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【不動産】個人営業の賃借人が法人成りしたら「賃借権の無断譲渡」になる?
「個人営業の自営業者へ物件を賃貸していたら、いつの間にか法人成りしていた。賃借権の無断譲渡にならないのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
賃借権の無断譲渡は賃貸借契約の基本となる信頼関係を破壊する背信的な行為であり、大家は債務不履行による解除ができます。
ただし個人事業主が法人成りした場合、必ずしも債務不履行解除ができるとは限りません。
以下で解除できるケースとできないケースとについて、裁判例を踏まえて弁護士が解説します。
1.賃借権を無断譲渡されたら債務不履行解除ができる
賃貸借契約において、借主による賃借権の無断譲渡は禁止されます。
賃借権の無断譲渡とは、貸主に無断で借主の地位を第三者へ移転することです。
民法では、借主が賃借権を譲渡する際には貸主による承諾が必要とされており、無断譲渡されたら貸主は債務不履行によって賃貸借契約を解除できます。
無断譲渡が禁止される理由
賃貸借契約において、「借主が誰か」は物件の利用方法に直結する問題であり、非常に重要な事項です。それにもかかわらず借主が勝手に賃借権を譲渡したら、借主と貸主の間の信頼関係は破壊されてしまうでしょう。
借主の背信的行為によって賃貸借契約を維持できなくなるので、貸主は賃貸借契約を解除できるのです。
2.個人事業が法人化したら賃借権の無断譲渡になる?
個人事業主が法人化すると、物件の利用者が個人の経営者から法人へと変更されます。
形式的には「賃借権の無断譲渡」と同一の状態ともいえるでしょう。
しかし実際に債務不履行となって賃貸借契約を解除できるかは、別途検討を要します。
たとえば個人事業主が法人化したとはいっても、1人法人で経営者が1人で経営している場合、ほとんど何の変化もありません。もともと事業所として利用していた物件について、法人成りした後も従前と同様の方法で利用し続けているのであれば、物件の利用状況も変わらないでしょう。
大家にとって「信頼関係を破壊された」というほどの事情は認められず、債務不履行解除はできない可能性が高いといえます。
最高裁でも同様の判断が出ていますし(昭和39年11月19日)、裁判例にも、個人事業主の賃借人が税金対策で法人化して営業実態に変化がない場合などには債務不履行解除を認めないものがあります。
3.法人化によって賃貸借契約を解除できるケースとは
一方、個人事業主が法人化することによって大家が賃貸借契約を解除できるケースもあります。
それは経営陣の実態や利用形態に変更が起こった場合です。
たとえば個人営業の賃借人が法人化の際、第三者による資本を導入するケースを考えてみましょう。その場合、もともとの経営者が退任するケースもありますし、取締役に就任したとしても代表取締役には第三者が就任する可能性があります。会社株式も資本投入者や代表取締役、他の役員などが取得するケースが多いでしょう。そうなると、法人化と同時に経営権が移転し、もはや従前の個人事業主と同一視するのは難しくなってしまいます。
また法人化した後に物件の利用方法が変わるケースもよくあります。たとえばもともと居住用として賃貸していた物件について、法人成り後には事業所として利用し始めたら用法遵守義務違反となるでしょう。
裁判例でも、法人成りによって物件の利用状況が変わったり経営権が実質的に移転したりすると、大家と借主の信頼関係が破壊されたものとして債務不履行を認めるケースがあります(参考 福岡高裁昭和49年9月30日判決など) 。
個人事業主が法人成りした場合、大家側から契約を解除できるケースとできないケースがあります。専門知識がないと、正確な判断は難しくなるでしょう。千葉県で対応にお困りの不動産オーナー様がおられましたら、お気軽に秋山慎太郎総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
【不動産】立退料を払えば賃貸借契約を解約できる?
