に対して異議を申し立てた場合、審判は確定せずに訴訟へと移行します。

 

労働審判にかかる期間はおおむね2~3か月です。裁判所によると、平成18年から令和3年までに終了した労働審判事件の平均審理期間は80.6日で、全体のうち67.6%が申立てから3か月以内に終了しています。

 

労働訴訟となると1年やそれ以上かかるケースもあるので、迅速に解決できる労働審判は労働者、企業側双方にとってメリットがあるといえるでしょう。

 

また労働審判は、訴訟とは異なり「非公開」ですので、他人に傍聴されて知られることもありません。

 

2.労働審判で扱える事件

労働審判で扱えるのは、「労働者と雇用主との間での労働トラブル」に限られます。すべての労働問題を扱えるわけではありません。

よく利用されるのは、以下のような場合です。

  • 残業代に関するトラブル
  • 賞与や退職金不払いに関するトラブル
  • 不当解雇に関するトラブル
  • 企業側の安全配慮義務違反に関するトラブル

 

 

一方、以下のような場合、労働者対雇用者の問題ではないので労働審判は利用できません。

  • 上司からパワハラやセクハラなどの被害を受け、上司に対して損害賠償請求を行う

この場合、上司は雇用者ではないので「労働者対雇用者」という構図になりません。よって労働審判は利用できないのです。

 

なお同じセクハラやパワハラのケースでも、会社による職場環境配慮義務違反を問う場合であれば労働審判を利用できます。

 

3.労働審判の流れ

STEP1 証拠を集める

まずは申立を行う側が証拠を集めましょう。たとえば残業代請求なら、雇用契約書や給与明細書、タイムカードやシフト表の写しなどが必要となります。

STEP2 申立を行う

証拠が揃ったら申立書を作成し、申立を行いましょう。

裁判所の管轄は以下の3つのうちいずれかとなります。

  • 相手方の住所や居所、営業所などを管轄する地方裁判所
  • 現在の就業場所あるいは最後に就業した場所を管轄する地方裁判所
  • 当事者間の合意によって定めた地方裁判所

STEP3 企業側から答弁書が提出される

申立後、通常は企業側から答弁書が提出されます。

STEP4 第1回期日

第1回期日では企業側との話し合いを進めます。間に労働審判委員が介入するので、当事者同士で話し合うよりはスムーズに進むケースが多数です。1回目で調停が成立すれば1回で手続きが終了します。

STEP5 第2回期日、第3回期日

継続して話し合いを行います。両者で合意ができれば調停が成立します。

STEP6 審判

3回の期日においても合意できない場合には、裁判所が審判によって結論を出します。

STEP7 異議申立て

当事者が審判内容に納得できない場合、異議申し立てが可能です。異議申し立ては、審判書を受け取ってから2週間以内に行う必要があります。

 

4.労働審判を弁護士に依頼するメリット

労働審判は自分でもできますが、主張を認めてもらうには的確な証拠を集めて法律的な主張を行わねばなりません。

専門知識のない方が1人で取り組むと不利になりやすいでしょう。

弁護士に依頼すると専門家である弁護士が証拠や主張をまとめるので、手間が省けるだけではなく有利に進めやすくなるものです。精神的負担も軽減されるでしょう。

 

千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者の法的サポートにも力を入れて取り組んでいます。会社とトラブルになってお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

 

【労働】残業代請求の推定計算とは

2023-03-20

残業代を請求しようとしても、具体的にいくらの残業代が発生しているのか正確に算定できないケースが少なくありません。労働者側には残業代を計算するための資料が十分に揃っていないケースが多いからです。

そんなときには「推定計算」を行って企業側へ請求する残業代を算定できることもあります。

 

この記事では推定計算とは何か、残業代の証拠がないときにどのように対応すればよいのか弁護士が解説します。

 

 

