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【相続】車を相続したらどうなる? 車を相続する際に注意したいこと

2019-07-10

相続財産の中に故人が所有していた車がある場合に注意しておきたい点について、見ていきましょう。

車の相続の流れ

相続が発生すると、被相続人の財産は一旦相続人全員の共有財産となります。その後、遺産分割協議が行われ、誰が何を相続するのかを話し合うことになります。

車も同様に、車の所有者が亡くなれば、その車は一旦相続人全員の共有財産となります。

注意点1 名義変更を行うこと

相続した車は、名義変更をしなくても使用できるので、被相続人の名義のまま、相続人の中の一人がそのまま使っているケースがよくあります。

しかし、名義変更をしないまま長期間放置してしまうと、いざ売ろうとしたときや処分しようとしたときに他の相続人の協力が得られず、書類の取得が難しくなってしまうといったリスクが高くなります。また、もしも相続人の中の一人がそのまま使って人身事故を起こしたりしたら、他の相続人もその車の保有者(共有者)として損害賠償責任を負うことになります。

車を相続したら速やかに名義変更を行うことが大切です。名義変更は必要書類を準備の上、陸運局で行います。

車の所有者欄が故人ではなく自動車販売会社などになっていたら、自動車販売会社に連絡して名義変更に必要な書類を準備してもらっておく必要があります。

注意点2 車にローンが残っている場合の扱い

車にローンが残っている場合、車の名義は使用者ではなくローン会社になっています。このように残ローンがある場合、残ローンはマイナスの遺産として相続人が払わなくてはなりません。

まずはローン会社へ使用者が亡くなったことを伝え、残ローンの返済方法を相談します。

遺産分割協議の結果、車を取得して引き続き使用することになった相続人が、残ローンも引き継ぐ方向で話をするのが一般的です。

誰も車を取得せずに手放す場合は、ローン会社と協議の上、車をローン会社へ返却して精算してもらいます。ローン会社で車を売却してもローンが残る場合には、残ローンは相続人全員で返済しなければなりません。

注意点3 相続人の一人が高額な車を買ってもらっていたら

被相続人名義の車の相続とは異なる話ですが、余談として。たとえば被相続人の生前に長男だけ高額な車を買ってもらっている場合、その分だけ遺産は減っています。その少なくなった遺産を相続人で均等に分けるとなると、高額な車を買ってもらっていた長男だけが得をすることになります。

この場合は、長男の特別受益として、計算上、相続財産に持ち戻した上で、具体的な相続分を計算することが考えられます。詳しくは専門家にご相談ください。

 

相続財産の中に車がある場合、名義変更しないまま放置しておくと売却や処分だけでなく、納税や事故などの際にトラブルになるリスクがあるので注意しましょう。他の相続財産の分割協議が未了でも、車を取得する相続人だけは先に決めて、速やかに名義変更することをお勧めします。

【相続】遺留分の権利が兄弟姉妹に認められていない理由とは?

2019-07-01

遺留分とは?

私有財産制のもとでは、原則として人は自分の財産を自由に処分することができます。この原則は、生前だけでなく、死後にも及ぶとされ、故人は生前に自分の遺産の処分方法を遺言で自由に決めておくことができます。しかし、この原則を貫くと、例えば故人の遺言書に「全財産を友達の〇〇に遺贈する」と書いてあれば、故人の相続人には全く遺産が入らないことになってしまいます。こうなってしまうと、それまで故人の財産で生計を立てて来た遺族は、今後の生活が立ち行かなくなってしまうという不安定な立場に置かれてしまう恐れがあります。

