Archive for the ‘千葉の弁護士コラム’ Category
法定後見と任意後見の違い
後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
それぞれ利用すべきケースや利用の際の手続きの流れなどが異なるので、双方について正しく理解しておきましょう。
この記事では法定後見制度と任意後見制度の違いについて、弁護士が解説します。高齢になった後の財産管理方法などに関心のある方はぜひ参考にしてみてください。
1.後見制度とは
法定後見制度も任意後見制度も、両方とも後見制度の一種です。
後見制度とは、判断能力の低下した人の代わりに後見人が財産管理や身上監護などを行うための制度です。
認知症にかかったり知的障害・精神障害があったりして自分では適切に財産を管理できなくなった方のために後見制度が適用されます。
後見制度には法定後見制度と任意後見制度があるので、それぞれの特徴や違いについてみてみましょう。
2.法定後見と任意後見の違いとは
2-1.法定後見とは
法定後見とは、本人の判断能力が低下したときに親族などが家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて後見人を選任してもらう制度です。
後見人としては本人の判断能力の低下度合いに応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」の3種類から選ばれます。
また後見人は裁判所が選任するので、本人が選ぶことはできません。
2-2.任意後見とは
任意後見は、本人があらかじめ後見人となろうとする人と契約しておく後見制度です。
判断能力が低下すると、事前に締結された任意後見契約内容に従って任意後見人が後見活動を開始します。
本人の判断能力があるうちに本人が契約するので、任意後見人になる人は本人が選べます。
2-3.後見人を選べるかどうかの違い
法定後見と任意後見では、後見人の選任方法が異なります。法定後見の場合、本人が後見人を選ぶことはできず、裁判所が選任します。一方任意後見の場合、本人が気に入った人を任意後見人として選任できます。
ただし法定後見でも、申立人(本人ではなく親族であるケースが多数)は後見人の候補者を立てられます。親族同士に争いがなく財産関係も単純な事案であれば、候補者がそのまま後見人に選任されるケースが少なくありません。親族同士で争いがある場合などには、裁判所が弁護士などの専門家から選任するのが一般的です。
2-4.後見開始の手続方法の違い
法定後見制度の場合、本人や親族などが家庭裁判所で後見開始の申立を行わねばなりません。調査を経て、本人に後見人が必要と判断されると、裁判所の決定によって後見が開始されます。
一方、任意後見の場合には本人があらかじめ後見人となる人と任意後見契約を交わします。任意後見契約書は公正証書にして、登記しなければなりません。
後に本人の判断能力が低下したときに任意後見人などが家庭裁判所へ申し立てて任意後見監督人が選任されると、予定されていた任意後見人による後見が開始されます。
2-5.本人の判断能力が低下してから利用できるかの違い
法定後見と任意後見では、利用できる時期も異なります。
任意後見の場合、本人が契約をしなければならないので契約できるだけの意思能力が必要です。意思能力が失われてしまったら、有効な契約ができないので任意後見を利用できません。
法定後見の場合、親族などが申し立てをして裁判所が後見人を選任できるので、本人に意思能力は不要です。認知症などが進行して本人が寝たきり状態となっても法定後見なら利用できます。
2-6.後見人の権限
法定後見と任意後見では、後見人に与えられる権限も異なります。
法定後見の場合、後見人の種類にもよりますが、法律によって取消権や代理権、同意権が認められます。
一方、任意後見の場合には、どのような事柄を委任するかは本人と任意後見人の契約によって定めます。任意後見人に同意権や取消権はありません。
第三者による財産管理が必要な場合、状況に応じて法定後見や任意後見を使い分ける必要があります。千葉県で後見制度のご利用を検討されている場合、お気軽に秋山慎太郎総合法律事務所までご相談ください。
【労働】残業代請求の推定計算とは
残業代を請求しようとしても、具体的にいくらの残業代が発生しているのか正確に算定できないケースが少なくありません。労働者側には残業代を計算するための資料が十分に揃っていないケースが多いからです。
そんなときには「推定計算」を行って企業側へ請求する残業代を算定できることもあります。
この記事では推定計算とは何か、残業代の証拠がないときにどのように対応すればよいのか弁護士が解説します。
1.未払い残業代の立証は労働者側がしなければならない
未払い残業代を請求するには残業代を計算しなければなりません。
訴訟になると、残業代の金額も労働者側が証明する必要があります。裁判では「証拠のないことは認められない」ので、労働者側が残業代を立証できなければ、裁判に負けてしまうのが原則です。