1.未払い残業代の立証は労働者側がしなければならない

未払い残業代を請求するには残業代を計算しなければなりません。

訴訟になると、残業代の金額も労働者側が証明する必要があります。裁判では「証拠のないことは認められない」ので、労働者側が残業代を立証できなければ、裁判に負けてしまうのが原則です。

 

残業代の計算で必須となるのが残業代の証拠です。たとえばタイムカードやシフト表、パソコンのログインログオフ記録などが証拠になりえます。

 

残業代の立証ができないケースが多い

ただし現実的に労働者側が残業時間を証明するのは簡単ではありません。

たとえばタイムカードやシフト表、作業報告書などは通常、会社が把握しているでしょう。

会社がタイムカードなどの証拠を労働者側へ提示するとは限りません。

またタイムカードに全ての勤務時間が正確に打刻されているとも限りません。

パソコンのログインログオフ記録についても、会社が労働者へ貸与していたパソコンの場合には労働者が入手できないケースが多いでしょう。

そうなると、労働者側による残業時間の立証が困難になってしまいます。

 

そんなときには残業代の推定計算が認められる場合があります。

 

2.残業代の推定計算とは

残業代の推定計算とは、正確に証明できない残業時間について他の事情から推定を及ぼし、残業代を計算する方法です。

合理的な理由がないにもかかわらず、企業側が容易に提出できると考えられる計算資料を提示しない場合には、公平の観点からして推定計算が認められる可能性があります。

労働者側が十分な証拠を持っていなくても、推定計算によって残業代が認められる事例は珍しくありません。

 

手元に十分な証拠が揃っておらず企業側が非協力的な態度をとっていても残業代請求できる可能性はあります。あきらめる必要はありません。

 

3.推定計算の具体的な方法

残業代の推定計算の方法は、事案によって異なります。

たとえばタイムカードがある場合とない場合でも異なりますし、タイムカードがあっても正確に打刻されていない場合にはまた対応が異なってきます。

 

参考として、タイムカードなどの証拠が存在する月としない月があった事案において、以下のような計算方法がとられた裁判例があります(東京地裁平成23年10月25日)。

 

 

 

このようにして、タイムカードなどの証拠がない月や、タイムカードがあっても打刻が不十分な月についても残業代が認められました。

 

4.残業代の証拠がなくてもご相談ください

確かに残業代の証明は労働者側の義務ですが、場合によっては公平性の観点から残業代の推定計算が認められる可能性があります。ただしその場合でも、計算方法は合理的でなければなりません。

専門知識がなければ妥当な方法による推定計算は困難でしょう。

 

千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者の支援にも積極的に取り組んでいます。残業代請求でお悩みがありましたら、お手元に残業代の証拠が揃っていなくてもお気軽にご相談ください。

 

【労働】管理職の残業代請求について

2023-03-01

管理職の方が残業代を請求しようとすると、企業側から「管理職には残業代が出ない」と言われてしまうケースが多々あります。

しかし管理職だからといって残業代が出ないわけではありません。

会社に拒否されても請求できるケースは多いので、あきらめる必要はありません。

 

この記事では管理職の残業代請求について解説します。店長やマネージャー、部課長職などで残業代請求を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.管理監督者と残業代

マネージャーや店長などの管理職の方が会社へ残業代を請求した場合、断られる理由はたいてい「管理監督者に該当するため」です。

管理監督者とは、労働基準法に規定されている言葉で「監督若しくは管理の地位にある者」と表現されています。

そして、管理監督者の場合には時間外労働の割増賃金などの規定が適用されません。

 

労働基準法41条2号に規定があります。

 

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

労働基準法上の管理監督者とは「経営者側と一体となって労働条件について裁量を持ちふさわしい権限を持ち待遇を受けているもの」を意味すると考えられています。

 

管理監督者に該当する場合、割増賃金などの規定が適用されないので「残業代を請求できない」といわれるのです。

 

2.管理職=管理監督者ではない

一般には「管理職=管理監督者」と考えられているケースが多いのですが、必ずしもそうとはいえません。労働基準法上の管理監督者といえるには、自分の出勤時間について裁量を持ちそれなりの待遇を受けていて、経営者と一体といえるような職務権限を有している必要があります。