そこで、故人の財産処分の自由と遺族の生活の安定や遺族の財産の公平な分配という相対立する要求を調整するために民法が設けたのが「遺留分」という制度です。

ところでこの遺留分は、相続人となった兄弟姉妹には認められていません。その理由は一般的には次のように説明されています。

【相続関係が最も遠いから】

民法では相続の順位が規定されており、たとえば一家の大黒柱である父親が亡くなった場合、相続の順番の第1位は子供たち、第2位は父親の両親、第3位は父親の兄弟姉妹となります。なお、配偶者である母親は常に相続人になります。つまり、亡くなった人の兄弟姉妹に相続の権利が生まれるのは、亡くなった人に子供や両親がいない場合に限られます。

このように、兄弟姉妹は、相続においては被相続人と一番縁が遠いことになります。また、実際問題としても、兄弟姉妹が生活する上で被相続人の遺産をあてにしているということもあまり考えられないでしょう。そのため、民法は、兄弟姉妹には遺留分を認めなかったと説明されています。

【代襲相続のことを考えなければならないから】

日本では配偶者や直系の子孫が優先されます。相続人になるはずの子供が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、被相続人の兄弟姉妹ではなく、被相続人の孫が相続人になるのです。この制度のことを代襲相続といいます。

もし兄弟姉妹に遺留分があるとすると、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていれば、亡くなった人から更に遠い存在である甥・姪にも遺留分の権利が行くことになりかねません。そこで、甥や姪からの権利主張によって遺言が一部否定されてしまうのは不合理だという考えから、兄弟姉妹には遺留分がないのだ、という説明がなされることもあります。

ただし、この説明は、単純に代襲相続の範囲を規定(兄弟姉妹の子への代襲相続を認めないと規定)すれば解決する問題ですので、兄弟姉妹に遺留分が認められていないことの説明にはなっていないように思われます。

 

兄弟姉妹は遺留分がなくても寄与分の請求ができる?という誤解

兄弟姉妹に遺留分がないことと関連して、その代わりに兄弟姉妹には寄与分の請求ができるといった記事を目にしたことがありますが、これは誤解を与えるもので正しくはありません。

確かに、兄弟姉妹が相続人になる場合(つまり、被相続人に子供や両親がいない場合)で、兄弟姉妹が被相続人と共同で事業を行っていたり、被相続人へ生活、医療、介護などで援助を行っていたりしたような、被相続人の財産の増加や維持に大きく貢献(寄与)していた場合には、貢献した相続人には「寄与分」が認められます。これにより、貢献した兄弟姉妹は法定相続分よりも多くの遺産を請求することができるのです。

しかし、これはあくまで、兄弟姉妹が相続人となり、かつ、分割の対象となる遺産が十分にある場合の話です。元々兄弟姉妹が相続人にならないのであれば、寄与分の話をするまでもなく、そもそも相続分自体がありません。また、配偶者や第三者に財産を与えるという遺言や生前贈与によって、分割の対象となる遺産がほとんどないような場合であれば(相続人が子供や親であれば、遺留分が侵害されているような状況)、例え寄与があった兄弟姉妹であっても残された遺産を取得するしかないのですから、ここで寄与分の話を持ち出すこと自体がナンセンスというべきでしょう。つまり、遺留分の話と寄与分の話は全く別次元の話なのです。

どれほど、被相続人の財産の増加や維持に貢献してきた兄弟姉妹であっても、相続人でなければ何の権利も主張できません。また、兄弟姉妹が相続人になる場合であっても、例えば被相続人が全財産を妻(配偶者)や第三者に贈与する旨の遺言をしていた場合には、例え兄弟姉妹が被相続人の財産の増加や維持に貢献してきたとしても、遺留分がない以上は妻(配偶者)や第三者に対して何の請求もできないのです。

 

兄弟姉妹は相続関係から一番遠く、遺留分の請求ができないことを知っておきましょう。兄弟姉妹と相続トラブルが発生しそうなら、前もって相続人同士で相続について話し合っておいたり、専門家と話をしておくことも大切です。

【相続】土地や建物といった不動産はどのように遺産分割する?