土地や建物を賃貸しているオーナー様から「立退料を払えば借主に出ていってもらえるのでしょうか?」というご質問を受けるケースがよくあります。
法律上、立退料を払えば借主を退去させられるわけではありません。
立退料はあくまで「正当事由を補完する事情」であり、立退料の支払いのみによって退去請求できる法的根拠はないからです。
ただし当事者同士で交渉し、借主が応じるなら立退料を払って退去してもらえる可能性があります。
今回は、賃貸物件から立ち退きを求める際の「立退料」の意味や効果的に借主を退去させる方法について、弁護士が解説します。
1.借地借家契約を終わらせるには正当事由が必要
土地や建物を貸し出している場合、地主や大家が土地や建物を取り戻すのは容易ではありません。
法律上、土地や建物の借主は非常に強く保護されるためです。
契約期間がもうけられている場合、期間中は基本的に解約できません。
契約期間が終了しても更新されるのが原則で、更新を拒否するには「正当事由」が必要です。
正当事由の有無は非常に厳しく判断されるため、地主や大家が単に「自分で使いたい」というだけでは認められない可能性が高いといえます。
正当事由が認められやすい具体的な状況
- 建物が老朽化していてこのまま放置すると倒壊や崩落などの具体的な危険が生じている場合
- 借主がほとんど物件を使用しておらず、貸主側に利用すべき重大な事情がある場合
上記のような状況であれば、正当事由が認められやすいでしょう。
2.立退料とは
貸主側の都合で土地や建物の賃貸借契約を終了させたいときには、貸主が借主へ立退料を支払うケースが多数です。裁判になった場合にも、立退料の支払いと引き換えに賃貸借契約の終了を認めるものが少なくありません。
立退料とは、賃貸借契約を終わらせる際に貸主が借主へ支払う補償金のようなお金です。
賃貸借契約が終了すると、借主には引越し費用や新居を借りる費用などがかかって負担が生じるでしょう。そこで貸主がそうした損失補填を含めて立退料を支払い、正当事由を補完する事情とするのです。
3.立退料を払えば退去させられる?
ここで勘違いしてはならないのは、「立退料は正当事由を補完する事情」という点です。
「正当事由が一応あるけれども補完する必要がある場合」に立退料を払って退去させることはできますが、「正当事由が初めから無い」なら立退料を払っても退去は認められません。
「立退料さえ払えば物件から出ていってもらえる」わけではないので、間違えないようにしましょう。
4.当事者同士で交渉すれば退去させられる
土地や建物から借主を退去させたいとき、立退料を払っても出ていってもらえないならあきらめるしかないのでしょうか?
そういうわけではありません。立退料の位置づけが問題となるのは、あくまで裁判になった場合です。当事者間で合意解約ができれば、正当事由の有無を検討しなくても物件から退去してもらえます。
たとえば物件を自分で使いたいとき、借主に契約終了の話を持ちかけて、相手が納得したら建物を明け渡してもらえます。
交渉の際には、相手の納得する価額の立退料を支払えば、スムーズに出ていってもらいやすくなるでしょう。
5.立退き交渉を弁護士に依頼するメリット
貸地や貸し物件の立退き交渉は、地主や大家が自分で行うより弁護士へ依頼する方が効果的です。当事者同士で直接話し合うと、どうしても感情的になってこじれてしまいがちだからです。いったん相手との仲が悪化すると、合意解約ができなくなって訴訟が必要となるケースも少なくありません。そうなったら厳格な正当事由がないと退去の実現が困難となり、時間も労力も費用もかかってしまいます。
はじめから弁護士に任せてスムーズに立退きを実現しましょう。
千葉県にて賃借人に物件からの退去を求めたい地主や大家の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
【不動産】賃貸借契約を中途解約できるケースと手順について
土地や建物を賃貸しても、途中解約したいケースがあるものです。
ただし中途解約は必ず認められるとは限りません。
この記事では大家や地主などの貸主の立場から中途解約できるケースや方法について、解説します。
1.期限の定めのある契約の場合
中途解約できるかどうかは、賃貸借契約に「期限」があるかどうかで異なります。
契約期限を定めた場合、借主からも貸主からも、中途解約は基本的にできません。
途中で契約を打ち切ると、相手へ不足の不利益を与えてしまうおそれがあるためです。
1-1.例外的に中途解約できるケース
契約期間を定めていても、例外的に中途解約が認められる可能性があります。
それは、契約において中途解約を認める特約をつけている場合です。
期間の定めのある賃貸借契約において途中解約を認める特約を「解約権留保特約」といいます。
ただし貸主側からの中途解約は、解約権留保特約があっても必ずしも認められません。
