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【相続】代襲相続とは

2020-01-15

一般的に、遺産というのは亡くなった人の妻や子どもに相続されます。しかし、不幸にして親よりも先に子どもが亡くなってしまうというケースも稀にあります。
そういう場合は、相続人になるはずであった子どもの子ども、つまり被相続人から見て孫にあたる人物が相続人になるという、いわゆる「代襲相続」が発生します。
ここでは代襲相続についてご紹介します。

 

代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人が亡くなっている場合などに、その相続人の子どもが相続人になることをいいます。

被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合は、孫が相続人になります。また、その孫も亡くなっている場合には、ひ孫が相続人になり、これを再代襲相続と言います。

相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合、甥や姪に代襲相続することはありますが、甥や姪が亡くなっている場合には、それ以上の再代襲相続はありません。

代襲相続の範囲はどのようになっているのでしょうか。

代襲相続の範囲

まずは相続人の範囲を見てみましょう。

(被相続人から見た続柄)

第一順位の相続人

子ども

第二順位の相続人

父母

第三順位の相続人

兄弟姉妹

相続は先ずは第一順位の人、第一順位の人が誰もいなければ第二順位の人、第二順位の人が誰もいなければ第三順位の人という順におこなわれます。

また、配偶者は常に相続人になります。したがって、被相続人に子どもがいる場合は、相続人は妻と子どもということになります。

第一順位の相続人がいない場合に、第二順位である父母と妻が相続人なります。

第二順位の父と第三順位の弟といった具合に、違う順位の人同士が同時に相続人になることはありません。

 

では代襲相続人の範囲です。

・第一順位の相続人(子ども)の子ども(孫)、更にその子ども(ひ孫)

第一順位の相続人(子ども)が亡くなっている場合は、孫が代襲相続人に、孫が亡くなっている場合はひ孫が再代襲相続人になります。このように第一順位の相続人に関しては直系の子孫が相続人の地位を継承して行きます。

・第三順位の相続人(兄弟姉妹)の子ども(甥、姪)

第三順位の相続人(兄弟姉妹)が亡くなっている場合は、その子ども(甥、姪)が代襲相続人となります。しかし、さらに甥、姪も亡くなっている場合は、もはや再代襲相続はおこなわれません。被相続人と甥や姪の子どもとでは、関係があまりにも薄いため、いわゆる「笑う相続人」を生み出さないという政策的配慮といわれています。

・被相続人の養子の子ども

被相続人の養子は相続人になります。その養子に「養子縁組をしたのちに生まれた子ども(被相続人から見て孫)」がいた場合は、その子ども(孫)は代襲相続することができます。

しかし、「養子縁組前に生まれた子ども(被相続人からみると、やはり孫)」の場合は、その子ども(孫)は、直系卑属(ひぞく)ではないため代襲相続はできません。

・被相続人の子どもの未亡人(すでに亡くなっている相続人の配偶者)

代襲相続人にはなりません。

 

代襲相続は、相続人が亡くなっている場合以外にも、相続人が被相続人の遺言書を破棄したり隠匿したりして相続人資格を剥奪される「相続人欠格」、被相続人が自分を虐待した推定相続人に相続させないよう家庭裁判所に請求することによって相続人資格を剥奪される「相続人廃除」などで、相続人が欠けた場合にも適用されます。

【相続】遺言書にも種類がある? 3種類の遺言書の特徴を知っておこう

2019-11-12

遺言書といえば、ドラマなどで一家の当主が亡くなったあと、弁護士が現れて遺言書を公開するというシーンが思い浮かびます。ドラマではあまり描かれることがありませんが、実は遺言書には種類があり、それぞれに特徴があるのをご存知でしょうか。

今回は、遺言書の種類と特徴について見ていきましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、自分で作成した遺言書のこと。紙とペンと印鑑さえあれば作成できるので、費用がほとんどかかりません。また、誰とも相談せずに作成すれば、遺言の秘密も守られます。書き直すのも自由です。なお、方式については、次の記事をご参照ください。相続法改正 自筆証書遺言の方式の緩和について

