残業代を請求する際には証拠が必要です。
どのような証拠が必要なのか、証拠の集め方も合わせて解説します。
1.残業代請求で証拠が必要な理由
残業代請求する際には事前に証拠を集めておく必要があります。
証拠がないと、会社側から「残業は発生していない」と反論されてしまうためです。
また資料がないと、残業代を正確に計算もできません。
残業代請求をしようと考えたなら、すぐに証拠集めを始めましょう。
2.残業代請求の証拠の種類
残業代請求の証拠には以下のような種類があります。
- 給与額などの労働条件を示す証拠
- 残業の指示を受けた証拠
- 残業時間を示す証拠
以下でそれぞれがどのようなものか、具体例を交えてお伝えします。
3.給与額などの労働条件を示す証拠
3-1.労働条件がわかる証拠が必要な理由
まずは給与額を始めとする労働条件がわかる証拠を集めなければなりません。給与額がわからないと、1時間あたりの単価を計算できないので残業代の計算もできません。残業代を計算するには、以下のような事情が明らかになっている必要があるからです。
- 基本給の金額
- 各種手当の性質や金額
- 出勤日
- 給料日
- 1日の所定労働時間
3-2.労働条件を示す証拠の種類
労働条件を示す証拠には以下のようなものがあります。
- 求人票
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 就業規則、給与規程
- 給与明細書
必ずしもすべてが必要なわけではありませんが、なるべく多い方が有利に交渉を進めやすく計算もしやすくなります。できるだけたくさんの資料を集めましょう。
4.残業の指示を受けた証拠
次に、上司などから残業の指示を受けた証拠を集めなければなりません。
指示がないのに勝手に残業しても、残業代を請求できない可能性が高いからです。
ただし指示の方法は黙示でもよく、必ずしも明示的に「残業するように」と告げられていなくてもかまいません。たとえば従業員が労働時間外に働いているのを会社が知りつつ状況を放置した場合、黙示の指示があったとして残業に該当する可能性があります。
残業の指示を受けた証拠としては、以下のようなものが典型です。
- 上司から残業を指示されたメールやチャット画面、指示メモや録音データなど
- 上司へ残業ご相談に業務内容や仕事をした時間を報告するメールやメモなど
5.残業時間を示す証拠
残業代請求をするなら「残業時間を証明する証拠」が必須です。
どのくらい残業したかわからないと、残業代の計算もできません。会社側としても「根拠のない請求」として応じない可能性が高くなるからです。
残業時間を証明する証拠には以下のようなものがあります。
- タイムカード
- タコグラフ
- 業務日誌
- 営業日報
- PCのログイン、ログオフ記録
- 業務メールの送信記録
- 自分で作成したメモ
- 手帳への書き込み
- 会社から帰宅する際に利用したタクシーの領収証
6.残業代の証拠を集める手順
残業代の証拠を集める際には、以下のような手順で進めましょう。
6-1.タイムカードや日報を確認する
まずは自分でタイムカードや日報を確認しましょう。可能であればコピーすると良いでしょう。
6-2.就業規則や給与規定を確認する
次に会社へ備え付けてある就業規則や給与規定などを確認しましょう。これらについてもコピーをとるか、メモをして記録しましょう。
6-3.労働時間や業務内容を自分でメモする
証拠を集めにくい場合、自分で丁寧にメモした記録も証拠になります。
毎日の残業時間を手帳などに記入して残しましょう。
6-4.会社に資料の開示を求める
手元に残業代の証拠を集められない場合、会社側に開示を求めて集める方法があります。
6-5.裁判所の証拠保全を利用する
会社が任意に資料を開示しない場合、証拠保全という手続きを使って会社側の資料を集められる可能性があります。
残業代でどういったものが証拠になるかはケースによっても異なります。手元に証拠がなくても残業代の推定計算ができるケースもあります。
弁護士が残業代請求のサポートをしますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。