2019-06-15

土地や建物といった不動産は、どのように遺産分割すれば良いのでしょうか。

ここでは、土地や建物といった不動産を遺産分割する方法やそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

 

不動産を遺産分割する方法

 

・現物分割(げんぶつぶんかつ)

現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法です。

同等価値の複数の土地や建物がある場合であれば、話合いによって比較的容易に分けられるかもしれません。

一筆の土地,一棟の建物などの場合には、土地は分筆、建物は区分して取得する旨の合意をすることになりますが、特に建物の場合にはそもそも区分自体ができない場合が多いでしょう。

 

※分筆(ぶんぴつ)とは、測量などの作業を行って実際に土地を切り分ける方法です。

 

・代償分割(だいしょうぶんかつ)

相続人の誰かが土地や建物を単独で取得して、その代わりに他の相続人に現金を支払う方法です。

 

・換価分割(かんかぶんかつ)

土地や建物を売却し、お金に「換金」した後に、価格を相続人で分配する方法です。

 

・共有分割(きょうゆうぶんかつ)

文字どおり遺産を複数の相続人の具体的相続分に応じて共有とする方法です。

その後、共有関係を解消する必要が生じたときには、共有物分割の手続をすることになります。

 

土地・建物を分割する方法のメリット・デメリット

 

・現物分割

現物をそのまま受け継ぐことができる、不動産を手放さなくて良いという点、比較的公平に分割できるという点ではメリットがありますが、誰がどの不動産を取得するかという点で、話合いがこじれてしまう可能性があります。

また、特に1筆の土地の分筆や1棟の建物の区分は、測量などの作業及びそれに伴う費用が必要になるというデメリットがあります。

 

・代償分割

代償分割も不動産を手放さなくてよいというメリットがあります。また、他の相続人に対し、その者の具体的相続分に応じた金額を支払うことになるため、公平な分割となります。

デメリットとしては、不動産を単独で取得する相続人に現金の支出が発生するという点、そもそも不動産の評価の段階で揉めてしまうことがあるという点が挙げられます。

 

・換価分割

換価分割は、換金した価格を具体的相続分に応じて公平に分配できるというメリットがあります。売却価格がはっきりしますので不動産の評価で揉めるという事態も回避できます。

デメリットとして一番大きいのは、不動産を手放さなければならないという点です。

その他、売却まで時間がかかる、仲介手数料や税金などの費用がかかるといったデメリットもあります。

 

・共有分割

共有分割は、不動産を手放さなくて良い、現金を用意しなくて良いというメリットがあります。しかし、相続人の共有財産として不動産を管理していくことになりますので、管理の方針で対立してしまう等、後々トラブルになり易い、いつかは共有状態を解消するために共有物分割の請求をしなければならなくなるというデメリットがあります。

 

土地や建物といった不動産を相続するには、さまざまな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。遺産分割協議の際には、土地や建物の活用方法などをしっかり話し合うことが大切です。

【相続】相続放棄

2019-05-10

相続放棄とは

相続放棄とは、その名のとおり遺産を相続しないというものです。相続放棄が認められると法律的にははじめから相続人ではなかったものとして扱われます。故人の借金の返済をしなくて良いことになるのと同時に、その他のプラスの遺産を受け取る権利もなくなります。

相続放棄の手続

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。提出期限は自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内です。家庭裁判所に相続放棄が受理されれば「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。相続の順位が上位の人が相続放棄すると、下位の人に相続権が回って来ます。下位の人は、自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内に相続放棄の手続をすることになります。

例:第一順位 被相続人の配偶者・子ども

  第二順位 被相続人の両親

  第三順位 被相続人の兄弟姉妹

相続放棄はそれぞれ個人個人で行うものですので、同順位の相続人の間で一人が放棄すると同順位の他の相続人の相続分が必然的に増加することになります。さらに同順位の相続人全員が放棄すると下位の順位の相続人に相続権が回っていくという流れです。

 