残業代の計算で必須となるのが残業代の証拠です。たとえばタイムカードやシフト表、パソコンのログインログオフ記録などが証拠になりえます。
残業代の立証ができないケースが多い
ただし現実的に労働者側が残業時間を証明するのは簡単ではありません。
たとえばタイムカードやシフト表、作業報告書などは通常、会社が把握しているでしょう。
会社がタイムカードなどの証拠を労働者側へ提示するとは限りません。
またタイムカードに全ての勤務時間が正確に打刻されているとも限りません。
パソコンのログインログオフ記録についても、会社が労働者へ貸与していたパソコンの場合には労働者が入手できないケースが多いでしょう。
そうなると、労働者側による残業時間の立証が困難になってしまいます。
そんなときには残業代の推定計算が認められる場合があります。
2.残業代の推定計算とは
残業代の推定計算とは、正確に証明できない残業時間について他の事情から推定を及ぼし、残業代を計算する方法です。
合理的な理由がないにもかかわらず、企業側が容易に提出できると考えられる計算資料を提示しない場合には、公平の観点からして推定計算が認められる可能性があります。
労働者側が十分な証拠を持っていなくても、推定計算によって残業代が認められる事例は珍しくありません。
手元に十分な証拠が揃っておらず企業側が非協力的な態度をとっていても残業代請求できる可能性はあります。あきらめる必要はありません。
3.推定計算の具体的な方法
残業代の推定計算の方法は、事案によって異なります。
たとえばタイムカードがある場合とない場合でも異なりますし、タイムカードがあっても正確に打刻されていない場合にはまた対応が異なってきます。
参考として、タイムカードなどの証拠が存在する月としない月があった事案において、以下のような計算方法がとられた裁判例があります(東京地裁平成23年10月25日)。
このようにして、タイムカードなどの証拠がない月や、タイムカードがあっても打刻が不十分な月についても残業代が認められました。
4.残業代の証拠がなくてもご相談ください
確かに残業代の証明は労働者側の義務ですが、場合によっては公平性の観点から残業代の推定計算が認められる可能性があります。ただしその場合でも、計算方法は合理的でなければなりません。
専門知識がなければ妥当な方法による推定計算は困難でしょう。
千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者の支援にも積極的に取り組んでいます。残業代請求でお悩みがありましたら、お手元に残業代の証拠が揃っていなくてもお気軽にご相談ください。
【借金】自己破産の「免責不許可事由」とは
自己破産をしても、必ず免責してもらえるわけではありません。
自己破産には「免責不許可事由」があるからです。
免責不許可事由に該当する場合、借金などの負債が免除されずにそのまま残ってしまう可能性もあります。
今回は自己破産の免責不許可事由について解説しますので、これから破産しようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
1.免責不許可事由とは
免責不許可事由とは、該当すると免責を受けられなくなる一定の事情です。
免責とは、借金などの負債の支払義務をなくしてもらえる決定をいいます。自己破産をしても免責してもらえなかったら、借金がそのまますべて残ってしまうので意味がありません。
免責不許可事由に該当すると、せっかく自己破産を申し立てても借金が免除されない可能性があるので要注意です。
2.免責不許可事由に該当する事情一覧
具体的にどういったケースで免責不許可事由に該当するのか、みてみましょう。
- 破産者を害する目的で財産を減少させる
- 破産手続きの開始を遅延させる目的で不利益な条件で債務を負担する、クレジットカードなどで現金化をする
- 特定の債権者にだけ弁済する、担保を提供する
- 浪費やギャンブルをする
- 支払い能力や意思がないのにあるような素振りを見せて相手を騙して借り入れをする
- 財産隠しをする
- 裁判所へ虚偽の報告をする
- 管財人の業務を妨害する、協力しない
- 7年以内に免責許可を受けている
たとえばパチスロや競馬などのギャンブルで大きな借金を作ってしまった場合、免責不許可事由に該当して免責してもらえない可能性があります。
3.裁量免責について
免責不許可事由があっても、必ず免責してもらえないというわけではありません。
現実には「裁量免責」によって免責してもらえるケースが多数です。
裁量免責とは、裁判官の裁量によって免責を認めることをいいます。
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由があっても、裁判官が「この人は更生できる可能性が高い」と判断し、裁量免責してもらえれば、借金の返済義務はなくなります。
裁量免責してもらえる割合は高い
免責不許可事由があっても裁量免責してもらえるケースはどのくらいの割合なのでしょうか?
