借金を相続してしまったとき、放っておくと高額な支払い義務が及んでしまうリスクがあります。不利益を避けるには、早めに相続放棄などの適切な対応をしなければなりません。
ただし相続放棄には期限もあります。
今回は借金などの負債を相続してしまった場合の対処方法を解説します。
1.借金や負債も相続される
遺産相続といえば、不動産や預貯金などのプラスの資産を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし実際には「借金」をはじめとした負債も相続されるので注意が必要です。
- 消費者金融
- クレジットカード、カードローン
- キャッシング、リボ払い
- 車のローン
- 事業用ローン
- 未払い家賃
- 未払いのスマホ代、通信料
- 未払いの買掛金
- 連帯保証債務
- 未払い税、健康保険料
上記のような負債は、すべて「法定相続人」へ相続されてしまいます。
相続人が複数いる場合、負債は法定相続分に応じて分割されます。たとえば借金が300万円あって3人の子どもが相続する場合、子ども達がそれぞれ100万円ずつの支払い義務を負います。
借金や負債の相続が発生しやすいケースとは?
借金の相続で特に注意しなければならないのは、親が事業者だった場合です。事業者は事業資金の借り入れを起こす機会も多いですし、つきあいで連帯保証人になることも少なくありません。
特に連帯保証人になっている場合、主債務者が返済を続けていれば保証人には責任が及びません。相続直後にはわからないケースが多いので要注意です。
2.借金や負債を相続しない方法
借金や未払い金などの負債を相続しないため、以下のように対応しましょう。
2-1.まずはしっかり負債を調査
相続が発生したら、遺産内容を調査しましょう。負債があることすらわからなければ、免除してもらうための対応もできません。
被相続人の自宅や郵便受け、スマホやPC、通帳の履歴や契約書などを確認して、負債がないかどうか確認してみてください。
2-2.相続放棄
負債がある場合には、相続放棄すれば相続せずに済みます。相続放棄とは、相続人としての地位を放棄して一切の相続をしないための手続きです。相続放棄が認められたら資産も負債も一切相続しません。
ただし相続放棄すると、借金だけではなく不動産などの資産も受け取れないことに注意が必要です。資産超過のケースで相続放棄すると不利益を受ける可能性があります。
2-3.限定承認
限定承認は、受け継いだ資産の範囲内で負債の支払いをするための手続きです。資産超過の場合、残った資産は受け取れます。
ただし相続人全員が一緒に家庭裁判所で申述しなければならないなどのルールがあり、相続放棄よりハードルが高くなっている点に注意が必要です。
3.相続放棄の注意点
相続放棄するときには以下の点に注意しましょう。
3-1.遺産分割協議で「相続しない」としても意味がない
一般に、遺産分割協議において他の相続人に「一切相続しません」と宣言したり念書を差し入れたりすると「相続放棄できた」と思い込む方が少なくありません。
しかしこれでは正式な相続放棄にはなりません。資産は相続しませんが負債の支払い義務は残ってしまいます。
相続放棄するなら、必ず家庭裁判所で「相続放棄の申述」をしましょう。
3-2.期限に注意
相続放棄や限定承認の申述には「期限」がもうけられています。基本的に「相続開始があってから3ヶ月以内」に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
その際には申述書や戸籍謄本、住民票などの資料が必要です。
期限を過ぎると受け付けてもらえなくなり、負債を相続せざるを得ないリスクが高まるのでくれぐれも早めに対応しましょう。
4.借金を相続したくないなら弁護士へ相談を
負債を相続しないためには、相続放棄か限定承認が有効です。その前提としてしっかり相続財産の内容を調査しなければなりません。
ご自身達で対応すると、どうしても不手際が生じやすくなるものです。最悪の場合、相続人が自己破産しなければならない可能性もあります。
そんなことになる前に、早めに弁護士に相談しましょう。負債を相続してお困りの方がおられましたら、お気軽にお問い合わせください。