相続人全員が相続放棄をすると

相続人全員が相続放棄をした結果、「相続人のあることが明らかでないとき」に該当することになると、『相続人の不存在』ということになります。民法では、この状態を「相続財産は、法人とする」と規定しています(民法第951条)。

相続財産管理人

相続人不存在によって、故人が所有していた不動産等に担保権を持っていた債権者等の利害関係人は、担保権の実行をしようにもその相手となる人がいないという不都合が生じています。そこで、利害関係人は、家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立て、選任された相続財産管理人を相手として手続をすることになります。

相続財産管理人は、不動産であれば「亡○○相続財産」と名義変更し、相続財産を管理します。最終的には、相続財産管理人が相続財産を換価し、債権者に弁済(配当)することになります。残余財産があった場合には、特別縁故者があればその者に分与されることになりますが、それでも余った財産は,国庫に帰属することになります。

 

相続放棄は、相続人がとり得る選択肢の一つです。相続放棄をするとすべての相続財産に対する権利義務を失うことになります。相続人が何も意思表示をしなければ、原則として自動的に相続を承認したことになってしまいますので、相続しないという意思を固めた場合には、速やかに家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要があります。

【相続】相続法改正 自筆証書遺言の方式の緩和について

2019-04-22

遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言とは、文字どおり自分で手書きで作成した遺言書のことです。

公正証書遺言とは、公証人に作成してもらい、公証人役場に保管してもらう遺言書のことです。

秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書に封をした状態で公証人役場に持っていき、遺言書を作成したということを証明してもらう遺言書のことです。

 

今般相続法の改正により、平成31年1月13日から自筆証書遺言の方式が緩和されました。

 

これまでの自筆証書遺言は「全文」を遺言者が自書することが求められていました。

例えば、遺言書の内容をパソコンで作成し、日付と署名押印だけ自書でした場合、要式に不備があるとしてその遺言書は無効になってしまいます。

このため、相続財産の具体的な内容(例えば相続させようと思った土地建物や預貯金等の目録)も全て自分で手書きしなければなりませんでした。

しかし、全ての相続財産を手書きするというのはとても大変なことです。特に高齢者の方であれば尚更です。

そこで、改正相続法では、民法第968条第2項を追加し(従前の第2項は第3項へ)、相続財産については財産目録を作成して添付することが認められることになりました(本文、日付、氏名は自書が必要です。)。

例えば、パソコンで作成した財産目録はもちろんのこと、不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)や預貯金通帳のコピーを添付することも可能になりました。但し、財産目録の全てのページ(両面ある場合はその両面)に遺言者が署名押印しなければなりません。

 

 

<参考条文>

民法第968条

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印をおさなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力を生じない。

【相続】他の相続人が海外在住だった場合はどうすればいい?

2019-04-11

グローバル化が進み、家族の誰かが外国に住んでいるという方も多くいると思います。「相続人が海外に在住しているけど、どうすればいい?」というような相談件数も増加傾向です。相続人が海外に住んでいる場合、遺産相続はどのようにおこなえばよいのでしょう。ここではそのようなケースの相続手続についてご紹介します。

遺産相続に必要な書類

遺産相続に最低限必要な書類は次のとおりです。

・故人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本

・故人の住民票除票

・相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印

・遺産分割協議書

相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票に関しては、相続人全員のものを用意しなくてはなりません。それは相続人が海外に住んでいる場合も同じことです。しかし相続人が海外に住んでいる場合、それらの必要書類を用意できないケースもあります。
そのような場合には、必要書類を別のものに置き替えることが可能です。

住民票の代わりになる在留証明書

海外に在住していて日本に住民票がない場合や、日本に住民票はあっても海外に在住していることを証明するためには、現地の日本領事館で「在留証明書」を取得することになります。在留証明書の発行を受けるには、日本国籍があり、現地に3か月以上居住していることが条件となりますので、本人確認のためにパスポートや日本で発行された運転免許証、3か月以上居住していることを確認するために滞在許可証、現地の運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書、賃貸借契約書などを日本領事館に提示します。