毎年、自己破産をして最終的に免責を受けられるケースは全体の90%を越えており95%を超える年もあります。
この中には当然、免責不許可事由のある方が多く含まれます。
こういった事情からすると、現実には免責不許可事由があってもほとんどのケースで免責を受けられているといえるでしょう。当事務所で取り扱った事案でも、免責不許可事由があってもほとんどの事案で裁量免責を受けられています。
4.管財事件になる可能性が高い
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合、自己破産の手続きが「管財事件」になる可能性が高くなります。
管財事件とは、破産管財人が選任されて裁判所で債権者集会が開かれる破産手続きです。
免責不許可事由のある方の場合、本当に裁量免責してよいか判断するために破産管財人が観察をするのです。同時廃止より複雑で時間も長くかかります。
破産管財人が選任されると予納金も高額になるなど、破産者に負担が掛かる可能性があります。
管財事件になってしまうことは、免責を受けるためにやむを得ないといえるでしょう。
5.裁量免責を受けるために
免責不許可事由が合っても裁量免責を受けるには、誠実な態度で破産手続きに臨む必要があります。反省の態度をしっかりと示し、問題行動を二度と繰り返さないことを誓いましょう。
裁判所や管財人の指示にもきちんと従う必要があります。
千葉の秋山慎太郎総合法律事務所では、借金問題の解決に力を入れて取り組んでいます。
免責不許可事由があっても免責決定を勝ち取ってきた実績がありますので、安心してご相談ください。
【労働】管理職の残業代請求について
管理職の方が残業代を請求しようとすると、企業側から「管理職には残業代が出ない」と言われてしまうケースが多々あります。
しかし管理職だからといって残業代が出ないわけではありません。
会社に拒否されても請求できるケースは多いので、あきらめる必要はありません。
この記事では管理職の残業代請求について解説します。店長やマネージャー、部課長職などで残業代請求を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
1.管理監督者と残業代
マネージャーや店長などの管理職の方が会社へ残業代を請求した場合、断られる理由はたいてい「管理監督者に該当するため」です。
管理監督者とは、労働基準法に規定されている言葉で「監督若しくは管理の地位にある者」と表現されています。
そして、管理監督者の場合には時間外労働の割増賃金などの規定が適用されません。
労働基準法41条2号に規定があります。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
労働基準法上の管理監督者とは「経営者側と一体となって労働条件について裁量を持ちふさわしい権限を持ち待遇を受けているもの」を意味すると考えられています。
管理監督者に該当する場合、割増賃金などの規定が適用されないので「残業代を請求できない」といわれるのです。
2.管理職=管理監督者ではない
一般には「管理職=管理監督者」と考えられているケースが多いのですが、必ずしもそうとはいえません。労働基準法上の管理監督者といえるには、自分の出勤時間について裁量を持ちそれなりの待遇を受けていて、経営者と一体といえるような職務権限を有している必要があります。
管理監督者に該当するかどうかの判断は、名称や肩書き、就業規則の定めなどにとらわれず、実態に即して客観的に行われるべきです。
単に「店長」や「マネージャー」「課長」などの役職名がついていても、実態として経営者と一体になっているといえなければ労働基準法上の管理監督者にはなりません。
労働基準法上の管理監督者でない限り、管理職であっても一般の労働者と同様に時間外労働の割増賃金等を含めた残業代請求ができます。
3.管理監督者と認められる要件
では労働基準法上の管理監督者となるためにはどういった条件を満たす必要があるのでしょうか?以下で管理監督者と認められる要件をみてみましょう。
- 経営者と一体性を持つ職務権限を有している
- 自分の出勤退勤時間について、自由裁量が認められている
- 地位にふさわしい待遇を受けている
上記を満たさない限り、名称のみが管理職となっていても労働基準法上の管理監督者になりません。
管理職が管理監督者にならないケースの例
- 経営会議に出席したことがない
- パートやアルバイトなどの採用権限がない
- 部下の人事考課に関する権限がない
- 遅刻や早退をすると減給対象になる
- 長時間労働を強いられている
- 給与を時給換算するとパートやアルバイト従業員と変わらない
- 基本給や役職手当が不十分
上記のような場合、名ばかり管理職であって管理監督者にはならない可能性があります。
4.管理監督者と残業代
労働基準法上の管理監督者に該当する場合でも、深夜労働をすると割増賃金を請求できます。