一方で、専門家のチェックを受けていないので、不備があれば無効になる可能性もあります。

紛失や隠匿、偽造、死後どうやって相続人たちに遺言の存在を知らせるか、という点も自筆証書遺言を作る際の問題です。また、相続時には家庭裁判所で検認を受ける必要があります。裁判所では形式のみチェックをし、内容については触れないので、後に内容について争われることもあり得ます。

(なお、令和2年7月10日から法務局で「遺言書保管制度」が開始されます。こちらを利用すれば裁判所の「検認」は不要となります。また、紛失や相続人への通知の問題は解消される見込みです。)

費用をかけずに遺書を残したい人、大きな財産がない人、相続人の仲が良く遺産相続でもめそうにない場合などは自筆証書遺言が向いていると言えます。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に作成してもらい、公証人役場に保管してもらう遺言書のことです。

公証人は元判事や元検事など、長年法律に関わってきた人が法務大臣によって任命される公務員ですから、法律のプロです。そのプロにきちんと確認してもらって作成するので、遺言書に不備があるという事態にはならず、法的には最も安全と言えます。また原本は公証人役場で保管されるため、改ざんや紛失の危険性がないのがメリット。裁判所の検認も不要です。

しかし、作成には時間と費用がかかること、相続に関わらない成人2名を証人にしなければならないため、遺言の内容を第三者に知られてしまうというデメリットもあります。

とは言え安全で確実な方法です。実際、3つの遺言のうち最も多く使われているのが、この公正証書遺言になります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは自分で作成した遺言書に封をした状態で公証人役場に持っていき、遺言書を作成したということを証明してもらう遺言書のことです。

公証人のほかに証人2名が必要になりますが、封をした状態で持っていくので遺言書の内容に公証人や証人はタッチしていません。そのため、遺言の秘密は守られるわけですが、一方で法律上の要件を満たしているかなどのチェックをしてもらえないので、不備があると無効になる可能性があり注意が必要になります。

自筆証書遺言と同様に、相続時には家庭裁判所での検認も必要です。

遺言の中身は秘密にしておきたいが、遺言の存在そのものの証明はしてほしいという方に向いている遺言書になります。

 

3つの遺言書のうち、一番多いのが公正証書遺言、次に自筆証書遺言です。3番目の秘密証書遺言は年間100件程度と少数派です。遺言書を書くことを考えているなら、どのタイプの遺言書で残すかも一緒に考えておきましょう。

【相続】遺産相続トラブルを回避! 知っておきたい予防対策

2019-10-26

遺産相続のトラブルは資産家だけの話ではありません。ごく普通の、一般的な家庭にも起こり得るトラブルです。しかし、こうしたトラブルは事前に対策を立てておくことで回避できるものも多くあります。

そこで今回は、遺産相続トラブルを回避するための予防策についてご紹介しましょう。

遺産相続ではどんなトラブルが多い?

多くの場合、遺産相続のトラブルは「不公平さ」から発生します。

法定相続分どおりに分けるとすると、同居や介護をして最期まで面倒をみた人と、普段は遠くにいて分割協議にだけ姿を現す人が同じ取り分では、前者の立場の人が納得いかないのは当然と言えるでしょう。

また、こうした相続人同士の取り分の不公平感の他にも、特定の相続人が遺産を独り占めしている、両親が相次いで亡くなる二次相続、不動産など分割が難しい遺産の分割協議、婚外子など思わぬ人物の登場など、トラブルのもとはたくさんあります。

遺産相続でトラブルが続出している背景には、もう一つ、遺言書の作成がされていないということがあります。

遺言書がないと、被相続人の死後に相続人たちが話し合って遺産の分け方を決めることになるため、お互いの主張がぶつかり合ってもめることになるのです。

法律で定められている遺産の相続のしかた

遺言で相続の方法について指定されていない場合は、法律に則って遺産を分割することになります。

この取り分も民法に規定されており、被相続人の配偶者が遺産の2分の1を、残り2分の1を子供達が均等に分けます。

相続の順位は、第1順位が子供、第2順位が被相続人の両親、第3順位が被相続人の兄弟姉妹です。

遺言書を作成している場合は、法律のとおりに分ける必要はなく、遺産分割協議をおこなう必要もありません。とはいえ、遺言書があっても事情があってそのとおりに分割することが難しい場合は、相続人同士で遺産分割協議を行うこともできます。