印鑑証明書の代わりになるサイン証明書

遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での捺印、そして印鑑証明書の添付が必要です。ところが、外国には印鑑証明書がありませんので、海外在住の相続人は遺産分割協議書に実印を押捺することができません。
そこで、海外在住者は、遺産分割協議書に実印を押捺して印鑑証明書を添付する代わりに、遺産分割協議書にサインをしてサイン証明書を添付することになります。サイン証明書は、遺産分割協議書を日本領事館に持参し、係官の面前でサインすることで発行してもらえます。

戸(除)籍謄本の代わりになる法定相続情報証明制度

海外在住の場合に限った話ではありませんが、平成29年5月29日から法務局において各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。法務局に戸籍謄本・除籍謄本一式と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを交付するという制度です。認証された法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸除籍謄本一式を何度も出し直す必要がなくなります。

 

以上のように、相続人が海外に在住している場合の遺産相続は少々特殊なものになります。しかし相続手続ができないわけではありません。海外に住んでいる方、またはご家族の誰かが海外に住んでいるという方は、事前にきちんと手続を確認しておくようにしましょう。

【相続】内縁関係の夫や妻は、相続することはできないの?

2019-04-09

「内縁の妻(夫)」と言ったら「愛人のようなもの」という認識をしている方がいるかもしれません。確かに内縁関係の妻や夫は法的には婚姻関係にある相手ではありませんが「愛人」と「内縁の妻(夫)」とでは、法的に保護を受けられる範囲がまったく異なります。婚姻関係にある人と比べれば保護を受けられる範囲は限定されますが「内縁の妻(夫)」であっても被相続人の遺産を受け取ることができる場合があります。

ここでは「内縁の妻(夫)」の法的な位置づけと、「内縁の妻(夫)」が被相続人の遺産を受け取ることができる場合についてご紹介します。

内縁の妻(夫)とは

「内縁の妻(夫)」(以下「内縁配偶者」といいます。)とは、「一緒に夫婦生活を送っているなど事実上婚姻の社会的実体はあるが、婚姻届が提出されておらず、法律上は配偶者として認められていない妻(夫)」のことをいいます。
法律上は婚姻関係が認められていないため、税金、保険、年金などに関して、結婚することで得られる優遇を受けることはできません。しかし、内縁配偶者も法律上「婚姻に準ずる関係」にあるとされ、法的保護を受けられるケースもいくつかあります。
ちなみに愛人は「一方もしくは両方が既婚者でありながら交際を続けること」と定義されます。いわゆる不倫関係であり、不倫関係に関しては法的な保護はありません。

内縁配偶者の権利義務

内縁配偶者には、法的に婚姻関係者と同等の権利義務が認められています。

・貞操の義務

・同居、協力、扶助義務(民法752条)

・婚姻費用分担義務(民法760条)

・日常家事債務の連帯責任(民法761条)

・夫婦別産制と帰属不明財産の共有推定(民法762条)

・財産分与(民法768条)

・不当な破棄への救済(慰謝料)

・第三者の不法行為に対する救済(内縁の配偶者に対する生命侵害、第三者との性的関係)

他方、内縁配偶者には認められないものとして、次のものがあります。

・氏の変更(民法750条)

・成年擬制(民法753条)

・子の嫡出性(民法772条)

・親権の所在(非嫡出子の親権者は原則として母)

・姻族関係の発生

・相続権

内縁配偶者が、被相続人の遺産を受け取ることができる場合

内縁配偶者には相続権はありません。相続権がないということは、内縁配偶者は相続人にはなれないということです。
しかし、相続人にはなれませんが、内縁配偶者が被相続人の財産を取得できる場合があります。