管理監督者だからといって残業代請求が一切できないわけではありません。また有給休暇を取得することも可能です。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では労働者側の法的サポートも取り扱っております。管理職となって残業代を払ってもらえなくなった方などがおられましたら、お気軽にご相談ください。
【相続】遺言書を作成した方が良いケース
遺言書を作成すると、遺産相続トラブルを防止しやすくなります。
ただ、いつのタイミングで遺言書を作成すれば良いのかわからない方も多いでしょう。
この記事では遺言書を作成した方が良いケースについて、解説します。
遺言書を作成しようかどうか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
1.相続分を指定したい
特定の相続人に遺産を多めに渡したいなど、相続分を指定したい場合には遺言書が必要です。遺言書がなかったら、法定相続分に応じて遺産が分配されてしまうからです。
たとえば長男にすべての財産を受け継がせたい場合などには、必ず遺言書を作成しましょう。
2.特定の財産を特定の相続人へ相続させたい
自宅不動産など、特定の財産を特定の相続人へ相続させたい場合にも遺言書を作成しましょう。遺言書がなかったら、相続人たちが自分たちで話し合って遺産相続の方法を決めます。その際、誰がどの財産を相続するかは相続人たちが決めるので、被相続人は決められません。
遺言書があれば特定の財産の相続方法まで指定できるので、希望があれば遺言書を作成しておくべきです。
3.相続人以外の人に遺贈したい
相続人以外の人に財産を受け継がせたい場合にも遺言書が必要です。
遺言書がなかったら、財産は法定相続人にしか受け継がれません。たとえば長男の嫁やお世話になった人などに遺産を受け継がせたい場合、必ず遺言書を作成して「遺贈(遺言によって財産を受け継がせること)」しておきましょう。
4.内縁の配偶者がいる
内縁の配偶者がいる場合にも、必ず遺言書を作成しておきましょう。
内縁の配偶者には相続権が認められないからです。自宅不動産や預金などが引き継がれないので、死亡するとたちまち配偶者の生活が脅かされる可能性もあります。
内縁の配偶者の生活を守るため、お互いが元気なうちに自宅や預金などの財産を遺贈する内容の遺言書を作成しておくようおすすめします。
5.天涯孤独
天涯孤独で親族がいない方の場合にも、遺言書を作成するようおすすめします。遺言書がなかったら、財産は最終的に国のものになってしまいます。
お世話になった人に遺贈したり自分が関連する団体、慈善団体などに寄付したりして有用な方法で財産を使ってもらいたい場合、遺言書の作成が必須となります。
6.事業承継のケース
経営者の方が事業承継を検討している場合にも、必ず遺言書を作成しておきましょう。
遺言書で後継者へ財産を集中させておかないと、後継者による経営の引き継ぎがスムーズに進まない可能性が高まります。
ただし他の相続人による遺留分侵害額請求の可能性にも配慮しなければなりません。
遺留分侵害額請求を避けられない場合には、後継者へ死亡保険金を受け取らせて遺留分侵害額の支払資金にするなど対策しましょう。
7.生前贈与した相続人がいる
生前贈与した相続人がいる場合にも、遺言書を作成しておくべきです。
生前贈与した相続人がいると、その相続人には「特別受益」が認められます。特別受益がある場合、特別受益の持戻計算を行ってその相続人の取得分を減らせます。
ただ特別受益の持戻計算を行うべきかや、どのようにして持戻計算をすべきかなどの点で相続人がもめてしまうケースが少なくありません。
遺言書であらかじめ遺産分割の方法を指定しておけば、特別受益の持戻計算の問題で相続人たちがもめる必要はありません。遺言書で特別受益の持戻計算を免除することも可能です。
8.死後に子どもを認知したい
生前に子どもを認知するとトラブルが予想されるので、死後に子どもを認知したい場合にも遺言書を作成しましょう。なおその場合、遺言執行者が必要になります。弁護士などの信頼できる人を遺言執行者にしておくと良いでしょう。
千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所では遺産相続の案件に積極的に取り組んでいます。遺言書作成のサポートも承りますので、お気軽にご相談ください。
【借金】債務整理したときの仕事への影響
「債務整理をすると、仕事を続けられなくなりませんか?会社に知られませんか?」
といったご相談を受けるケースがあります。
債務整理をしても、ほとんどのケースで仕事に影響はありません。
従来通り、仕事を続けられますし会社に知られない事例がほとんどです。
今回は債務整理をすると仕事にどういった影響が及ぶのか、注意点も含めて解説します。
1.債務整理をしても会社に知られない
債務整理をしても、会社に知られるケースはほとんどありません。
債務整理が会社に通知される仕組みがないからです。
裁判所からも債権者からも弁護士からも会社へ連絡はしません。
このことはすべての債務整理において共通で、任意整理でも個人再生でも自己破産でも会社に知られる心配はほとんどありません。