解約の「正当事由」が必要と考えられています。
正当事由とは、賃貸借契約を終わらせざるをえない事情です。
たとえば貸主側がどうしても物件を利用しなければならない事情がある場合、建物が老朽化して建て替えの必要性が高い場合などには正当事由が認められやすいでしょう。
正当事由を補完するため、立退料が支払われる事例もよくあります。
1-2.借主に債務不履行がある場合には解除できる
期間の定めのない契約であっても、借主に債務不履行があれば貸主側から契約を解除できます。
たとえば以下のような事情がある場合です。
- 借主が3か月分以上の賃料を滞納し続けている
- 借主が無断で物件を転貸した、無断で借地権を譲渡した
2.期間の定めのない契約の場合
賃貸借契約に期間が定められていない場合、借主も貸主もいつでも解約申し入れができます。
期間の定めのない契約になるのは以下のような場合です。
- そもそも契約期間を定めていない
契約当初から契約期間についての定めをしなかった場合です。
- 法定更新された
当初は契約期間について取り決めをしても、更新時にお互いに合意をせずに法定更新された場合には期間の定めのない契約となります。
法定更新されるのは、期間満了前にお互いに更新をしない旨の通知をしなかった場合や、期間満了後も借主が物件の利用を続け、貸主が異議を出さなかった場合などです。
ただし期間の定めのない賃貸借契約であっても、貸主側による解約は常に認められるとは限りません。借主は物件に居住していたり生活の基本となる営業をしたりしているケースが多く、貸主による自由な解約を認めると借主に大きな不利益が発生するからです。
貸主からの解約には、やはり正当事由が必要となります。
3.中途解約の手続き方法
貸主が賃貸借契約を中途解約したい場合には、事前に解約申入れをしなければなりません。
土地の場合には1年前、建物の場合には6か月前に借主へ通知する必要があります。
4.合意解約する場合
以上のように、賃貸借契約に期間があるかどうかで途中解約の可否が変わりますし、貸主側からの解約にはいずれにせよ正当事由が必要です。また事前の解約申入れが必要で、すぐに解約して物件を取り戻すことはできません。
一方、貸主と借主が話し合って合意で解約するなら、こういった要件は不要となります。
たとえば大家が借主へ解約を持ちかけて借主が即時退去に納得すれば、すぐにでも明け渡してもらえる可能性があり、正当事由も不要です。
ただし合意解約の場合でも一定の立退料や引越し費用などの補償を行うケースが多数となっています。
賃貸借契約のご相談はお気軽に
賃貸借契約を途中解約するには、借主との交渉が必要となるケースもよくあります。弁護士に依頼するとスムーズに解約しやすくなり、ご自身で対応する労力やストレスもかかりません。賃貸オーナー様のお悩み解決は、千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
【不動産】賃貸借契約の更新拒絶が認められるための「正当事由」とは?
土地や建物を賃貸している場合、期間が満了しても契約関係を終了できるわけではありません。多くの場合、賃借人が希望すると契約が継続します。
貸主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要です。
今回は賃貸借契約の更新拒絶が認められるための「正当事由」とはどういったものか、判断基準も交えて解説します。
1.賃貸借契約は継続が原則
土地や建物の賃貸借契約を締結する際には、期間を定めるのが一般的です。
ただ期間が満了したからといって、契約が終了するとは限りません。
通常の借地借家契約の場合(定期賃貸借契約でない場合)には、契約期間の満了後も以前と同一の条件で更新されるのが原則となります。
借主側からの退去申出は比較的簡単に認められますが、貸主側からの更新拒絶には「正当事由」が必要だからです。
2.正当事由とは
正当事由とは、賃貸借契約を終わらせざるを得ない正当な理由をいいます。
賃貸借契約において、借主は居住場所や営業場所として物件を利用しているケースが多く、貸主から一方的に更新を拒否されると大きな不利益を受ける可能性が高まります。
そこで借主は借地借家法によって強く保護されており、貸主からの更新拒絶は厳しく制限されているのです。
貸主が更新を拒絶するために正当事由を要するのは、借主保護のためといえるでしょう。
ただし正当事由が必要なのは、借主に債務不履行がない場合です。
長期にわたる家賃不払いなどの責任があれば、貸主側から賃貸借契約を解除できます。
3.正当事由の判断基準
貸主側に正当事由が認められやすいのは、以下のような場合です。
- 貸主が物件を自分で使う必要性が高い
貸主に他に住む場所がなく、どうしても貸している物件に住む必要がある場合などです。