・居住用建物の賃借権の承継

居住用の建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合には、被相続人の内縁配偶者(および事実上の養子)は、被相続人の借家権という財産を承継することができるので、そのまま借家に住み続けることができます(借地借家法36条)。
なお、相続人がいる場合には、借家権は相続人が相続することになりますが、判例上、内縁配偶者は相続人の借家権を援用して居住の権利を主張することが認められています。

 

・特別縁故者

特別縁故者とは「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」のことです。被相続人に相続人がいない場合には、所定の手続きを経て家庭裁判所に特別縁故者と認められれば、遺産の全部または一部を受け取ることができるようになります。
具体的には、相続人不存在(相続人が相続放棄をしたなどで、相続人が一人もいない状況)による相続財産管理人選任の申立てをし、相続財産管理人による相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内に「特別縁故者に対する財産分与の申立て」をすることになります。
家庭裁判所は、特別縁故者に対する財産分与の申立てがあると、相続財産管理人や家庭裁判所調査官の意見を踏まえた上で、特別縁故者に該当するか否か、該当するとして遺産の全部を分与すべきか、一部を分与すべきかを判断します。

・遺言書

被相続人の意思が尊重される遺言書は、遺産相続において大きな意味を持ちます。遺言書に自分の財産を内縁配偶者に遺贈することを書いておけば、内縁配偶者は、遺産を受け取ることができるようになります。

このように、内縁配偶者には婚姻関係者と同等の保護が与えられてはいますが、相続権はありません。そのため、自分が亡くなった後の内縁配偶者の保護を考えるならば、遺言書を作成しておくことが極めて重要です。

婚姻届を提出するかどうかは自由です。しかし、その際は自分が亡くなった後の内縁配偶者の生活にも思いを巡らせておいた方が良いでしょう。ここで紹介したことを参考にしてみてください。

【相続】故人が誰かの保証人になっていた場合、相続人はどうなるの?

2019-03-27

遺産相続で相続人が故人から受け取る財産には、プラスのものとマイナスのものとがあります。

プラスのものとは故人の現金や預貯金、不動産などです。マイナスのものとは故人の借金などの債務です。

それでは、故人が生前に誰かに頼まれて保証人になっていたような場合も、相続人はマイナスの財産である保証債務を引き継がなければならないのでしょうか。

保証人の地位は相続によってどうなる?

結論から申し上げると、相続人は、故人の保証人の地位も相続することになりますので、後で述べる一部の保証債務を除き、原則として保証債務は引き継がなければなりません。

よくあるのは、故人が友人に頼まれて借金の連帯保証人になっていた場合や友人がアパートやマンションの部屋を借りる際の連帯保証人になっていた場合ですが、いずれも相続によって連帯保証人の地位は引き継がれることになります。

相続人は、故人の連帯保証人としての責任を負わなければなりませんので、故人の友人が借金の返済を怠ったり、家賃を滞納した場合には、金融機関や大家さんから相続人のところへ請求が来ることになります。

【例外的に相続の対象とはならない保証債務】

 身元保証の場合

 会社に入社する際などに求められる身元保証の場合、身元保証人の地位は相続されません。身元保証契約は、入社した人が会社に損害を与えた場合などに、身元保証人がその損害を賠償するというものですが、その性質上、入社した人と身元保証を引き受けた人との間に強い信頼関係があることが前提とされています。入社した人と故人との間に強い信頼関係があったとしても、故人の相続人との間には信頼関係がないことの方が通常ですので、身元保証人としての地位は相続されないことになっているのです。なお、故人が亡くなる前に、既に会社に対する損害賠償責任が発生してしまっていたような場合には、その賠償義務は相続の対象となりますので、注意が必要です。

 根保証の場合

 継続的取引により将来発生する債務について保証することを根保証といいます。根保証の場合、限度額や期間に定めがない場合には、特段の事情のない限り相続の対象とはならないとされています。限度額や期間の定めがないような根保証は、債務者と故人との間に強い信頼関係があるはずであり、債務者と相続人との間にまで強い信頼関係がないことの方が通常だからです。ただし、故人が亡くなる前に、既に発生している債務については相続の対象となりますので、注意が必要です。