2.会社に知られるケースとは
ただし会社から借り入れをしている場合には、例外的に会社に債務整理を知られる可能性があります。
任意整理であれば会社からの借入れ以外を整理すれば会社に知られることはありません。しかし他の債務整理の場合、整理の対象にせざるを得ないからです。
つまり個人再生や自己破産の場合、債権者を全員対象にしなければなりません。
会社を外すことができず、会社に対しても債権調査票を送るなど債権者としての扱いをしなければならないので、会社に知られる結果となります。
また個人再生や自己破産をするときに退職金証明書を会社に請求すると、理由を聞かれて債務整理を感づかれるケースもあります。「債務整理をするため」と説明するともちろん会社に知られますし、うまく説明できずに感づかれるケースもあるでしょう。
会社に退職金証明書を請求するときに債務整理を知られなくなかったら「住宅ローン審査のためなどに必要」などと説明すると良いでしょう。
3.債務整理を知られても解雇されない
会社に債務整理を知られたくない方は、「会社に知られたら解雇されるのでは?」と心配しているケースもよくあります。
結論的に、債務整理を会社に知られても解雇される心配はほとんどありません。
債務整理は法律上の解雇理由にならないからです。
債務整理はプライベートな事情であり、仕事とは基本的に関係ありません。
債務整理したからといって解雇された場合には、解雇無効を主張して争うことも可能です。
万一自己破産をして解雇されてしまったら、お早めに弁護士までご相談ください。
4.自己破産の資格制限とは
自己破産をした場合には「資格制限」によって一定の仕事ができなくなる可能性もあります。
資格制限とは、自己破産の手続き中に一定の資格が制限されることです。
たとえば以下のような資格が制限対象になります。
- 弁護士、司法書士、行政書士、税理士、宅建士などの士業
- 警備員
- 生命保険外交員
- 質屋
- 貸金業者
- 卸売業者
- 旅行業
- 騎手、調教師
成年後見人や遺言執行者の業務もできなくなります。
一方、資格制限に該当しない職種の場合には自己破産をしても問題なく仕事を続けられます。たとえば以下のような仕事は制限対象になっていないので安心しましょう。
- 医師や看護師、薬剤師などの医療職
- 地方公務員や国家公務員などの一般の公務員
- 銀行員
資格制限を受ける期間
資格制限を受けるのは、いつからいつまでなのでしょうか?
多くの場合、「破産手続開始決定時から免責決定が確定するまで」の期間です。
同時廃止の場合には2~3か月、管財事件の場合で6か月程度が標準的です。
その期間を過ぎたらまた、元のように制限されていた仕事を再開できます。
資格制限を受けても永遠に仕事が制限されるわけではないので、過剰に心配する必要はありません。
秋山慎太郎総合法律事務所では債務整理に力を入れて取り組んでいます。会社やご家族に知られずに手続きすることも可能ですので、まずは一度ご相談ください。
【企業・顧問】就業規則とは?作成義務があるケースや罰則についても解説!
一定以上の規模の会社の場合、就業規則を作成しなければなりません。
作成しないと罰則が適用される可能性もあるので、違反状態にならないよう要注意です。
この記事では就業規則とは何か、どういった場合に作成義務があるのか、トラブル予防に効果的な就業規則の定め方について弁護士が解説します。
法律を守って従業員との労働トラブルを予防したい場合には、ぜひ参考にしてみてください。
1.就業規則とは
就業規則とは、従業員の労働条件や社内規律を定めたルールです。社内で通用する法律のようなものと理解すると良いでしょう。
いったん就業規則に定めると、社内ではその内容が有効になります。従業員側も会社側も違反できません。ただし就業規則の中でも法律に反する部分については無効になります。
また「就業規則」という名称でなくても就業規則として取り扱われるケースがあります。
たとえば賃金規程や退職金規程も一種の就業規則です。
2.就業規則の作成義務について
一定以上の規模の企業の場合、就業規則の作成が義務になります。
労働基準法では「常時10人以上の従業員を雇用する企業」については就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出なければならない、と規定されています(労働基準法89条)。
就業規則は事業所ごとの作成や備え付けが必要であり、いくつかの支店や営業所のある企業では事業所ごとに作成しなければなりません。「常時10人以上」かどうかについても「事業所ごとにカウント」されます。
また従業員にはパートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用の労働者も含めてカウントしなければなりません。一方で、業務委託の取引相手や派遣労働者、繁忙期の臨時社員などはカウントしません。
2-1.就業規則の義務がない場合も作成すべき
事業所内に常時10人以上の従業員がいない場合、就業規則を作成する必要はありません。