相続トラブルを避ける5つの対策

遺産相続トラブルを起こさないためには、第一に、生前に被相続人と相続人がしっかりコミュニケーションを取っておかなくてはいけません。どのような遺産があり、どのように相続してもらいたいのか、相続人同士も説明を受け、納得しておけばトラブルになりにくいものです。

第二に、遺産の目録を作っておくこと。どのような遺産があるのか把握しておかなくては、どう分けるか話し合うこともできません。

第三に、相続税の対策をしておくこと。相続税は相続人全員で連帯責任を負います。払えない人がいると、一旦他の相続人が負担することになるので、相続税がどういうものなのか、いくら発生するのか確認しておきましょう。

第四に、法定相続人の数の確認。いざ相続というときになって婚外子が発覚するなどの可能性があります。婚外子も認知されていれば実子として平等に遺産をもらう権利がありますので、誰が相続人になるのか調べておきましょう。

第五に、法律上はどのような分け方になるのか、予め知っておくことが有用です。その上で生前に被相続人を交えてよく話し合った方が、思わぬトラブルは回避できるでしょう。

分け方の不公平感がトラブルのもとですから、予めどう分けるか全員で話し合っておくことが肝心です。ここでご紹介したことを参考にして、遺産相続に関しては早いうちから準備しておくようにしましょう。

【相続】婚外子の遺産の取り分はどうなる? 婚外子と相続の関係

2019-07-20

「婚外子(こんがいし)」とは結婚していない男女から生まれた子供のことです。父親から認知されているか、されていないかで相続権の有無が変わってきます。2013年の民法改正により認知されている子の相続分は、嫡出子(ちゃくしゅつし=法律上の婚姻関係がある男女から生まれた子)と同等となりました。

婚外子とは? 相続権が発生する婚外子について確認

結婚していない男女から生まれた子供のことを婚外子、法律用語では「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と言います。未婚のまま生んだ子供や、事情があって入籍をしていない男女の子供がこの婚外子に当たるのです。逆に、入籍している男女から生まれた子供は嫡出子と言います。後に夫婦が離婚して一人親になったとしても、入籍している間に生まれた子供は嫡出子です。

婚外子には父親に認知されているケースと、認知されていないケースが存在します。

父親に認知されているということは、両親は結婚していないけれど「生まれてきた子は父の実子と認められた」ということです。その結果、子供の戸籍にはその父親の名前が載ることになります。法的にきちんと「実の子である」と認められているので、相続の際には他の実子と同じように相続権が発生します。

これに対し、認知されていない婚外子には相続権は発生しません。

婚外子は父親が死去し、相続の話が出て来たときになって突然見つかるケースも少なくありません。父親が家族関係に配慮して秘密のままにしておくからなのですが、遺産分割協議をするためには相続人すべてに協力してもらわなければなりませんので、婚外子のことは必ず知られてしまいます。婚外子を無視しての遺産分割協議は無効となるので注意しましょう。

婚外子の相続分はどうなる?

かつて民法900条では「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。」と規定されていました。そのため、長らく「実子であるのに嫡出子と婚外子の扱いが違うのは憲法違反ではないか」という指摘がされていたのです。

現在では、2013年の最高裁の違憲判決を受けて「ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし」の部分が削除され、婚外子でも認知されていれば嫡出子と同じ扱いを受けられることになりました。

法定相続分は、死去した父親の妻が2分の1、残る2分の1を実子全員で均等に分けることになります。

 

認知した婚外子を秘密にしておくと、相続の際にトラブルになることはよくあります。婚外子であっても被相続人の実の子なのですから、扱いは全員平等になることを知っておきましょう。なお、トラブルを避けるためには、遺言書を作成しておくことが有効です。