 

故人が誰かの保証人だったら

故人が誰かの借金などの保証人になっていた場合は、故人が実際に借金をしているわけではないため、そのことを周囲に話していなかったということがよくあります。そのため、故人が亡くなって数年してから、その事実が明らかになるというケースも多く見受けられます。

仮に借金の額が膨大で、とても払いきれそうにない場合には、相続放棄を検討する必要が出てきます。

相続開始から何年も経過しているのに相続放棄ができるのかと不安に思う方もあるかもしれませんが、相続放棄は一般的に「保証債務などの存在を知ってから3か月以内」であれば認められます。その際には、それまで保証債務の存在を知らなかったことを明らかにすることが必要です。

ただし、遺品整理などで故人の財産を処分していたなどの事実があった場合には、単純承認をしたものとみなされて相続放棄が認められないケースもあります。故人が誰かの保証人であるという事実が明らかになった場合は専門家に相談するようにしましょう。

以上述べてきましたとおり、故人の保証人の地位は、原則として相続されることになりますが、場合によっては相続放棄することが可能です。無用なトラブルに巻き込まれないよう、故人の遺品整理をする際は生前の交友関係、書類などを調べ、故人が誰かの保証人になっていないかどうか、しっかりと確認しておくようにしましょう。

【相続】相続人を確定する手順は?

2019-03-17

遺産分割協議は相続の資格がある人すべてが含まれた状態でおこなわれなければなりません。相続人(相続の資格がある人)が一人でも遺産分割協議に含まれていなければ、その遺産分割協議は無効になりますし、逆に遺産分割協議に相続人ではない人が含まれていても無効になります。そのため、遺産分割協議をする際には、事前にきちんと相続人の確定をする必要があるのです。
ここでは、相続人を確定するための方法や手順をご紹介します。

 

相続人調査をする方法

相続人を確定するには、何よりも相続人の調査が必要です。そのためには、被相続人の死亡が記載されている戸籍(除籍)謄本から、被相続人の出生についての記載がある除籍謄本もしくは改製原戸籍謄本までさかのぼって調べていかなくてはなりません。現在の戸籍だけでは被相続人の婚姻歴や子どもの有無などが確認できないこともあり、婚外子などが存在する可能性もあるからです。

戸籍(除籍)謄本は、先ずは被相続人の本籍地の市区町村で交付を受けることになります。

 

戸籍調査の手順

では次に、戸籍調査の手順を紹介しましょう。
ここでは、Aさんという人物を例に紹介します。

①Aさんの本籍地の市区町村からAさんの戸籍(除籍)謄本を取り寄せます。本籍地が不明の場合は、「住民票の除票」というものを「本籍地表示あり」という条件を付けて取り寄せ、本籍地を確認します。

②取り寄せた戸籍(除籍)謄本を調べ、もしもそこに「平成〇〇年〇月〇日千葉県佐倉市より転籍」などと記載があれば、転籍する以前の市区町村へ、戸籍謄本を請求します(この場合は佐倉市)。