しかし実際には労働基準法上の作成義務がなくても就業規則を作成すべきです。
就業規則があると、社内の規律が明確になりますし、従業員に規律違反の行動があれば適正に対応できるからです。
就業規則があると社内のトラブルを防止できるメリットがありますし、万一トラブルが起こっても最小限に抑える効果があります。
2-2.就業規則は作成だけでなく届出が必要
就業規則作成義務のある事業所では、作成した就業規則を労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。
また従業員に周知する必要もあります。事業所内の見やすい場所に設置するか、従業員がいつでもアクセスできる状態にしておきましょう。
2-3.就業規則作成義務違反の罰則
就業規則の作成義務があるにもかかわらず作成しなかったり届け出をしなかったりすると、「30万円以下」の罰金が科される可能性があります。
3.就業規則の作成方法
3-1.記載事項について
就業規則には必ず盛り込まねばならない絶対的必要記載事項があります。
- 始業時刻と終業時刻
- 休憩時間、休日、休暇
- 労働者を2組以上に分けて交代制で就業させる場合、就業時転換に関する事項
- 賃金や計算方法、支払方法
- 賃金の締切りや支払時期
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項、解雇事由
また該当する場合に盛り込まねばならない相対的必要記載事項もあります。
- 退職金制度がある場合には退職金に関する事項
- 賞与や最低賃金額がある場合、その事項
- 従業員に食費や作業用品などの負担をさせる場合、それに関する事項
- 安全衛生に関する定めをおく場合、それに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合の内容
- 災害補償や業務外の傷病扶助に関する定めをする場合、それに関する事項
- 表彰や制裁の定めをおく場合、種類や程度に関する内容
- その他従業員に適用される定めをおく場合の内容
その他については任意的に盛り込める「任意的記載事項」となります。
3-2.効果的な就業規則の作成方法
就業規則を作成する場合、自社の状況に応じたものとしなければなりません。モデル書式もありますが、そのまま適用するのはおすすめではありません。
書式を利用しながらも、自社の個性に応じたものにアレンジして定めましょう。また法改正があればアップデートも必要です。
就業規則を定めるときには法律の専門家に相談しておくと安心です。作成・改訂の際には千葉県の秋山慎太郎総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
【労働】残業代の証拠の集め方
残業代を請求する際には証拠が必要です。
どのような証拠が必要なのか、証拠の集め方も合わせて解説します。
1.残業代請求で証拠が必要な理由
残業代請求する際には事前に証拠を集めておく必要があります。
証拠がないと、会社側から「残業は発生していない」と反論されてしまうためです。
また資料がないと、残業代を正確に計算もできません。
残業代請求をしようと考えたなら、すぐに証拠集めを始めましょう。
2.残業代請求の証拠の種類
残業代請求の証拠には以下のような種類があります。
- 給与額などの労働条件を示す証拠
- 残業の指示を受けた証拠
- 残業時間を示す証拠
以下でそれぞれがどのようなものか、具体例を交えてお伝えします。
3.給与額などの労働条件を示す証拠
3-1.労働条件がわかる証拠が必要な理由
まずは給与額を始めとする労働条件がわかる証拠を集めなければなりません。給与額がわからないと、1時間あたりの単価を計算できないので残業代の計算もできません。残業代を計算するには、以下のような事情が明らかになっている必要があるからです。
- 基本給の金額
- 各種手当の性質や金額
- 出勤日
- 給料日
- 1日の所定労働時間
3-2.労働条件を示す証拠の種類
労働条件を示す証拠には以下のようなものがあります。
- 求人票
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 就業規則、給与規程
- 給与明細書
必ずしもすべてが必要なわけではありませんが、なるべく多い方が有利に交渉を進めやすく計算もしやすくなります。できるだけたくさんの資料を集めましょう。
4.残業の指示を受けた証拠
次に、上司などから残業の指示を受けた証拠を集めなければなりません。
指示がないのに勝手に残業しても、残業代を請求できない可能性が高いからです。
ただし指示の方法は黙示でもよく、必ずしも明示的に「残業するように」と告げられていなくてもかまいません。たとえば従業員が労働時間外に働いているのを会社が知りつつ状況を放置した場合、黙示の指示があったとして残業に該当する可能性があります。
残業の指示を受けた証拠としては、以下のようなものが典型です。
- 上司から残業を指示されたメールやチャット画面、指示メモや録音データなど