- 建物が老朽化していて建て替えが必要
建物の老朽化が進み、そのまま放置すると倒壊の危険などがあって建て替えなければならない場合です。
- 借主に他に使える物件がある
借主に他に使える物件があると保護の必要性が小さくなるので、正当事由が認められやすくなります。
- 借主があまり物件を利用していない
借主が積極的に物件を利用していない場合、契約を更新する必要性が低いので正当事由が認められやすくなります。
4.正当事由を補完する立退料
賃貸借契約を終了させる場合、正当事由を補完する材料として「立退料」の支払いが行われるのが一般的です。
立退料とは、貸主が賃貸借契約の更新を拒否するため、借主へ支払うお金です。裁判例でも、貸主に一定の立退料の支払いを命じて更新拒絶を認めるものが多数存在します。
ただ立退料され払えば更新拒絶の正当事由が認められるわけではありません。
立退料はあくまで「正当事由を補完する材料」であり、そもそも正当事由がなければ立退料を払っても更新を拒否できないので注意しましょう。
なお当事者間で話し合って契約を終了させる場合には、厳密に正当事由の有無を判断する必要はありません。貸主と借主の双方が納得すれば、契約を終了させられます。
5.立ち退き交渉は弁護士へお任せください
賃貸借契約の更新を拒絶したり解約したりする際には、借主と交渉しなければなりません。その際、相手から立ち退きを拒否されたり高額な立退料を要求されたりしてトラブルになる事例が多々あります。
弁護士が代理で交渉すれば、法的な観点から相手を説得できます。有利な条件でスムーズに契約を終了しやすくなりますし、ご自身で対応しなくて良いので手間やストレスも軽減できるでしょう。
秋山慎太郎総合法律事務所では不動産オーナー様へのサポートに力を入れています。
千葉県で更新拒絶や立ち退き交渉に関してお悩みのある不動産オーナー様は、お気軽にご相談ください。
【不動産】更新料を請求できるケースとできないケース
賃貸借契約を更新する際、貸主側から「更新料」を請求できる場合とできない場合があります。更新料を巡るトラブルもよく起こるので、賃貸オーナーの立場として更新料について正しく理解しておきましょう。
以下では更新料を請求できる場合とできない場合、更新料の相場や定め方をご説明します。
賃貸物件のオーナー様はぜひ参考にしてみてください。
1.更新料とは
更新料とは、契約期間が満了しても契約を更新する場合、賃借人が賃貸人へ支払うお金です。
法律上、当然に発生するものではなく貸主と借主の合意によって生じます。
更新料が生じるのは以下のようなケースです。
- 賃貸借契約の締結時に契約書で「期間満了時に契約を更新する際は、借主は貸主へ賃料○か月分の更新料を支払う」などの条項を定めている
- 契約更新時に貸主と借主があらためて話し合い、更新料について合意した
更新料の金額は「相当」でなければなりません。賃料の額や契約期間などの諸事情からしてあまりに高額な場合、更新料の規定が無効になる可能性もあります。
更新料を請求できるかどうかは「合意更新」か「法定更新」かによっても変わるので、以下でそれぞれについてみてみましょう。
2.合意更新の場合
合意更新とは、借主と貸主が話し合い合意して契約を更新することです。
合意更新の場合、契約書に更新料の規定があれば貸主は借主へ更新料を請求できます。
一方、以下のような場合には合意更新であっても更新料を請求できません。
- 契約で更新料について定めておらず、合意時に借主が更新料の支払いに応じなかった
- 更新料の金額が高額に過ぎる
契約更新時に更新料を払ってもらいたい場合には、契約書において更新料の金額や支払い義務について定めておきましょう。
3.法定更新の場合
法定更新とは、法律の規定によって当然に賃貸借契約が更新されることです。
以下のような場合に法定更新されます。
- 契約期間満了の6か月前までに大家が更新しない旨の通知をしなかった(建物賃貸借)
- 契約期間満了後も借主が物件を利用し、大家が異議を出さなかった(建物賃貸借)
- 土地上に建物が建っていて借主が地主へ更新請求した(借地契約)
- 土地上に建物が建っていて契約期間満了後も借主が土地利用を続けている(借地契約)
法定更新の場合、契約書に更新料の定めがあっても必ずしも適用されません。更新料の規定は合意更新のみを対象としているケースがあるためです。
契約書において「法定更新の場合でも更新料が発生する」と書かれていれば、貸主は借主へ更新料を請求できますが、合意更新を前提とした記載になっていると請求できません。
法定更新の際にも更新料を請求したいなら、契約書に「法定更新の場合でも更新料を請求できる」と明示しておきましょう。
4.更新料の金額や相場、計算方法
賃貸借契約で更新料を定めるとき、単に「更新料が発生する」とだけ書いていると具体的にいくらを請求できるのかがわかりません。