【相続】車を相続したらどうなる? 車を相続する際に注意したいこと

2019-07-10

相続財産の中に故人が所有していた車がある場合に注意しておきたい点について、見ていきましょう。

車の相続の流れ

相続が発生すると、被相続人の財産は一旦相続人全員の共有財産となります。その後、遺産分割協議が行われ、誰が何を相続するのかを話し合うことになります。

車も同様に、車の所有者が亡くなれば、その車は一旦相続人全員の共有財産となります。

注意点1 名義変更を行うこと

相続した車は、名義変更をしなくても使用できるので、被相続人の名義のまま、相続人の中の一人がそのまま使っているケースがよくあります。

しかし、名義変更をしないまま長期間放置してしまうと、いざ売ろうとしたときや処分しようとしたときに他の相続人の協力が得られず、書類の取得が難しくなってしまうといったリスクが高くなります。また、もしも相続人の中の一人がそのまま使って人身事故を起こしたりしたら、他の相続人もその車の保有者(共有者)として損害賠償責任を負うことになります。

車を相続したら速やかに名義変更を行うことが大切です。名義変更は必要書類を準備の上、陸運局で行います。

車の所有者欄が故人ではなく自動車販売会社などになっていたら、自動車販売会社に連絡して名義変更に必要な書類を準備してもらっておく必要があります。

注意点2 車にローンが残っている場合の扱い

車にローンが残っている場合、車の名義は使用者ではなくローン会社になっています。このように残ローンがある場合、残ローンはマイナスの遺産として相続人が払わなくてはなりません。

まずはローン会社へ使用者が亡くなったことを伝え、残ローンの返済方法を相談します。

遺産分割協議の結果、車を取得して引き続き使用することになった相続人が、残ローンも引き継ぐ方向で話をするのが一般的です。

誰も車を取得せずに手放す場合は、ローン会社と協議の上、車をローン会社へ返却して精算してもらいます。ローン会社で車を売却してもローンが残る場合には、残ローンは相続人全員で返済しなければなりません。

注意点3 相続人の一人が高額な車を買ってもらっていたら

被相続人名義の車の相続とは異なる話ですが、余談として。たとえば被相続人の生前に長男だけ高額な車を買ってもらっている場合、その分だけ遺産は減っています。その少なくなった遺産を相続人で均等に分けるとなると、高額な車を買ってもらっていた長男だけが得をすることになります。

この場合は、長男の特別受益として、計算上、相続財産に持ち戻した上で、具体的な相続分を計算することが考えられます。詳しくは専門家にご相談ください。

 

相続財産の中に車がある場合、名義変更しないまま放置しておくと売却や処分だけでなく、納税や事故などの際にトラブルになるリスクがあるので注意しましょう。他の相続財産の分割協議が未了でも、車を取得する相続人だけは先に決めて、速やかに名義変更することをお勧めします。

【相続】遺留分の権利が兄弟姉妹に認められていない理由とは?

2019-07-01

遺留分とは?

私有財産制のもとでは、原則として人は自分の財産を自由に処分することができます。この原則は、生前だけでなく、死後にも及ぶとされ、故人は生前に自分の遺産の処分方法を遺言で自由に決めておくことができます。しかし、この原則を貫くと、例えば故人の遺言書に「全財産を友達の〇〇に遺贈する」と書いてあれば、故人の相続人には全く遺産が入らないことになってしまいます。こうなってしまうと、それまで故人の財産で生計を立てて来た遺族は、今後の生活が立ち行かなくなってしまうという不安定な立場に置かれてしまう恐れがあります。

そこで、故人の財産処分の自由と遺族の生活の安定や遺族の財産の公平な分配という相対立する要求を調整するために民法が設けたのが「遺留分」という制度です。

ところでこの遺留分は、相続人となった兄弟姉妹には認められていません。その理由は一般的には次のように説明されています。

【相続関係が最も遠いから】

民法では相続の順位が規定されており、たとえば一家の大黒柱である父親が亡くなった場合、相続の順番の第1位は子供たち、第2位は父親の両親、第3位は父親の兄弟姉妹となります。なお、配偶者である母親は常に相続人になります。つまり、亡くなった人の兄弟姉妹に相続の権利が生まれるのは、亡くなった人に子供や両親がいない場合に限られます。