- 上司へ残業ご相談に業務内容や仕事をした時間を報告するメールやメモなど
5.残業時間を示す証拠
残業代請求をするなら「残業時間を証明する証拠」が必須です。
どのくらい残業したかわからないと、残業代の計算もできません。会社側としても「根拠のない請求」として応じない可能性が高くなるからです。
残業時間を証明する証拠には以下のようなものがあります。
- タイムカード
- タコグラフ
- 業務日誌
- 営業日報
- PCのログイン、ログオフ記録
- 業務メールの送信記録
- 自分で作成したメモ
- 手帳への書き込み
- 会社から帰宅する際に利用したタクシーの領収証
6.残業代の証拠を集める手順
残業代の証拠を集める際には、以下のような手順で進めましょう。
6-1.タイムカードや日報を確認する
まずは自分でタイムカードや日報を確認しましょう。可能であればコピーすると良いでしょう。
6-2.就業規則や給与規定を確認する
次に会社へ備え付けてある就業規則や給与規定などを確認しましょう。これらについてもコピーをとるか、メモをして記録しましょう。
6-3.労働時間や業務内容を自分でメモする
証拠を集めにくい場合、自分で丁寧にメモした記録も証拠になります。
毎日の残業時間を手帳などに記入して残しましょう。
6-4.会社に資料の開示を求める
手元に残業代の証拠を集められない場合、会社側に開示を求めて集める方法があります。
6-5.裁判所の証拠保全を利用する
会社が任意に資料を開示しない場合、証拠保全という手続きを使って会社側の資料を集められる可能性があります。
残業代でどういったものが証拠になるかはケースによっても異なります。手元に証拠がなくても残業代の推定計算ができるケースもあります。
弁護士が残業代請求のサポートをしますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。
【借金】家族に知られずに債務整理できるのか?
「債務整理はしたいのですが、家族に知られたくありません」
「夫や妻に知られずに債務整理できますか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
結論的に、ご家族に知られずに債務整理できます。ただし知られてしまうパターンがあるので、そういったパターンにはまらないように注意しなければなりません。
この記事では家族に知られずに債務整理する方法を弁護士が解説します。
1.債務整理を家族に通知される仕組みはない
家族に知られずに債務整理する方法はあります。現に多くの方がご家族に知られないまま債務整理を終えています。任意整理や個人再生だけではなく、自己破産を家族に知らせないこともできます。離れて暮らす親などの親族はもちろん、同居の配偶者に知られずに債務整理することも可能です。
債務整理を家族に知られないのは、端的に債務整理していることを家族に通知する仕組みがないからです。
自己破産などの債務整理をしても家族に知られるわけではないので、まずは安心しましょう。
2.家族に知られるパターン
債務整理が家族に知られるパターンもあります。以下でどういったケースなのかみてみましょう。
2-1.家族が連帯保証人になっている
1つはご家族が連帯保証人や保証人になっているケースです。
連帯保証人や保証人のついている借金を債務整理すると、債権者は連帯保証人などへ請求します。
すると家族は当然債務整理に気づくでしょう。こうなったら、同居の親族だけではなく離れて暮らしている親などにも債務整理を知られる可能性が高まります。
家族が連帯保証人や保証人になっていてどうしても債務整理を知られたくない場合には、任意整理を利用しましょう。
任意整理であれば、対象とする債権者を選べます。
連帯保証人や保証人のついている借金を外して任意整理すれば、連帯保証人などへ債務整理を知られずに済むのです。
任意整理でどうしても解決できない場合には、個人再生や自己破産することについてご家族に事前に伝えて、対処方法を話し合っておく必要があるでしょう。
2-2.家族に書類を見られる
債務整理が家族に知られるパターンの2つ目は、債務整理関係の書類を見られるケースです。
裁判所や債権者などから自宅へ届いた書類を見られて不審に思われ、家族に債務整理を知られてしまいます。
書類を見られないようにするには、弁護士に債務整理を依頼するのがベストです。
弁護士が債務整理に対応すると、債権者からの書類は全て弁護士事務所に届き、ご自宅には届かなくなるからです。
あとは弁護士からの書類にさえ気をつければ、債務整理を知られる心配はなくなるでしょう。
2-3.家族の通帳や保険証書などが必要になる
家族に債務整理を知られる3つ目のパターンは、家族の通帳や保険証書などが必要になるケースです。
たとえば家族名義になっていても破産者本人のお金が入金されている通帳や破産者のお金で保険料を支払った保険などがあると、裁判所や管財人から提出を求められる可能性があります。
2-4.家計収支表の作成で協力を求める
個人再生や自己破産をするときには、家計収支表を作成して提出しなければなりません。