更新料については、具体的な金額を定めるか計算方法を明示しましょう。
更新料の金額は相当な範囲内であれば借主と貸主の話し合いによって自由に定められますが、およその相場は以下のとおりです。
- 建物賃貸借の場合…家賃の1~2か月分
- 土地賃貸借の場合…更地価格の3%、借地権価格の5%、年間地代額の4~8年分程度
ただし地域や物件の状況、当事者の関係性などによっても適切な金額は異なります。上記を参考にして、当事者同士で話し合って納得できる金額を定めましょう。
賃貸物件の更新料を巡っては、借主と貸主の間でトラブルになるケースがよくあります。対応に迷われたときには、お気軽に弁護士へご相談ください。
【不動産】改正民法における賃貸人の修繕義務、借主の修繕権について
2020年4月1日に施行された改正民法により、賃貸人の修繕義務について変更があり、借主による修繕権に関する規定が創設されました。
不動産を経営している方は、修繕義務や修繕権について正しい知識がないと予想外のトラブルに巻き込まれる可能性があります。改正法の内容をしっかり理解しておきましょう。
今回は民法改正によって賃貸人の修繕義務にどういった変更があったのか、借主の修繕権も含めて弁護士が解説しますので、収益物件をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
1.賃貸人の修繕義務とは
賃貸人は、貸している物件に不具合が生じると修繕をしなければなりません。
賃貸借契約において、賃貸人は賃借人へ物件を利用できる適正な状態で貸し出さねばならない義務を負うためです。これを賃貸人の修繕義務といいます。
たとえば電気がつかなくなった、水が出なくなった、雨漏りがするなどの不具合が発生すると、速やかに自分の費用で修繕して借主に不便が生じないようにしなければなりません。
賃貸人が修繕義務を果たさないと債務不履行状態となってしまいます。
ただ修繕義務はどのような場合にも認められるとは限りません。今回の民法改正により、「借主の責任によって修繕が必要になった場合」には賃貸人に修繕義務が発生しないことが明確にされました。
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
借主が故意や過失によって不具合を発生させた場合にまで賃貸人が費用を負担して修繕するのは不公平と考えられるためです。
実務に大きな変更はない
ただ現実には、従来においても借主の責任によって不具合を発生させたときには賃貸人に修繕義務がないと考えられていました。実務上も契約書で確認するなどして、そういった取り扱いとなっている例がほとんどです。今回の法改正は、従来の通説や実務を法文上も明確化したものといえるでしょう。
2.借主の修繕権について
今回の改正民法では、借主の修繕権に関する規定が新設されました。
第607条の2(賃借人による修繕)
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
つまり以下のような事情があると、借主は自分で物件の修繕を行えます。
- 借主が賃貸人へ不動産の修繕が必要であることを伝えたのに修繕しない場合
- 賃貸人が修繕の必要性を知った後、相当期間内に修繕対応しない場合
- 急迫の事情がある場合
借主が自費で修繕すると、後に賃借人へかかった修繕費用を償還請求できます。
裏を返せば、借主が不必要な修繕を行った場合であっても「修繕権」の行使により、費用償還請求されるリスクが発生するといえます。
トラブルを避けるには、賃貸借契約において修繕権の行使条件や範囲、費用負担方法や具体的な手続きなどについて定めておく必要があるでしょう。
3.賃貸不動産の経営については弁護士へ相談を
賃貸不動産を経営していると、さまざまな法律トラブルに巻き込まれる可能性があります。
家賃を滞納された、賃料の減額を請求されたといった例は多々ありますし、修繕や敷金に関するトラブルなども頻繁に発生するものです。
不動産経営にともなうリスクを可能な限り抑えて適切に対応するには、弁護士によるアドバイスやサポートを受けておくと安心です。
秋山慎太郎法律事務所では、不動産オーナー様への支援に力を入れて取り組んでいます。千葉県で不動産を経営しておられる方、不動産に詳しい弁護士をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
不動産の共有関係を解消する方法
不動産を他の人と共有していると、自分一人の判断では自由に活用や売却ができません。
固定資産税や維持費用などの負担もかかってしまいます。
そこで「共有関係を解消したい」と考えた方からご相談をお受けするケースもよくあります。
今回は不動産の共有関係を解消するための「共有物分割請求」について、弁護士が解説します。