このように、兄弟姉妹は、相続においては被相続人と一番縁が遠いことになります。また、実際問題としても、兄弟姉妹が生活する上で被相続人の遺産をあてにしているということもあまり考えられないでしょう。そのため、民法は、兄弟姉妹には遺留分を認めなかったと説明されています。

【代襲相続のことを考えなければならないから】

日本では配偶者や直系の子孫が優先されます。相続人になるはずの子供が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、被相続人の兄弟姉妹ではなく、被相続人の孫が相続人になるのです。この制度のことを代襲相続といいます。

もし兄弟姉妹に遺留分があるとすると、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていれば、亡くなった人から更に遠い存在である甥・姪にも遺留分の権利が行くことになりかねません。そこで、甥や姪からの権利主張によって遺言が一部否定されてしまうのは不合理だという考えから、兄弟姉妹には遺留分がないのだ、という説明がなされることもあります。

ただし、この説明は、単純に代襲相続の範囲を規定(兄弟姉妹の子への代襲相続を認めないと規定)すれば解決する問題ですので、兄弟姉妹に遺留分が認められていないことの説明にはなっていないように思われます。

 

兄弟姉妹は遺留分がなくても寄与分の請求ができる?という誤解

兄弟姉妹に遺留分がないことと関連して、その代わりに兄弟姉妹には寄与分の請求ができるといった記事を目にしたことがありますが、これは誤解を与えるもので正しくはありません。

確かに、兄弟姉妹が相続人になる場合(つまり、被相続人に子供や両親がいない場合)で、兄弟姉妹が被相続人と共同で事業を行っていたり、被相続人へ生活、医療、介護などで援助を行っていたりしたような、被相続人の財産の増加や維持に大きく貢献(寄与)していた場合には、貢献した相続人には「寄与分」が認められます。これにより、貢献した兄弟姉妹は法定相続分よりも多くの遺産を請求することができるのです。

しかし、これはあくまで、兄弟姉妹が相続人となり、かつ、分割の対象となる遺産が十分にある場合の話です。元々兄弟姉妹が相続人にならないのであれば、寄与分の話をするまでもなく、そもそも相続分自体がありません。また、配偶者や第三者に財産を与えるという遺言や生前贈与によって、分割の対象となる遺産がほとんどないような場合であれば(相続人が子供や親であれば、遺留分が侵害されているような状況)、例え寄与があった兄弟姉妹であっても残された遺産を取得するしかないのですから、ここで寄与分の話を持ち出すこと自体がナンセンスというべきでしょう。つまり、遺留分の話と寄与分の話は全く別次元の話なのです。

どれほど、被相続人の財産の増加や維持に貢献してきた兄弟姉妹であっても、相続人でなければ何の権利も主張できません。また、兄弟姉妹が相続人になる場合であっても、例えば被相続人が全財産を妻(配偶者)や第三者に贈与する旨の遺言をしていた場合には、例え兄弟姉妹が被相続人の財産の増加や維持に貢献してきたとしても、遺留分がない以上は妻(配偶者)や第三者に対して何の請求もできないのです。

 

兄弟姉妹は相続関係から一番遠く、遺留分の請求ができないことを知っておきましょう。兄弟姉妹と相続トラブルが発生しそうなら、前もって相続人同士で相続について話し合っておいたり、専門家と話をしておくことも大切です。

【相続】土地や建物といった不動産はどのように遺産分割する?

2019-06-15

土地や建物といった不動産は、どのように遺産分割すれば良いのでしょうか。

ここでは、土地や建物といった不動産を遺産分割する方法やそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

 

不動産を遺産分割する方法

 

・現物分割(げんぶつぶんかつ)

現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法です。

同等価値の複数の土地や建物がある場合であれば、話合いによって比較的容易に分けられるかもしれません。

一筆の土地,一棟の建物などの場合には、土地は分筆、建物は区分して取得する旨の合意をすることになりますが、特に建物の場合にはそもそも区分自体ができない場合が多いでしょう。

 

※分筆(ぶんぴつ)とは、測量などの作業を行って実際に土地を切り分ける方法です。

 

・代償分割(だいしょうぶんかつ)

相続人の誰かが土地や建物を単独で取得して、その代わりに他の相続人に現金を支払う方法です。

 

