親ならば誰しも、自分が死亡した後に子ども達が相続トラブルになることは望まないものです。しかし現実には多くの相続トラブルが発生し「骨肉の争い」が繰り広げられています。
相続トラブルは、生前の対策によって効果的に予防できるので、正しい対応方法を実践しましょう。
今回は相続トラブルを効果的に予防する方法を弁護士が解説します。
1.遺言書を作成する
まずは「遺言書」を利用する方法がお勧めです。
遺言書がない場合「法定相続」が適用されます。法定相続とは、民法が定める相続の方法。法律が定める「法定相続人」が「法定相続分」に従って遺産を相続します。具体的な遺産の分け方は法定相続人が「遺産分割協議」をして決めなければなりません。このとき、意見が合わずにトラブルになるケースが非常に多いのです。
遺言によって相続方法を指定しておけば、相続人たちが遺産分割協議で遺産分けを行う必要はありません。遺産分割絡みの相続トラブルを効果的に予防できるでしょう。
1-1.遺産内容を明らかにする
遺言書を作成するときには、必ず遺産内容を明らかにして遺産目録を作りましょう。そうすれば、相続人達が「他にも財産があるはず」などと疑心暗鬼になってトラブルになるのを避けやすくなります。
1-2.公正証書遺言を利用する
遺言書を作成するときには「公正証書遺言」を利用しましょう。公正証書遺言とは、公証人が公文書として作成してくれる遺言書です。
信用性が高く「無効」になりにくいので、遺言書がトラブル要因になるリスクが低下します。
原本が公証役場で保管されるので、紛失や偽造、変造などのおそれもありません。
より確実に遺志を実現したいなら、最適な方法といえるでしょう。
1-3.遺留分に配慮する
遺言書を作成するときには、配偶者や子ども達の「遺留分」に注意が必要です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分。遺言によって遺留分を侵害すると、死後に遺留分を巡るトラブルが発生するリスクが高まります
ケースによってそれぞれの相続人に認められる遺留分割合が異なります。
遺言書で遺留分を侵害しないように、慎重に遺言内容を検討しましょう。遺留分の割合画不明な場合、弁護士までご相談ください。
1-4.遺言執行者を選任する
遺言内容を確実に実現するには「遺言執行者」が役立ちます。遺言執行者とは、遺言内容の実現を任務とする人。預金の払い戻しや不動産の名義変更なども単独でできます。
遺言執行者を選任しておけば、相続人たちが自分で手続きをしなくても遺言内容を実現できるので、相続人たちに負担をかけません。
遺言書をめぐるトラブルも発生しにくくなるでしょう。
2.生前贈与を行う
相続トラブルを避ける方法として「生前贈与」も役立ちます。
たとえば長男に不動産を与えたい場合、生前に長男へ生前贈与しておけば確実に長男へ受け継がせられるでしょう。遺産分割協議になると、意見が割れて最終的に売却してお金で分けざるを得ないケースもあるので、生前贈与しておくと安心です。
ただし相続開始前10年間の相続人への生前贈与は「特別受益」になります。死後に特別受益にまつわるトラブルを避けたければ、遺言書に「特別受益の持ち戻し計算を免除する」と書いておきましょう。
そうすれば、遺産分割協議の際に特別受益の持ち戻し計算ができなくなって、無用なトラブルを避けられます。
3.家族信託を利用する
家族信託も相続対策として有効です。
家族信託とは、信頼できる家族に財産を預けて管理してもらう「信託契約」の1種。生前に子どもや孫、甥姪などに財産を預けて自分のために管理してもらったり、死後に配偶者のために家や財産を管理してもらったりできます。
障害のある子どもがいる場合、事業承継のケース、認知症対策などにもよく利用される手法です。
家族信託はさまざまなシーンで利用できます。個別的に設定する必要があるので、関心のある方は弁護士までご相談ください。