兄弟や親戚、第三者などと不動産を共有している方はぜひ参考にしてみてください。
1.共有関係を解消する方法
不動産の共有状態を解消するには、以下の5種類の方法があります。
1-1.他の共有者に買い取ってもらう
1つ目は他の共有者にこちらの持分を買い取ってもらう方法です。
物件の完全な所有者になりたい持分権者がいたら、交渉が成立する可能性があります。
1-2.他の共有者の持分を買い取る
2つ目は、自分が他の共有持分権者の持分を買い取る方法です。
すべての共有持分を買い取れば、物件の完全なオーナーになれます。
1-3.売却して現金で分ける
3つ目は、他の共有持分権者と協力して物件全体を売却する方法です。
売却金から経費を差し引いた残りの金額は、共有持分割合に応じてそれぞれの持分権者が分配します。
ただし共有持分権者全員が足並みをそろえなければならないので、非協力的な共有者がいるとうまくいきません。
1-4.分筆する
土地の場合、分筆してそれぞれの共有持分権者が分筆後の土地を取得できるケースもあります。
ただし建物は分筆できませんし、すべての土地を分筆できるわけでもありません。
1-5.共有持分のみを売却する
5つ目の方法は、自分の共有持分のみを売却する方法です。この方法であれば他の共有持分権者の協力は要りません。
ただ共有持分を買い取るのは専門の不動産買取業者くらいしかなく、そういった業者に売却すると価格が市場の半額程度になってしまうケースが多数です。
2.共有物分割請求の手順
法律上、共有物件を分割するには「共有物分割請求」をしなければなりません。
共有物分割請求をすると、現物分割(分筆)、代償分割(代償金を払って他の共有持分権者の持分を取得する)、換価分割(売却して現金で分ける)の3つの方法のいずれかによって物件を分けられます。
以下では共有物分割請求の手順をご説明します。
STEP1 話し合う
まずは他の共有持分権者と話し合いをしなければなりません
協議せずにいきなり訴訟を起こせないので、他の共有持分権者との関係が悪化していても何らかの協議をする必要があります。
相手の持分を買い取るかこちらの持分を売るか、あるいは売却して分けるのかなど、話し合いましょう。
STEP2 調停を申し立てる
直接の協議が難しい場合には、共有物分割調停を申し立てましょう。調停をすると、調停委員が間に入って話し合いを調整してくれます。相手と合意できれば調停が成立して、共有不動産を分割できます。
なお共有物分割請求において調停は必須ではありません。
当事者間で行う協議または調停のいずれかの手続きを踏めば、訴訟を申し立てられます。
もちろん協議が不成立になった後あらためて調停を利用しても問題はありません。
STEP3 訴訟を提起する
協議が整わない場合や調停が不成立になった場合には、共有物分割請求訴訟を申し立てる必要があります。
訴訟は話し合いの手続きではないので、裁判官が「現物分割」「代償分割」「換価分割」のうちいずれかの分割方法を決定します。
ただし訴訟では自分の希望通りの分割方法になるとは限りません。換価分割が選択されると、競売命令が出るので市場価格より安値でしか売れない可能性もあります。
また不動産鑑定が必要になると高額な費用もかかります。
訴訟を行う際にはこういったリスクも理解したうえで臨むべきといえるでしょう。
当事務所では不動産関係の案件に積極的に取り組んでいます。千葉県で共有不動産に悩まれている方はお気軽にご相談ください。
不動産の「共有」にともなうリスク
不動産を共有していると、さまざまなリスクが発生します。
たとえば相続の際にはできるだけ共有にしないのが得策ですし、誰かと共有状態になっているなら早めに解消する措置をとるのがよいでしょう。
今回は不動産を共有しているとどういったリスクが発生するのか、ご説明します。
1人の持分権者が独占する
複数の人が共有している不動産でも、各共有持分権者は単独で土地や建物を使用できます。
1人が独占して使用しても法的な問題はありません。ただし他の共有持分権者の持分を使用しているので、使用料を払うべきです。
ところが相続物件などの場合、1人の相続人が従前から独占的に使用していても使用料を払わないケースが多々あります。すると他の共有持分権者が不満を抱いてトラブルになる可能性があります。
固定資産税や管理費用の清算でトラブル
不動産を所有していると、毎年固定資産税がかかります。
建物の管理や修繕にも費用がかかるでしょう。
共有不動産にかかる経費は、共有持分権者が持分割合に応じて負担すべきです。ところが共有持分権者同士のコミュニケーションがうまくとれていないと、税金や費用の清算がスムーズにできずにトラブルになってしまいます。
また1人の共有持分権者が固定資産税を立て替えたのに他の共有持分権者が払ってくれないので、1人に負担が集中してしまうトラブル事例もみられます。
活用や処分の方法で意見が合わずトラブル