管理監督者に該当するかどうかの判断は、名称や肩書き、就業規則の定めなどにとらわれず、実態に即して客観的に行われるべきです。

 

単に「店長」や「マネージャー」「課長」などの役職名がついていても、実態として経営者と一体になっているといえなければ労働基準法上の管理監督者にはなりません。

労働基準法上の管理監督者でない限り、管理職であっても一般の労働者と同様に時間外労働の割増賃金等を含めた残業代請求ができます。

 

3.管理監督者と認められる要件

では労働基準法上の管理監督者となるためにはどういった条件を満たす必要があるのでしょうか?以下で管理監督者と認められる要件をみてみましょう。

 

  • 経営者と一体性を持つ職務権限を有している
  • 自分の出勤退勤時間について、自由裁量が認められている
  • 地位にふさわしい待遇を受けている

 

上記を満たさない限り、名称のみが管理職となっていても労働基準法上の管理監督者になりません。

 

管理職が管理監督者にならないケースの例

  • 経営会議に出席したことがない
  • パートやアルバイトなどの採用権限がない
  • 部下の人事考課に関する権限がない
  • 遅刻や早退をすると減給対象になる
  • 長時間労働を強いられている
  • 給与を時給換算するとパートやアルバイト従業員と変わらない
  • 基本給や役職手当が不十分

 

上記のような場合、名ばかり管理職であって管理監督者にはならない可能性があります。

 

4.管理監督者と残業代

労働基準法上の管理監督者に該当する場合でも、深夜労働をすると割増賃金を請求できます。

管理監督者だからといって残業代請求が一切できないわけではありません。また有給休暇を取得することも可能です。

 

千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者側の法的サポートも取り扱っております。管理職となって残業代を払ってもらえなくなった方などがおられましたら、お気軽にご相談ください。

【労働】残業代の証拠の集め方

2023-01-27

残業代を請求する際には証拠が必要です。

どのような証拠が必要なのか、証拠の集め方も合わせて解説します。

 

1.残業代請求で証拠が必要な理由

残業代請求する際には事前に証拠を集めておく必要があります。

証拠がないと、会社側から「残業は発生していない」と反論されてしまうためです。

また資料がないと、残業代を正確に計算もできません。

 

残業代請求をしようと考えたなら、すぐに証拠集めを始めましょう。

 

2.残業代請求の証拠の種類

残業代請求の証拠には以下のような種類があります。

 

  • 給与額などの労働条件を示す証拠
  • 残業の指示を受けた証拠
  • 残業時間を示す証拠

 

以下でそれぞれがどのようなものか、具体例を交えてお伝えします。

 

 

3.給与額などの労働条件を示す証拠

3-1.労働条件がわかる証拠が必要な理由

まずは給与額を始めとする労働条件がわかる証拠を集めなければなりません。給与額がわからないと、1時間あたりの単価を計算できないので残業代の計算もできません。残業代を計算するには、以下のような事情が明らかになっている必要があるからです。

  • 基本給の金額
  • 各種手当の性質や金額
  • 出勤日
  • 給料日
  • 1日の所定労働時間

 

3-2.労働条件を示す証拠の種類

労働条件を示す証拠には以下のようなものがあります。

  • 求人票
  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 就業規則、給与規程
  • 給与明細書

 

必ずしもすべてが必要なわけではありませんが、なるべく多い方が有利に交渉を進めやすく計算もしやすくなります。できるだけたくさんの資料を集めましょう。

 

4.残業の指示を受けた証拠

次に、上司などから残業の指示を受けた証拠を集めなければなりません。

指示がないのに勝手に残業しても、残業代を請求できない可能性が高いからです。

ただし指示の方法は黙示でもよく、必ずしも明示的に「残業するように」と告げられていなくてもかまいません。たとえば従業員が労働時間外に働いているのを会社が知りつつ状況を放置した場合、黙示の指示があったとして残業に該当する可能性があります。