普段家計管理をしておらず配偶者に任せている方の場合、家計収支表を作成するときに配偶者の協力が必要となるでしょう。
そのときに不審に思われて債務整理を知られる可能性があります。
3.借金を放置していると家族に知られる可能性が高くなる
家族に知られたくないからといって借金を放置するのはおすすめではありません。
借金を放置するといつまでも苦しい状況から逃れられませんし、家族に知られるリスクもより高くなります。
いずれは債権者からたくさんの督促状が届き、家族に見られて発覚してしまうでしょう。
それよりは早めに弁護士に依頼して債務整理に取り組むことが、スムーズに債務整理を成功させるコツです。
弁護士に債務整理を依頼すると、債権者からの督促が止まります。借金を滞納しそうで心配な方も、まずは一度弁護士までご相談ください。
【労働】残業代の計算方法と請求方法
残業しているのに残業代が不払いになっている場合、会社へ未払いの残業代を請求できます。泣き寝入りする必要はないので、きちんと計算して請求しましょう。
この記事では残業代の計算方法や請求する手順を解説します。
日々忙しく残業しているにもかかわらず残業代を払ってもらっていない場合、ぜひ参考にしてみてください。
1.残業代の計算方法
まずは残業代の計算方法をみてみましょう。
1-1.残業代の計算式
残業代は、以下の計算式によって計算します。
- 未払い残業代=1時間あたりの単価×残業時間×割増賃金率
1-2.1時間あたりの単価について
1時間あたりの単価は、以下のように計算します。
- 1時間あたりの単価=(基本給と諸手当)÷(1か月の所定労働時間)
基本給と諸手当について
1時間あたりの単価を計算する際には、基本給だけではなく諸手当も含んで計算します。
ただし家族手当、通勤手当、子女教育手当、住宅手当などは含みません。
所定労働時間とは
所定労働時間とは、会社がそれぞれ定めている労働時間です。たとえば1日7時間で週5日の勤務なら1週間の所定労働時間は35時間になります。
1か月の所定労働時間は、以下のようにして求めます。
- 1か月の所定労働時間=(月の日数-会社が定める所定休日の日数)×1日の労働時間
1-3.残業時間について
残業時間は、実際に残業した時間です。タイムカードや業務日報、手帳などの資料で確認しましょう。
1-4.割増賃金率について
割増賃金率とは、残業した時間によって適用される割増率です。
労働基準法上、最低でも以下の割増賃金率を定めなければならないとされています。
残業の種類 |
割増賃金率 |
時間外労働(法定労働時間を超えて働いた場合) |
25% |
時間外労働(1か月の残業時間が60時間を超えた場合) ただし中小企業の場合、2023年3月末まで猶予される※ |
50% |
深夜労働(午後10時から午前5時まで働いた場合) |
25% |
休日労働(法定休日に労働した場合) |
35% |
深夜に法定労働時間を超えて働いた場合 |
50% |
1か月に残業時間が60時間を超えていて深夜労働した場合 |
75% |
休日に深夜労働した場合 |
60% |
1か月に60時間を超えた場合、2023年3月31日までは中小企業の場合、割増率を50%にする必要がありません(25%で済みます)。ただし2023年4月1日からは中小企業でも大企業と同様に割増賃金率を50%にしなければなりません。
1-5.残業代計算の具体例
1時間あたりの単価が3000円の人が、毎日午前8時から午後8時まで(休憩時間1時間)の毎日11時間はたらき、勤務日数が20日だったケース。所定労働時間は1日8時間。
この場合、1時間あたりの単価は3000円です。
残業時間は3時間×20日=60時間になります。
割増賃金率は25%なので、残業代は以下のようになります。
3000円×60時間×1.25=225000円
このケースでは労働者は会社に対し、225000円の残業代を請求できます。
2.残業代を請求する手順
残業代を計算できたら、会社へ請求手続きを進めましょう。
以下で残業代を請求する手順をお伝えします。
STEP1 証拠を集める
まずは残業代の証拠を集めましょう。タイムカードや業務日報、パソコンのログインログオフ記録などが証拠になります。
STEP2 残業代を計算する
証拠が揃ったら残業代を計算しましょう。
STEP3 内容証明郵便で残業代の請求をする
計算ができたら、会社へ内容証明郵便を使って残業代の請求書を送りましょう。
STEP4 交渉する
会社と交渉して残業代の支払い金額などを決定します。
STEP5 合意して異支払いを受ける
合意できたら合意書を作成して、残業代の支払いを受けましょう。
STEP6 支払われない場合、労働審判や労働訴訟を起こす
会社が残業代の支払いに応じない場合には、労働審判や労働訴訟を起こして残業代を請求しましょう。
残業代を請求するには、正確に計算をして会社とも交渉しなければなりません。弁護士によるサポートが必要となります。お困りの方はお気軽にご相談ください。
« Older Entries Newer Entries »