共有不動産を「改良、利用」するためには過半数の共有持分権者による同意が必要です。
この場合の「過半数」は、共有持分権の割合によって算定します。人数ではないので注意しましょう。
たとえば建物のリフォーム、リノベーション、増改築の際には過半数の共有持分をもった持分権者が合意しなければ、計画を進められません。
また共有不動産に抵当権を設定したり売却したりするには、持分が小さい人も含めて共有持分権者「全員」の合意が必要です。老朽化した建物の解体についても同様で、1人でも反対する人がいると、処分ができません。
共有持分権者相互の関係が円滑でないと、活用や処分が難しくなってしまいます。
意見が合わずにトラブルになるケースも多いですし、他の共有持分権者と連絡をとりづらいので活用せずに物件を放置してしまうケースも多々あります。
相続が起こってトラブルに
共有持分権者が死亡して相続が発生すると、共有持分が細分化されてしまいます。
もともとの共有持分権者間では連絡を取れていても、相続が発生するとお互いに相手を知らず、コミュニケーションをとれなくなってしまうケースが少なくありません。
世代が変わると共有不動産の管理や処分はどんどん難しくなっていきます。
共有不動産のリスクを回避する方法
共有不動産のリスクを回避するには、以下のような方策をとりましょう。
そもそも共有にしない
共有状態になるきっかけとしては「相続」が非常に多数となっています。
共有を避けるため、相続の際には相続人同士の共有にせずに特定の相続人が単独で取得するように協議を行いましょう。
共有物分割請求をする
共有状態になってしまったら、他の相続人へ共有物分割請求を行えば解消できます。
たとえば自分の持分を相手に買い取るよう求めたり、相手の持分を買い取ったり、あるいは不動産を売却して現金を他の共有持分権者と分けたりします。
ただし話し合いで解決できなければ訴訟を起こさねばなりません。
共有持分を売却する
自分の共有持分のみを第三者へ売却する方法もあります。
ただし一般の個人は共有持分の買取に関心を示さないケースがほとんどで、売り先は主に専門の共有持分買取業者(不動産業者)となります。多くの場合、売却金額が市場価格の半額程度となってしまうので、経済的には損失となるでしょう。
共有物件についてお悩みがある場合、弁護士が共有関係解消や物件活用、他の共有持分権者との交渉などサポートいたします。千葉県で不動産トラブルにお困りの方がおられましたらお気軽にご相談ください。
【不動産】賃料増額請求の進め方
貸している土地や建物の賃料が不相当に低くなっている場合、地主や大家は賃料増額を求められます。
ただ、手順を間違えると借主との間で大きなトラブルになってしまう可能性もあるので、法律の定める正しい方法で増額請求を進めましょう。
今回は賃料増額請求の進め方を弁護士が解説します。
借主と話し合う
賃料を増額してもらいたいなら、まずは借主と直接話し合うようおすすめします。相手に周辺の賃料相場を示して今の賃料が低すぎることを理解してもらえれば、任意に増額に応じてもらえる可能性もあります。
増額の合意ができたら、増額した賃料について定めた合意書を作成しましょう。
賃貸借契約書を作成し直してもかまいません。
賃料増額調停を申し立てる
当事者間の話し合いでは増額について合意できない場合には、裁判所で賃料増額調停を申し立てる必要があります。
相手が強固に賃料増額に反対していて調停が成立する余地がなくても、必ず調停を申し立てなければなりません。賃料増額請求には「調停前置主義」が適用されるからです。調停なしにいきなり訴訟を申し立てても受け付けてもらえないので注意しましょう。
なお協議段階をとばしていきなり調停を申し立てるのは自由です。
調停では、不動産鑑定士などの専門知識を持った人が調停委員として関与し、当事者の意見を調整してくれます。調停委員を介した話し合いとなるので、相手と直接話す必要はありません。調停委員から「どの程度増額すべきか」金額についても意見を言ってもらえるケースがあります。
当事者双方が賃料の増額や増額割合について納得したら、調停が成立し新たな賃料が適用されるので、増額された賃料を受け取れるようになります。調停調書には強制執行力もあるので、相手が従わない場合には差し押さえも可能です。
賃料増額訴訟を提起する
調停はあくまで話し合いによる解決手段なので、合意できなければ不成立となってしまいます。
それでも賃料の増額を求めたい場合には、賃料増額訴訟を提起しましょう。
訴訟では裁判所が賃料増額の必要性や増額幅を判断し、判決を下します。
借主が納得しなくても、賃料を増額すべき事情があれば裁判所が増額を認めてくれますし、いくら増額すべきかも裁判所が決定します。
ただし訴訟で増額を認めてもらうには、貸主側が以下のような事実を立証する必要があります。