・換価分割(かんかぶんかつ)

土地や建物を売却し、お金に「換金」した後に、価格を相続人で分配する方法です。

 

・共有分割(きょうゆうぶんかつ)

文字どおり遺産を複数の相続人の具体的相続分に応じて共有とする方法です。

その後、共有関係を解消する必要が生じたときには、共有物分割の手続をすることになります。

 

土地・建物を分割する方法のメリット・デメリット

 

・現物分割

現物をそのまま受け継ぐことができる、不動産を手放さなくて良いという点、比較的公平に分割できるという点ではメリットがありますが、誰がどの不動産を取得するかという点で、話合いがこじれてしまう可能性があります。

また、特に1筆の土地の分筆や1棟の建物の区分は、測量などの作業及びそれに伴う費用が必要になるというデメリットがあります。

 

・代償分割

代償分割も不動産を手放さなくてよいというメリットがあります。また、他の相続人に対し、その者の具体的相続分に応じた金額を支払うことになるため、公平な分割となります。

デメリットとしては、不動産を単独で取得する相続人に現金の支出が発生するという点、そもそも不動産の評価の段階で揉めてしまうことがあるという点が挙げられます。

 

・換価分割

換価分割は、換金した価格を具体的相続分に応じて公平に分配できるというメリットがあります。売却価格がはっきりしますので不動産の評価で揉めるという事態も回避できます。

デメリットとして一番大きいのは、不動産を手放さなければならないという点です。

その他、売却まで時間がかかる、仲介手数料や税金などの費用がかかるといったデメリットもあります。

 

・共有分割

共有分割は、不動産を手放さなくて良い、現金を用意しなくて良いというメリットがあります。しかし、相続人の共有財産として不動産を管理していくことになりますので、管理の方針で対立してしまう等、後々トラブルになり易い、いつかは共有状態を解消するために共有物分割の請求をしなければならなくなるというデメリットがあります。

 

土地や建物といった不動産を相続するには、さまざまな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。遺産分割協議の際には、土地や建物の活用方法などをしっかり話し合うことが大切です。

【相続】相続放棄

2019-05-10

相続放棄とは

相続放棄とは、その名のとおり遺産を相続しないというものです。相続放棄が認められると法律的にははじめから相続人ではなかったものとして扱われます。故人の借金の返済をしなくて良いことになるのと同時に、その他のプラスの遺産を受け取る権利もなくなります。

相続放棄の手続

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。提出期限は自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内です。家庭裁判所に相続放棄が受理されれば「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。相続の順位が上位の人が相続放棄すると、下位の人に相続権が回って来ます。下位の人は、自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内に相続放棄の手続をすることになります。

例:第一順位 被相続人の配偶者・子ども

  第二順位 被相続人の両親

  第三順位 被相続人の兄弟姉妹

相続放棄はそれぞれ個人個人で行うものですので、同順位の相続人の間で一人が放棄すると同順位の他の相続人の相続分が必然的に増加することになります。さらに同順位の相続人全員が放棄すると下位の順位の相続人に相続権が回っていくという流れです。

 

相続人全員が相続放棄をすると

相続人全員が相続放棄をした結果、「相続人のあることが明らかでないとき」に該当することになると、『相続人の不存在』ということになります。民法では、この状態を「相続財産は、法人とする」と規定しています(民法第951条)。

相続財産管理人

相続人不存在によって、故人が所有していた不動産等に担保権を持っていた債権者等の利害関係人は、担保権の実行をしようにもその相手となる人がいないという不都合が生じています。そこで、利害関係人は、家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立て、選任された相続財産管理人を相手として手続をすることになります。

相続財産管理人は、不動産であれば「亡○○相続財産」と名義変更し、相続財産を管理します。最終的には、相続財産管理人が相続財産を換価し、債権者に弁済(配当)することになります。残余財産があった場合には、特別縁故者があればその者に分与されることになりますが、それでも余った財産は,国庫に帰属することになります。

 