 

残業の指示を受けた証拠としては、以下のようなものが典型です。

  • 上司から残業を指示されたメールやチャット画面、指示メモや録音データなど
  • 上司へ残業ご相談に業務内容や仕事をした時間を報告するメールやメモなど

 

5.残業時間を示す証拠

残業代請求をするなら「残業時間を証明する証拠」が必須です。

どのくらい残業したかわからないと、残業代の計算もできません。会社側としても「根拠のない請求」として応じない可能性が高くなるからです。

 

残業時間を証明する証拠には以下のようなものがあります。

  • タイムカード
  • タコグラフ
  • 業務日誌
  • 営業日報
  • PCのログイン、ログオフ記録
  • 業務メールの送信記録
  • 自分で作成したメモ
  • 手帳への書き込み
  • 会社から帰宅する際に利用したタクシーの領収証

 

6.残業代の証拠を集める手順

残業代の証拠を集める際には、以下のような手順で進めましょう。

6-1.タイムカードや日報を確認する

まずは自分でタイムカードや日報を確認しましょう。可能であればコピーすると良いでしょう。

6-2.就業規則や給与規定を確認する

次に会社へ備え付けてある就業規則や給与規定などを確認しましょう。これらについてもコピーをとるか、メモをして記録しましょう。

6-3.労働時間や業務内容を自分でメモする

証拠を集めにくい場合、自分で丁寧にメモした記録も証拠になります。

毎日の残業時間を手帳などに記入して残しましょう。

6-4.会社に資料の開示を求める

手元に残業代の証拠を集められない場合、会社側に開示を求めて集める方法があります。

6-5.裁判所の証拠保全を利用する

会社が任意に資料を開示しない場合、証拠保全という手続きを使って会社側の資料を集められる可能性があります。

 

残業代でどういったものが証拠になるかはケースによっても異なります。手元に証拠がなくても残業代の推定計算ができるケースもあります。

弁護士が残業代請求のサポートをしますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。

【労働】残業代の計算方法と請求方法

2023-01-11

残業しているのに残業代が不払いになっている場合、会社へ未払いの残業代を請求できます。泣き寝入りする必要はないので、きちんと計算して請求しましょう。

この記事では残業代の計算方法や請求する手順を解説します。

日々忙しく残業しているにもかかわらず残業代を払ってもらっていない場合、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.残業代の計算方法

まずは残業代の計算方法をみてみましょう。

 

1-1.残業代の計算式

残業代は、以下の計算式によって計算します。

 

  • 未払い残業代=1時間あたりの単価×残業時間×割増賃金率

 

1-2.1時間あたりの単価について

1時間あたりの単価は、以下のように計算します。

 

  • 1時間あたりの単価=(基本給と諸手当)÷(1か月の所定労働時間)

 

基本給と諸手当について

1時間あたりの単価を計算する際には、基本給だけではなく諸手当も含んで計算します。

ただし家族手当、通勤手当、子女教育手当、住宅手当などは含みません。

 

所定労働時間とは

所定労働時間とは、会社がそれぞれ定めている労働時間です。たとえば1日7時間で週5日の勤務なら1週間の所定労働時間は35時間になります。

 

1か月の所定労働時間は、以下のようにして求めます。

  • 1か月の所定労働時間=(月の日数-会社が定める所定休日の日数)×1日の労働時間

 

1-3.残業時間について

残業時間は、実際に残業した時間です。タイムカードや業務日報、手帳などの資料で確認しましょう。

1-4.割増賃金率について

割増賃金率とは、残業した時間によって適用される割増率です。

労働基準法上、最低でも以下の割増賃金率を定めなければならないとされています。

残業の種類

割増賃金率

時間外労働(法定労働時間を超えて働いた場合)

25%

時間外労働(1か月の残業時間が60時間を超えた場合)

ただし中小企業の場合、2023年3月末まで猶予される※

50%

深夜労働(午後10時から午前5時まで働いた場合)