- 公租公課が上がり、現在の賃料が不相当に低くなっている
- 近隣の相場と比べて現在の賃料が著しく低くなっている
- 経済事情の変動により現状の賃料が不相当に低い状態である
また当事者の主張や立証資料だけでは不足するため、訴訟で判決が下される場合には「不動産鑑定」が行われるケースが多数です。鑑定が行われると、当事者が数十万円程度の鑑定費用を負担しなければなりません。
和解するケースも多い
賃料増額訴訟では途中で当事者が和解するケースもよくあります。
裁判官が貸主と借主の間に入って利害を調整し、両者が納得できる妥協点を見出します。
和解すれば早めにトラブルを解決できますし、鑑定を避けられるので余分な費用負担をせずにすむメリットもあります。
賃料が決まるまでの支払金額
貸主側が借主側へ賃料増額請求をしても、すぐに増額されるわけではありません。
調停や裁判をしている間に1年以上の時間が経つケースもあります。
借地借家法によると、借主は増額が確定するまでの間「自分が相当と考える賃料」を払えば済むと規定されています。たとえば従来通りの賃料が相当と考えるなら、従来通りの金額を支払っていれば遅延状態にはなりません。
ただし判決で増額が確定した場合には、不足分に年10%の利息をつけて貸主へ払う必要があります。
賃料増額請求をスムーズに進めるには弁護士によるサポートが必要です。当事務所では不動産オーナー様へのご支援に力を入れていますので、千葉県で不動産をお持ちの方がおられましたらお気軽にご相談ください。
【不動産】賃料増額請求が認められる要件とは?
いったんは地代や建物の賃料を定めても、経済事情が変わって不相当に低くなってしまうケースが少なくありません。特に契約期間が長くなると、昔に定めた地代額は現在の相場と比べて極めて低額になっている事例が多数あります。
地代や家賃が低すぎる場合、地主や大家の方から借主へ「賃料増額請求」する権利が認められます。
今回は賃料増額請求が認められる要件や手続きの進め方について、弁護士が解説します。
賃料増額請求とは
賃料増額請求とは、地主や大家が借主に対し、賃料の増額を求めることです。
借地借家法により、一定の条件を満たせば地主にも大家にも賃料増額請求権が認められます。
貸主に賃料増額請求権が認められるのは、いったん地代や家賃を定めても、契約期間中に税額が上がったり景気の変動が起こったりして不相当になってしまうケースが多いためです。
特に長期にわたって賃貸借契約を継続している場合、昔に設定した賃料額が今の相場と比べて安すぎる状態になっている事例が多数みられます。
地代についての規定
借地借家法第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
家賃についての規定
借地借家法第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
現在の賃料に納得できなければ、増額できないか検討してみましょう。
賃料増額請求が認められる要件
地主や大家側が「家賃が低すぎる」と考えても、常に賃料増額請求が認められるものではありません。借地借家法の条文によると、基本的に以下のような条件にあてはまれば増額請求が認められる可能性があります。
- 固定資産税などの公租公課の負担が増えた
- 土地や建物の価格が上昇したなど、経済事情が変動した
- 近傍同種の土地や建物の賃料に比較して不相当に低額
ただし上記3つの事情は例示であり、すべてではありません。実際に裁判になると、上記以外にもさまざまな事情を総合考慮して相当な賃料が定められます。つまり、賃料を設定した当初とは事情が変わって現行の賃料が低額すぎる状態となり、当事者の公平に反する状態となっていれば増額請求が認められると理解しましょう。
賃料不増額特約がついている場合
賃貸借契約の締結時において、貸主と借主の間で賃料不増額特約をつけている場合があります。
賃料不増額特約とは、「大家(地主)の側から賃料の増額を求めない」とする特約です。
賃料不増額特約がついていると、貸主側からの賃料増額請求ができません(借主側からの賃料減額請求は可能です)。
「賃料が低いので増額してもらいたい」と考えたら、まずは契約書をみて「賃料不増額特約」の規定がないか、確認しましょう。
賃料増額請求は弁護士へご依頼ください
大家が直接借主へ賃料の増額を求めると、借主が拒否してトラブルになってしまうケースが少なくありません。弁護士が間に入って話を進める方がスムーズに増額の合意に至りやすいものです。
千葉県でも古くからの賃貸借契約で設定された賃料が低すぎる状態になっている事例が少なくありません。「賃料を増額してほしい」とお考えの大家さまがいらっしゃいましたら、お気軽に弁護士までご相談ください。
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