相続放棄は、相続人がとり得る選択肢の一つです。相続放棄をするとすべての相続財産に対する権利義務を失うことになります。相続人が何も意思表示をしなければ、原則として自動的に相続を承認したことになってしまいますので、相続しないという意思を固めた場合には、速やかに家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要があります。

【相続】相続法改正 自筆証書遺言の方式の緩和について

2019-04-22

遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言とは、文字どおり自分で手書きで作成した遺言書のことです。

公正証書遺言とは、公証人に作成してもらい、公証人役場に保管してもらう遺言書のことです。

秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書に封をした状態で公証人役場に持っていき、遺言書を作成したということを証明してもらう遺言書のことです。

 

今般相続法の改正により、平成31年1月13日から自筆証書遺言の方式が緩和されました。

 

これまでの自筆証書遺言は「全文」を遺言者が自書することが求められていました。

例えば、遺言書の内容をパソコンで作成し、日付と署名押印だけ自書でした場合、要式に不備があるとしてその遺言書は無効になってしまいます。

このため、相続財産の具体的な内容(例えば相続させようと思った土地建物や預貯金等の目録)も全て自分で手書きしなければなりませんでした。

しかし、全ての相続財産を手書きするというのはとても大変なことです。特に高齢者の方であれば尚更です。

そこで、改正相続法では、民法第968条第2項を追加し(従前の第2項は第3項へ)、相続財産については財産目録を作成して添付することが認められることになりました(本文、日付、氏名は自書が必要です。)。

例えば、パソコンで作成した財産目録はもちろんのこと、不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)や預貯金通帳のコピーを添付することも可能になりました。但し、財産目録の全てのページ(両面ある場合はその両面)に遺言者が署名押印しなければなりません。

 

 

<参考条文>

民法第968条

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印をおさなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力を生じない。

【相続】他の相続人が海外在住だった場合はどうすればいい?

2019-04-11

グローバル化が進み、家族の誰かが外国に住んでいるという方も多くいると思います。「相続人が海外に在住しているけど、どうすればいい?」というような相談件数も増加傾向です。相続人が海外に住んでいる場合、遺産相続はどのようにおこなえばよいのでしょう。ここではそのようなケースの相続手続についてご紹介します。

遺産相続に必要な書類

遺産相続に最低限必要な書類は次のとおりです。

・故人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本

・故人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印

・遺産分割協議書

相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票に関しては、相続人全員のものを用意しなくてはなりません。それは相続人が海外に住んでいる場合も同じことです。しかし相続人が海外に住んでいる場合、それらの必要書類を用意できないケースもあります。
そのような場合には、必要書類を別のものに置き替えることが可能です。

住民票の代わりになる在留証明書

海外に在住していて日本に住民票がない場合や、日本に住民票はあっても海外に在住していることを証明するためには、現地の日本領事館で「在留証明書」を取得することになります。在留証明書の発行を受けるには、日本国籍があり、現地に3か月以上居住していることが条件となりますので、本人確認のためにパスポートや日本で発行された運転免許証、3か月以上居住していることを確認するために滞在許可証、現地の運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書、賃貸借契約書などを日本領事館に提示します。

印鑑証明書の代わりになるサイン証明書

遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での捺印、そして印鑑証明書の添付が必要です。ところが、外国には印鑑証明書がありませんので、海外在住の相続人は遺産分割協議書に実印を押捺することができません。
そこで、海外在住者は、遺産分割協議書に実印を押捺して印鑑証明書を添付する代わりに、遺産分割協議書にサインをしてサイン証明書を添付することになります。サイン証明書は、遺産分割協議書を日本領事館に持参し、係官の面前でサインすることで発行してもらえます。

戸(除)籍謄本の代わりになる法定相続情報証明制度

海外在住の場合に限った話ではありませんが、平成29年5月29日から法務局において各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。法務局に戸籍謄本・除籍謄本一式と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを交付するという制度です。認証された法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸除籍謄本一式を何度も出し直す必要がなくなります。

 

以上のように、相続人が海外に在住している場合の遺産相続は少々特殊なものになります。しかし相続手続ができないわけではありません。海外に住んでいる方、またはご家族の誰かが海外に住んでいるという方は、事前にきちんと手続を確認しておくようにしましょう。

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