25%

休日労働(法定休日に労働した場合)

35%

深夜に法定労働時間を超えて働いた場合

50%

1か月に残業時間が60時間を超えていて深夜労働した場合

75%

休日に深夜労働した場合

60%

 

1か月に60時間を超えた場合、2023年3月31日までは中小企業の場合、割増率を50%にする必要がありません(25%で済みます)。ただし2023年4月1日からは中小企業でも大企業と同様に割増賃金率を50%にしなければなりません。

 

1-5.残業代計算の具体例

1時間あたりの単価が3000円の人が、毎日午前8時から午後8時まで(休憩時間1時間)の毎日11時間はたらき、勤務日数が20日だったケース。所定労働時間は1日8時間。

 

この場合、1時間あたりの単価は3000円です。

残業時間は3時間×20日=60時間になります。

割増賃金率は25%なので、残業代は以下のようになります。

 

3000円×60時間×1.25=225000円

 

このケースでは労働者は会社に対し、225000円の残業代を請求できます。

2.残業代を請求する手順

残業代を計算できたら、会社へ請求手続きを進めましょう。

以下で残業代を請求する手順をお伝えします。

STEP1 証拠を集める

まずは残業代の証拠を集めましょう。タイムカードや業務日報、パソコンのログインログオフ記録などが証拠になります。

STEP2 残業代を計算する

証拠が揃ったら残業代を計算しましょう。

STEP3 内容証明郵便で残業代の請求をする

計算ができたら、会社へ内容証明郵便を使って残業代の請求書を送りましょう。

STEP4 交渉する

会社と交渉して残業代の支払い金額などを決定します。

STEP5 合意して異支払いを受ける

合意できたら合意書を作成して、残業代の支払いを受けましょう。

STEP6 支払われない場合、労働審判や労働訴訟を起こす

会社が残業代の支払いに応じない場合には、労働審判や労働訴訟を起こして残業代を請求しましょう。

 

残業代を請求するには、正確に計算をして会社とも交渉しなければなりません。弁護士によるサポートが必要となります。お困りの方はお気軽にご相談ください。

【労働】有給休暇の買上げを請求できるか?

2020-04-08

年次有給休暇とは

 

労働基準法の年次有給休暇制度は,労働者の健康で文化的な生活の実現に資するために,労働者に対し,休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度です(菅野和夫著『労働法』)。

労働者が6か月継続勤務し,その間の全労働日の8割以上出勤した場合には、労働者の勤続期間に応じた日数の年休権が発生します(労働基準法39条)。労働者は使用者に対し,具体的な時季を指定して有給休暇の請求をすることができます。

また,労働者が時季指定しなかったために未消化となった年休は,2年の時効(労働基準法115条)の範囲で翌年に繰越しできるものとされています。

 

年次有給休暇の買上げ

使用者が労働者に対し,未消化の年休日数に応じた手当を支給することを,俗に年次有給休暇の買上げといいます。

使用者と労働者との間で年次有給休暇の買上げについて合意することは特に問題はありません。但し,その合意が,使用者が手当を支払う代わりに労働者の年休取得を認めない趣旨を含むものである場合には,年次有給休暇の保障に反し違法とされます。

 

労働者から年次有給休暇の買上げを請求することはできるか

使用者に年休買上げの義務はありませんので,労働者から年休の買上げを請求することはできません。

但し,例えば,会社において,退職者の年休残日数の買上げが制度化されていたり,慣行となっているような場合には,使用者に年休買上げの義務が生じることになりますので,年休の買上げを請求することができます。

 

使用者から年次有給休暇の買上げを請求することはできるか

時効にかかっていない在職者の年休を買い上げるのは違法です。労働者の年休取得を認めないことになり制度趣旨に反するからです。

他方,既に時効にかかっている在職者の年休や,退職者の年休の残日数を買い上げることは,もはや労働者が使用できないものですから,適法となります。

 

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