③佐倉市から取り寄せた戸籍謄本に「平成〇〇年〇月改製」などとあれば、その戸籍謄本からでは改製前の内容が分からないので、更に改製原戸籍謄本を請求します。

④改製原戸籍謄本に「昭和〇〇年に千葉県市原市より転籍」などとあれば、今度はその市区町村(ここでは市原市)に戸籍謄本を請求します。

このように、戸籍調査をする際は、新しい物から古い物へさかのぼって調査するのがポイントです。

相続人の確定

被相続人Aさんの戸籍調査の過程で、Aさんの配偶者や子ども(Bさん・Cさん)が明らかになったら、今度はBさん・Cさんの戸籍謄本を取り寄せます。Bさん・CさんがそのままAさんの戸籍に一緒に入っていれば良いのですが、例えば結婚してAさんの戸籍から除籍となり別の戸籍に転籍している場合などは、転籍先の戸籍謄本を取り寄せます。このようにしてBさん・Cさんの現在の戸籍謄本まで辿りつきます。Bさん・Cさんが存命であれば、Aさんの配偶者とBさん・Cさんが相続人として確定します。
仮にBさんがAさんより先に亡くなっていた場合には、Bさんの子ども(Dさん)がAさんの代襲相続人として遺産分割協議に参加することになりますので、同様にDさんの現在の戸籍謄本に辿りつくまで戸籍謄本を取り寄せます。
仮にCさんがAさんの後で亡くなっていた場合には、CさんはAさんの相続人の資格を得た後に亡くなったことになりますので、Cさんの相続人を同様に調査し、Cさんの相続人(配偶者や子ども)がAさんの遺産分割協議に参加することになります。
このようにして、最終的にAさんの相続人を確定します。

なお、相続人の中に行方不明者(不在者)がいて、いくら調べても生存や行方が分からないといった場合もあります。その場合は、不在者の従来の住所地もしくは居所地の家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、選任された「不在者財産管理人」に遺産分割協議に参加してもらうことになります。

 

以上が相続人を確定するための大まかな手順の流れになります。参考にしてください。

遺産相続はいろいろとトラブルが起きやすいものです。何かわからないことがある場合はすぐに専門家や専門機関に相談することをおすすめします。

【相続】離婚と相続

2019-03-13

日本の離婚率は年々高くなっており、離婚は決して珍しいことではなくなっています。離婚する際には財産分与や慰謝料、養育費などのお金の問題を取り決めることになりますが、将来相続が発生した場合のことについてまで考えることは少ないもの。相続が起こる段階になってトラブルとなる場合もあります。ここでは、離婚と相続についてのポイントをご説明します。

 

離婚した元配偶者は相続人にはならない

民法では、亡くなった人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となると定めています。この場合の配偶者とは、あくまでも婚姻関係にある相手のことです。事実婚すなわち内縁関係の相手は、どんなに長くその関係にあったとしても相続人とはなりません(遺言により遺贈を行うことは可能です)。

かつて婚姻関係にあった元配偶者も、相続が発生した時点で婚姻関係にない以上、相続人とはなりません。離婚した時点で元配偶者に相続権はなくなるのです。

 

親が離婚しても子どもには相続権がある

離婚した場合に元配偶者は相続人とはなりませんが、相手との間に子がいる場合、その子は相続人となります。民法では、子は第一順位の相続人と定められています。たとえ両親が離婚して他人になったとしても、親子の関係がなくなるわけではありませんので、どちらが親権者になったのかとか、どちらと同居していたのかなどに関わらず、子は相続人となるのです。実際に「何十年も音信不通だった親が亡くなったということで、遺産相続の件で連絡が来た」あるいは逆に「遺産相続の件で前妻の子どもと連絡を取らなければならなくなった」というケースは少なくありません。

 

連れ子に相続権が発生するかは養子縁組の有無で決まる

では、結婚相手に子どもがいる場合、いわゆる「連れ子」に相続権は発生するのでしょうか。連れ子と義理の親との間にはそのままでは法律上の親子関係はありませんので、連れ子の親が結婚したからといって自動的に義理の親の相続人となるわけではありません。義理の親と連れ子は、養子縁組をしてはじめて法律上の親子関係が生じ、相続人となるのです。

 

離婚する際には、連れ子との離縁も必要?

 逆に、結婚相手の連れ子と養子縁組をしていた場合、離婚しただけでは連れ子は養子として相続権を有することになります。元配偶者とは別れたが、養子縁組をした連れ子には愛情があり、是非とも財産を遺してやりたいという場合であれば良いのですが、そうでないならば、離婚をする際には同時に連れ子とも離縁しておかないと、後々トラブルに発展してしまう可能性がありますので注意が必要です。

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